読書メモ: 人を動かす

人を動かす[新装版]
D・カーネギー 著、山口博 訳
創元社 1999年

概要

人間関係において重要なポイントについて書かれています。

人を動かす・人に好かれる・人を説得する・人を変える・幸福な家庭を作る、というセクションに分けて、実例を紹介しながら以下のような原則が紹介されています。

※以下、基本的に章タイトルですが、一部は章末のまとめの文言に置き換え、または括弧内に併記しています。

人を動かす三原則

盗人にも五分の理を認める(批判も非難もしない。苦情もいわない)、重要感を持たせる(率直で、誠実な評価を与える)、人の立場に身を置く(強い欲求を起させる)

人に好かれる六原則

誠実な関心を寄せる、笑顔を忘れない、名前を覚える、聞き手にまわる、相手の関心を見ぬいて話題にする、心からほめる(重要感を与える―誠意をこめて)

人を説得する十二原則

議論に勝つ唯一の方法として議論を避ける、相手の意見に敬意を払い誤りを指摘しない、自分の誤りをただちにこころよく認める、おだやかに話す、"イエス"と答えられる問題を選ぶ、相手にしゃべらせる、相手に思いつかせる、人の身になる、相手の考えや希望に対して同情を持つ、美しい心情に呼びかける、演出を考える、対抗意識を刺激する

人を変える九原則

まずほめる、遠回しに注意を与える、まず自分の誤りを話したあと相手に注意する、命令をせず意見を求める、顔をつぶさない、わずかなことでも惜しみなく心からほめる、期待をかける、激励して能力に自信を持たせる、喜んで協力させる

幸福な家庭をつくる七原則

口やかましくいわない、長所を認める、あら探しをしない、ほめる、ささやかな心づくしを怠らない、礼儀を守る、正しい性の知識を知識を持つ

全体を通じて書かれていることは、人間の自尊心を最大限に重要視し、決して傷つけてはいけないということです。

誰しも、自分は正しいことを行っていると思っているものです。そのため、それが明らかに誤りであっても、頭ごなしに否定しては聞く耳をもってくれません。相手の言い分をよく聞いた後で、遠回しに伝えることです。相手が自分で誤りに気付いたと感じるのがベストです。一見面倒なやり方ですが、結局相手を変えようとするにはこれが最短です。力ずくで変えようとしても、結局はうまくいきません。

また、他人から重要だと思ってほしいという強い欲求があります。それを満たしてあげることで、人間関係を円滑にすることができます。相手に関心をもって話をよく聞くことで、初めて協力してもらえる下地を作ることができます。

感想

言ってしまえばすごく当たり前のことなのだけれど、いざ振り返ってみるとできていないということがいろいろと思い浮かんできます。生まれてからずっと周囲の人と関わりながら生きているのに、「自分がされたら嬉しいことをして、されたら嫌なことはしない」という基本的なところが覚束ないのは、なかなか困ったものだな、と。

本を読みながら、自尊心というのは「手に負えないもの」というイメージを抱きました。外からコントロールしようとしても、かえって頑なになるばかりで、どうにか宥めてあげないと手痛い目に遭うといったようなものです。ただ、うまく付き合うことができたら、これ以上にありがたいものはない、そういう強力なものというイメージです。

相手の自尊心も大事ですが、自分自身の自尊心もきっと大事なのだろうなと思います。話を聞いてくれる人、味方になってくれる人を作っていく上でも、この本の内容は活かせるところがあると感じます。そもそもこの本の原題は「HOW TO WIN FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE」なので、友人を作るというのが最初に来ているんですね。

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