マガジンのカバー画像

逃亡代行

43
職場の人間を大ハンマーで殴って逃げてしまった男。追われることを恐れて逃亡することを決意。逃亡先での体験や出会った人とのお話。 第1章:1~6 第2章:7~11 第3章(1):1… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

逃亡代行 1

 親方を大ハンマーで殴って職場から逃げてしまった。血を出して動かなくなっていたが、もう死…

逃亡代行 2

 列車に乗って南に向かっている。 しばらくすると車窓から海が見えてきた。今日の空に似て大…

逃亡代行 3

 日が沈んで水平線が赤くなっている。たそがれ時、私はコンビニで買った缶ビールを飲みながら…

逃亡代行 4

 列車に乗って1時間半、ロングシートに座って痛めた腰をさすりながら、駅のホームを歩いてい…

11

逃亡代行 5

 北の大都市を目指して列車に揺られている。次の駅で終点。というよりも、その駅から先は列車…

逃亡代行 6

 工事中の作業員が缶コーヒーを片手に午後の一服を入れているこの時間、陽が思った以上に低い…

逃亡代行 7

 地元に戻ってからしばらくして、海沿いの工場でアルバイトをすることになった。  初出勤の朝。大事な用事には早めに来るようにしている私だが、今回は少し早すぎた。始業の1時間半前に到着してしまい、事務所の扉は鍵がかかっていた。 喫煙所のベンチに座り、タバコに火を付けた。体に悪いのはわかっているが、手持ちぶさたになると手が出てしまう。これは電車の中でとりあえずスマートフォンを触ってしまうのと同じ気がする。 2本目を吸っている途中で、スーツ姿の男が事務所の敷地に入ってきた。社長

逃亡代行 8

 「お疲れ様です」 食堂の扉を開けて中を見回すと、国分さんが「お疲れ」と返してきた。遅い…

逃亡代行 9

 アルバイトを始めてからしばらく経って、だいぶ仕事にも慣れてきた。 仕事の内容は簡単だっ…

逃亡代行 10

 休日、家でテレビを見ながら1日が過ぎるのを待っている。 ルールをよく知らないラグビーや…

逃亡代行 11

 『やめる?どうしたんだまた急に』 国分さんの声は、電話越しでも戸惑いと驚きを感じている…

逃亡代行 12「公園駅上の口」

 逃亡初日、小雨が降っていた。 通りかかったタクシーに傘を持っていない方の手を挙げて止め…

逃亡代行 13「遅延」

 私はプラットホームに止まっている列車に乗り込んだ。 平日の昼間だからか、列車に人はほと…

逃亡代行 14「桟橋」

 早朝、私は桟橋のある砂浜にやってきた。 駅に貼ってあったポスターの場所だ。この桟橋の写真と、短いポエムが書いてあるポスターだった。 砂浜から海に向かって一本だけ長い道がのびていて、橋に沿って立っている電柱に取り付けられた裸電球が、その道を照らしている。 桟橋の向こう側に目を向けると、港へ入港するコンテナ船が見えた。さらにその向こう側には、海の向こうの陸地にそびえる高い山が見える。  しばらくその景色に見とれていた。そして鞄からスマートフォンを取り出し、その景色を写真