ねこのとうふ2 ぱとろーる

わたしは白ねこ。名まえはとうふ。

きょうも きんじょを パトロール。

はじめに むかうのは ねこよこちょう。ねこよこちょうには しまおやぶんと しまこぶんという にひきの しまねこがいる。

しまおやぶんと しまこぶんは 前から見ても うしろから見ても よこから見ても とてもそっくりで どちらが しまおやぶんで どちらが しまこぶんか 見わけがつかないくらい。

しまおやぶんと しまこぶんは おたがいに 毛づくろいを するのだけど しまがらが そっくりなものだから ぺろぺろしているうちに 今は あいてのからだを なめているのか じぶんの からだを なめているのだか よくわからなくなるみたい。

こないだも 毛づくろいを している時

「しまおやぶん どうですかきもちいいですか。ぺろぺろぺろ。」

「しまこぶんよ あんたさんは あんたさんじしんを なめておるぞよ。」

とやっていたし またべつの日には

「しまこぶんよ えらい くっつき虫が ついとるがな。こないつけて おったら ねこよこちょうの ねこたるもの はずかしいぞ。ぺろぺろぺろ。」

「しまおやぶん そこあたしちゃいます。しまおやぶんの おなかですわ。」

といっていたりする。そのうち けんかが はじまって しまおやぶんが

「しまこぶん なまいきだぞ。しっぽがぶー!」

とするけれど すぐそのあとに しまおやぶんは

「いてて! じぶんのしっぽを かんじまった!」

とやって いっぽうの しまこぶんは

「しまおやぶん かくごー!おしり がぶー!」

とするけれど こりゃまた しまこぶんが がぶーとしたのは じぶんのおしり。

「いてー! わてのしりやったか!」 

まいにち こんなかんじだから にひきが けんかをしようにも いっこうに けんかがはじまらない。

そのうち おこった しまおやぶんが

「しまこぶんよ わしは もうひとりでねるぞ!ふん!」

と言って しまこぶんもまた

「しまおやぶん あたしもうんざりですわ。ひとりで ねさせてもらいます。ぷい!」

とする。

とは言うものの しまがらが そっくりなものだから ひとりでねている つもりが しらないうちに おたがいの あたまを おたがいの せなか にのせあって きもちよさそうに すぴーすぴーと ねてしまう。


ねこよこちょうを とおりすぎたら 見えるのは だいいちこうえん。

だいいちこうえんの となりには むかしは家が たっていたそうだけど 今のこるのは もんだけ。 

せのたかい ぼうぼうの草の前に すわって ばんをするのは ばんねこさん。けど ばんねこさんは このあいだの春から ずっといないの。そのうち「ひばんねこさん」とよばれるかもね。

ようちえんにある とけいを見たら もう12じ。ほどうきょうの むこうがわを 見ると かぎしっぽの せんさんが やって来るのが 見える。

せんさんは いつも むつかしいことを 言っている。せんさんによれば「てつがく」というものらしい。

せんにんみたいだから せんさんと よばれるようになったとか(かぎしっぽは せんにんの つえらしい。) 千三年 生きているから その名まえになったとか まわりのねこは くちぐちに いっているけど わたしは 名まえは ただの名まえだと おもう。

わたしは せんさんのはなしが (ぜんぶは わからないけど)ときどき すごくおもしろい。 せんさんの はなしを きいたあとは ちょっぴり かしこくなった きがする。

「こんにちは せんさん。12じです。おなかがすきましたね。」

「こんにちは とうふさん。12じだからと いって おなかは すかないね。おなかが すいたときが すいた じこくさ。」

「それは 12じかもしれないし 2じや3じかもしれない。 一日中すかない日もあれば いくらたべても すぐおなかが すいてしまう日も あるだろう。」

「せんさん よくわからない。12じだから おなかがすくのは へんですか?もう少し せつめい してくれる?」

「まず じぶんの きもちと むきあいなさい ということさ。」

「それなら できそう。ありがとう さようなら。」

せんさんの せつめいは 1かい目は いつも むつかしい。2かい目のせつめいで ようやく すこし りかいできる。いつか せんさんの 1かい目の せつめいで わかるように なりたいな。

ふんすいの ちかくには がんもどきが だいこうぶつの もどきさんが すわっていた。

ちょっと つんつんしていて こわいけど がんばって あいさつしてみる。

あいさつのため わたしのはなを もどきさんのかおに ちかづけた。もどきさんは ぷいっと よこをむいて

「あたしゃね はなをくっつける ねこのあいさつが きらいだね。かおを あらうのも つめとぎも ついでにいうと さかなもだ。およそ ねこの すきなものは たいてい あたしゃ だいきらいだね。」

「そうなの ごめんなさい。ところで もどきさんは なにがすきなの?」

「がんもどきに きまっているよ。それと にらだね。」

「がんもどきは なかなかおちていないけど こんど にらを みちで 見つけたら きっともってくるわ。」

「そうかい。ありがたいね。よろしくたのむよ。」

もどきさんと わかれたわたしは かんがえた。

たいていのねこが すきなものは もどきさんは きらい。にらなんてくさい たべもの すきな もどきさんは たいそうめずらしい ねこだわ。

けれど それって もしかしたら せんさんの いっていた「じぶんの きもちと むきあう」ことなのかも。

そうかんがえると じぶんのきもちと むきあっている もどきさんは すごいなとおもった。そして きっと ちかいうちに にらを 見つけなきゃと けついした。

そういえば しまおやぶんと しまこぶんは おたがい そっくりなのに べつのねこ。べつのねこなのに おなじねこみたい。

わたしたち ねこって あるぶぶんは にてたり あるぶぶんは ちがってたり いろいろだな。 ここからは ねこで ここからさきは ねこじゃない みたいな くみわけって だれにも きめられない、ってことなのかも。

きっと じぶんで きめれば いいんだわ。もしかして いなくなった ばんねこさんは ねこをするのに あきちゃって どこかの ほんものの家で ばんけんを しているのかもしれない。

上田さんちの やねの上で そんなことを かんがえながら わたしは すっかり くたびれて おなかが すいていることも わすれたまま ねむってしまった。

おしまい


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