絵本の蔵書(その16)「わたしのとくべつな場所」他
パトリシアは、特別な場所をめざしてバスに乗りました。でも、「黒人指定席」にしか座れません。公園のベンチは「白人専用」、レストランは「白人のお客さま以外お断り」です。やっとたどりついた特別な場所、そこは……。パトリシアが見上げた石板にはこう書いてありました。「公共図書館・だれでも自由にお入りください」(新日本出版社)
差別を受けたことのない人、いじめに合ったことのない人には、当事者の気持ちが一切理解できず、いじめが大したことだと思っていません。(そんなことぐらいで何を騒いでいるのか)とほとんどの人間がそう考えます。しかし、自分が同じ立場になることは誰もが拒み、嫌がるでしょう。つまり心の奥ではそれがどれほど苦痛であるかを知っているからです。
ではなぜ差別やいじめは無くならないないのか。人間社会では、あらゆる場面で「そうである人」と「そうでない人」に区別されます。例えば、この人はお金を持っている、その人はお金を持っていない。この人は知り合い、あの人は知らない人。それはたぶん人間の本能に根ざしているから、差別やいじめはその延長線上にあるのです。
私たちとどこかの誰かは別格という決め付けが、一種の興奮をもたらし精神的欲求を満たします。私たちと異なる人間は、私たちのような自由と権利はないと考えます。それが差別であり、いじめです。
児童文学の金字塔ですが、本は読んでいません。ミュージカル映画『オズの魔法使』に思い入れが強いので、良く知っているつもりになっています。でもどちらも知らない人は意外と多いのかも知れません。また私は同じように有名な「不思議の国のアリス」には思い入れがないため、こちらが好きな人には「オズの魔法使い」は特別ではないのかも知れません。
この本は絵本と言っても、本文がかなり長く、ページ数もそれなりにあります。たぶん小学校の3~4年生程度の子供が読む本かと思います。さすがに私でもさらっと読み通すにはそれなりに時間のかかる本なので読んではいませんが、カラーの挿絵が豊富で書籍として充実した一冊です。
本の中を少し見ると、映画『オズの魔法使』とは異なる展開の部分もあるので、いつか読みたいところです。この映画には様々なゴシップも付いて回りますが、それを全く無視できるくらい素晴らしい作品だと思います。
ねずみのリセロットの手は小さいけれど、とても器用でした。小さい体でがんばって、みんなのためにいろいろ作るリセロットをいつしか森の仲間たちが助けてくれますが…。ベルギーの新鋭画家、カンタン・グレバンが描く、あたたかな友情の物語。( ひさかたチャイルド)
表紙は大人しい雰囲気ですが、この本も中身は結構充実した素晴らしい絵本です。その見本が上の見開きです。仕事を失くしてしまったねずみのリセロットは、友人たちの手助けで森中の動物たちの注文に応じて駆け回ります。大変でも、仕事が無いよりはずっと満たされる毎日。とうとう最後は、あのおっかない狼さんだけが残ります。リセロットたちは勇気を出して彼の注文を受けに行きます…
ニューベリー賞受賞作家の新作絵本。真夏のかんかん照りの日の午後。遠くに雨雲をみつけた少女テッシー。友だちと水着になって、待っていると…。自然の恵みを喜ぶ子どもと母親の表情が素直に描かれた美しい絵本。(岩崎書店)
これも表紙からは想像できないほど、絵と物語の展開が素晴らしい絵本です。さりげない水彩画ですが、画面構成や動きの豊かさなどは、まるで映画や漫画のように大胆で見応えがあります。中を開かないとこの本の本当の魅力には気づけないかも。
親に捨てられたヘンゼルとグレーテルは,まっ暗な森で道に迷ってしまいましたが,すばらしいお菓子の家を見つけました…….華やかで大胆な絵とすばやいストーリーの展開が,結末への期待を高めます.(岩波書店)
残酷さでお馴染みのグリム童話。
貧しさから家に食べる物がなくなり、親が子供を捨てる物語の発端も、子供を食べてしまおうとする魔女も、その魔女を欺いて殺してしまうクライマックスも、決して美談ではありません。寓話ですが、これを現実にあてはめて考えると、後進国のストリートチルドレンや犯罪者たちによる奴隷や臓器売買の話が連想されます。
少し懐かしい気持ちにさせるキャラクターで描かれる絵本ですが、色彩はご覧のように洒落ています。残酷で悲劇的な物語が華麗に展開します。
BL出版の「ヘンゼルとグレーテルのおはなし」という絵本は、作者が同じでも絵柄が全く異なります。ここでご紹介しているのは、岩波書店の絵本です。お間違いのないように。
「絵本の蔵書」は、終了した「クックパッドブログ」で以前連載していた(所有している)絵本の紹介です。最終的には103冊ありました。(その20)まで続きます。古い名作絵本は、図書館に行けばたぶん見つかります。
<(ↀωↀ)> May the Force be with you.