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逗子の天然わかめ

養殖ワカメの収穫がひと段落した頃、逗子の海の中では、天然ワカメ達が収穫の時期を迎えていました。

「10年前に俺が漁師をはじめた頃は、天然わかめ漁の解禁は2月末だったのに、いつのまにか1か月も遅くなってるな~」と教えてくれたのは、小坪の漁師「まさき丸」の和馬くん。

温暖化など様々な要因で海水温が上昇している逗子湾でも、この10年で天然ワカメが育つ時期が少しずつ後ろにずれていき、今に至るそうです。

温暖化ももちろん毎年進んでいくわけではなく、前進と後退を繰り返して少しずつ進んでいく。

海藻も他と一緒で、豊作の年もあれば、不作の年もあって、温暖化の影響で毎年減ってきているとは一概には言えないのだけれど、1年ではなく、もう少し長い単位でみてみると、収穫量が減少しているのは事実です。

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4月はじめの早朝の小坪漁港。

私はウェットスーツを着込んで、和馬くんの船、まさき丸に同船し、天然ワカメ漁の写真を撮らせてもらいました。(※海中での撮影には小坪漁協の許可を得ています。)

ある時間になると、漁港に浮かんで準備をしていた船が一斉に沖にむかいはじめます。
そう、天然ワカメの漁は漁協全体で船を出す時間が決まっているのだそう。

収穫ポイントに到着後、錨を降ろしてすぐに作業にとりかかる。
船上から少し写真を撮ったあとに海に入り下を覗くと、海の下ではワカメ畑が広がっていました。

潜るたびに、海の下は宇宙だな~と感じます。

小坪の漁師さんたちは、覗突き (別名:ぼうちょう)という漁法でワカメをとるのですが、まず、船べりから身を乗り出して箱眼鏡で海底を覗きながら、片手で櫂(かい)を巧みに操って船の舵をとり、もう片方の手には先端に鉄の鉤(かぎ)を付けた長い竿をもち、それで底にあるワカメを刈り、船に投げ込むという作業を長時間にわたり行います。

ちなみに箱眼鏡は、マウスピースをして口でくわえて支えています!なかなかハードですよね。

この覗突き(みづき)という漁法は、天然ワカメだけでなく、主に浅瀬でとれるアワビ・さざえ・ナマコなどをとる際にも行うそうで、潮がよく、海の透明度が高い時は、6-7m底の獲物をとったりもするそうです。

逗子湾沖でこの光景をみたことがある人もいると思いますが、それは「覗突き」という漁法であると、このレポートをきっかけに知ってもらえたら嬉しいです。

それにしても、 三半規管が弱い私にとっては、船の上で揺られているだけでも気持ち悪くなるのに、箱眼鏡で船底を見ながら作業をするなんて考えられません。しかも時には6-7mの底の小さな獲物をピ~ポイントでとらえなければいけないなんて、そんなことできるの!?と思ってしまいます。

アワビはどうやってとるの?と聞いたところ、まずアワビの餌である海藻(ワカメなど)をおとりにして、アワビが食べようと身を起こした瞬間に下に鉤を滑り込ませてひっぺがすんだそうで・・・。

アワビは普段底にへばりついていて、むりやり引き剥がそうとすると、大切な身に傷をつけてしまうらしいのですが、なんだか想像しただけですごい神業ですよね。

天然ワカメ、和馬くんのところでは、収穫後は養殖ワカメと同じくメカブと本体(葉と茎)に切り分け、本体をさっと釜茹でした後、茎と葉をわけて、葉の部分だけをそのままパック詰めにしたり、干して出荷します。

天然ワカメは養殖ワカメより歯ごたえがしっかりしていて、すごくおいしいんです。もちろんネバネバメカブも最高!

まさき丸で収穫・釜茹でしたワカメは、天然・養殖どちらもスズキやさんで購入できますが、あらかじめ頼んでおいてとりにくれば、とれたてのワカメを買うことも可能です。

逗子に住んでいると、時化の後に浜に打ちあがったワカメを拾うことができるので、みんなも拾って食したことがあるかもしれないけれど、天然ワカメ、来年は是非一度味わってほしいな~♡

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2月のはじめに葉山で潜った時に見た天然ワカメのあかちゃん、ほんの少しの期間で何倍もの大きさに成長しました。

海の恵みのワカメは本当に美しくて、これからもずっと地元の逗子の海で美味しく元気に育っていってほしいな~と思います。

そうそう、数年前まではそこらじゅうに生えていた「アカモク」も、ここ数年で逗子湾から急激に姿を消し、今年も禁漁になり、相模湾よりも海水温の低い東京湾から購入して加工したとのこと。

今回同行した際に、海の中で1本だけ見つけたアカモクがゆらめいている姿をみて感動しました。
ほ~んと2年前まではカヌーで沖に漕ぎ出せばたくさん浮いていたのにな~~~!!!

そして最後に「ひじき」について。

GW前にヒジキを収穫するよ!と聞いていたので、それも写真を撮りたいと思っていたところ、今年は逗子はよい収穫の時期にひじきが育ちきらなかったそうで、美味しいのがとれなければ今年は売らない!と一言。

ヒジキは磯で群生するので、これから育っても、GW中の大潮で潮が大きく動き、太陽にさらされる時間が長くなると味が落ちてしまうそう。
収穫のタイミングってとっても大事なのですね。

でも一方で、お隣の鎌倉は豊作だったようで、先日玉石の磯を上から見た時に岩場にたくさんのヒジキが育っているのを目にしました。
ちょっと場所がずれるだけでこんなにも違うものか~と1つ勉強になりました。

※ひじき、ワカメ、アカモクなどを含む貝藻類は、磯や海で漁業権がない人が勝手にとったら罰せられるので注意してくださいね~!

以上、長くなりましたが天然ワカメのレポートでした。
このレポートを見た方が、逗子の海で起こっていること、漁師さんのこと、ワカメのことを少しでも知るきっかけになったらなと思って綴りました。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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