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絵本の蔵書(その8)「かあさんをまつふゆ」「くるみ割り人形」他

(その1)の「アンデルセンコレクション」同様に、アマゾンで見つけて特に気に入って新品を購入しました。大きな本の画面が大迫力の1冊です。

かあさんをまつふゆ
作:ジャクリーン・ウッドソン 絵:E.B.ルイス
訳:さくまゆみこ (光村教育図書)

 外は雨。大好きな母さんが出かける準備をしている。世界中の何よりも私を愛してくれる母さんが行ってしまう。そして、冬。遠く離れた地へ働きに行った母。帰りを待つ少女の思いを、詩情あふれる文章と美しいイラストで描く。(光村教育図書)

 写実絵画的な絵が一番好きです。もしかすると、リスベート ツヴェルガーの絵より好きかも知れないです。そして、絵と同じくらい気に入ったあらすじの印象そのままの物語に感動します。「母をたずねて三千里」のように、出稼ぎに行った母の帰りを待つ少女の苦しさ切なさを描いています。マルコとは違い、彼女はひたすら母の帰りを待ち続けます。
 ざっと見渡した感じ、絵本の蔵書は今回で半分強です。


キューピッドとプシケー
ウォルター・ペーター 文 エロール・ル・カイン 絵
柴鉄也 訳 (ほるぷ出版)

 昔、ある都に。王さまに王妃さまが住んでいました。ふたりの間には、美しい3人の娘がありましたが、なかでも、末娘プシケーの美しさはとても言葉ではいいあらわせないほど。人びとは女神ヴィーナスをうやまうことを忘れ、プシケーに祈りをささげるようになりました。それを知ったヴィーナスは大いに怒り、息子の恋の神キューピッドにいいつけ、プシケーの恋のどれいとするよう、たくらむのでした。有名なギリシャ神話を素材にした、華麗な愛の物語―世紀末の巨匠ペーターが描く〈美〉の物語世界を、鬼才ル・カインが彩どる、異色の芸術絵本。(ほるぷ出版)

 エロール・ル・カインは結構有名な絵本画家ですが、個人的にはそれほど好みではありません。しかしモノトーンで描かれたこの絵本だけはお気に入りです。ギリシャ神話の寓話性が非常に良く分かる物語で、子供向けと思えない読み応えがあります。


くるみ割り人形
作:ズザンネ・コッペ 絵:リスベート・ツヴェルガー
訳:池田香代子 (BL出版)

 クリスマス・イヴのこと。マリーは、ツリーの下にプレゼントのくるみ割り人形を見つけます。その夜、マリーはいつしか不思議な世界に入り込み、くるみ割り人形を大将にしたおもちゃたちと、ネズミの軍勢との戦いの中に身をおいていました……。1816年にホフマンが発表したこの作品は、現実と空想とがからみあった素晴らしいメルヘンとして、長く愛されてきました。美しく繊細な画風で人気のツヴェルガーが、細やかな筆づかいで、ホフマンの世界を見事に表現しています。音楽と朗読のCD付き。(BL出版)

 リスベート・ツヴェルガーの絵の魅力が全開の画集のような絵本です。読者レビューを読むと、どうやらこの本の内容は原作の導入部分程度のようです。バレエの楽曲として有名ですが、元の文学はもっと長い物語とのこと。


きつねのかみさま
作:あまん きみこ 絵:酒井 駒子 (ポプラ社)

 りえと弟は、きつねの子たちとなわとびをして遊びました。それはりえのなわとびなのに、きつねの子は神様がくれたというのです。(ポプラ社)
 独特の画風と色彩感覚の酒井駒子さんの絵が本としての魅力を高めているように思います。


くじらの歌ごえ
作:ダイアン・シェルダン 絵:ゲイリー・ブライズ
訳:角野 栄子 (BL出版)

 リリーのおばあさんは話しはじめました。「むかしはね、海にはくじらがいっぱいいたのよ。くじらってね山みたいにおおきいのにお月さまのようにやさしくてねそれはそれはふしぎなものよ」……(BL出版)

 絵本というより精緻に描かれたファンタジーイラストの絵物語です。
 おばあさんは孫のリリーに、優しいくじらの物語を聞かせますが、おじのフェデリックは、くじらは人々の食料であり資材として役に立って来たのだと現実的な話をして、おばあさんの夢物語をやめさせようとします。

 現代において、くじらとは人類に最も近い知能を持つ哺乳類の一種として認識されています。私も子供の頃は、親のくじら料理が好物でしたが、ある日捕鯨が制限されることになって食べなくなりました。かつての日本では畜産が発達していなかったので、くじらが貴重な蛋白源とされました。
 知能の高さや外見で生物を区別することも所詮は人間の浅はかさだとは思いますが、今のように食料が大量に無駄に捨てられる時代に、人類と近しいものを食料にする習慣はすでにカニバリズムと大差ない行為と言えなくもない。食べずに済むのであれば、積極的に続ける必要のない食習慣という見方もできるのではないでしょうか。


「絵本の蔵書」は、終了した「クックパッドブログ」で以前連載していた(所有している)絵本の紹介です。最終的には103冊ありました。(その20)まで続きます。古い名作絵本は、図書館に行けばたぶん見つかります。


<(ↀωↀ)> May the Force be with you.