見出し画像

全国通訳案内士試験(フランス語)仏訳編

課題いろいろ

仏訳はしっかり準備すれば最も点を取りやすい設問だという人もいます。しかし私には苦手意識がありました。これまでに仕事で通訳をする機会はたまにありました。しかし、この試験はそれとはわけが違います。
まず、こういう内容を通訳したことがないので、圧倒的に語彙が不足していました。うまく訳せない文章も多々あり、伝わる説明力をつける必要もありました。さらに慣れない分野なので、どうもリテンションができず、聴き逃しや訳し忘れが随所にあり、対策を始めた頃は全く自信が持てませんでした。
 

まずは腹落ちレベルで日本文化を理解する

リテンションができない理由は、私の場合、主に3つと考えました。
ひとつは自分の理解不足です。以前、通訳講座の先生がこうおっしゃっていました。
「通訳のポイントはまず内容理解。原文の内容を理解できていればリテンションできるしメモも少しで良い。」
私は内容を理解しているつもりなだけで腹落ちレベルの理解には達していない、だから外国人観光客に伝わる説明ができないのでは、そう思いました。

この対策としては、nippon.comの記事を隅々まで熟読することが役立ちました。外国人観光客目線でさまざまな日本の伝統文化や、日本の今を伝える記事が、フランス語でも読めます。(英語・中国語・スペイン語などなど。もちろん日本語版もあります)

メモのディクテ化を防ぐ!

もう1つの理由はメモの取り方の問題です。
聴いたままをメモしようとして内容がディクテ化していく→追いつけなくなる→聴き逃す、ということがありました。
しかもディクテ化したメモから訳そうとすると、原文に引きずられすぎて、聞き手に伝わる訳ができません。そこで論理的にポイントを整理しながらメモ取りを心がけ、聞いたままメモでなく、電話メモに近づけることを目指しました。
プロの通訳のメモ取りなども参考にできますが、本番までに時間もそれほどないことですし、自己流を貫くことにしました。そして自分なりのメモ取りルールを次のように決めました。

「理由」「結果」「言い換え」を表す自分なりの記号を決めておく
(+, =, 等、後で見たときに確実に意味の分かるもの)

  • アルファベット表記にするなら単語1つ以下
    (ディクテ化、後で読めないメモを防ぐため)

  • 単語を漢字で表す場合は画数の少ないもの1文字程度
    (メモに夢中になり聴き逃しを防ぐため)

記号は馴染みのあるものでないと使いづらいので、多用せずに、主に数学で馴染みのある記号を用いました。この方法だと原文をロジカルに整理しながらメモできるので、原文の影響を受けすぎず、内容をロジカルに組み立てて訳文をつくるという点でも役立ちました。

ディクテ化を防いでリテンション力を鍛え、電話メモに近づけるのに効果的な訓練があります。これは最近受講した通訳講座で教わったことですが、試験前に知っていれば…!と思った目からウロコの方法ですので、以下に共有します。

  1. メモを取らずに音声を一度とおして聴く

  2. 聴き終わってから覚えている内容をメモする

  3. さっきのメモを見ずにもう一度聴きながらメモ

この訓練を繰り返すと、電話で話しながらメモとる時のように、頭の中で整理しながらメモする癖がつきます。それを見て訳すと、より論理的で整理された文章ができます。

使える語彙力を増やす

知っている語彙と使える語彙のボリュームは違います。さらに通訳案内士として使う語彙は、日常会話ではほとんど使わない語彙だったりするので、私にはこの分野の語彙力が圧倒的に不足していました。日常会話で滅多に使わない語彙力を増やし、使える語彙に。これはなかなか労力の要ることです。

前出の通訳講座の先生はこうおっしゃっていました。
「新しく覚えたい単語は、富士山に向かって100回声に出して言ってください。」
使える語彙を増やすにはそのくらい労力が必要、ということでしょう。口に出して音で覚えることが大切、という意味でもあると思います。

以前にこんなことがありました。
何度も観た映画で覚えた表現を会話の中で使ってみたら、フランス人の同僚が驚いてこう言いました。
「今のすっごい自然だった!いつの間にそんな表現覚えたんだ?」
これはおそらく映画のシーンと単語の音をセットで覚えていたおかげだと思います。
そんなわけで、試験対策用に作成した単語帳には例文も加え、繰り返し読み、音声も聴きました。覚えられない単語と例文は自分で読み上げて録音し、これを通勤中に聴いていました。自分の声でやると発音チェックもできます。

さらに、凡ミスを減らす

確実に点を取るために、自分の間違い癖を知ること、特に前置詞の間違いを減らすことにも努めました。これにはフランス人の先生とのプライベートレッスンで、ミスを徹底的に指摘してもらうことが役立ちました。

【使用教材】
過去問(ハロー通訳アカデミーのサイトから)
nippon.com(適当と思われる和文を数行ピックアップ)

【その他必要なもの】
PCのアクセシビリティ機能
DeepL

【あると便利なもの】
フランス人の先生
(DeepLの仏訳を100%信頼できないし、自分の間違いの癖を指摘してくれる存在は貴重)

【方法】

  1. 過去問をテキスト化。文字に塗りつぶしの色をかけるなど、見えなくしておき

  2. 内容を忘れるくらいに寝かせておく。

  3. Macの「アクセシビリティ機能」を利用してテキストを読み上げてもらう

  4. 口答で仏訳。録音または口答のあと文字に起こす

  5. 問題文を確認。聴き逃し、訳しもれをチェック。

  6. DeepLで問題文を仏訳。自分の訳と比較

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?