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『黄色い家』川上未映子

いやぁ...しんどかった。1冊に100冊分の不条理が詰まってた。

水商売のシングルマザーのもとで育った女の子が、自分の生計と居場所を手にしようとして、さらには人の分まで守ろうと背負い込んで、追い詰められていく話。

追い詰められて崩壊していく様を一人称の語り手で描写されるのが、特にしんどかった。「〇〇さんには私が必要だ」みたいな主人公の妄信が、誰のフィルターも挟まない主人公の言葉で地の文に出てくると、痛ましくてヒリヒリした。

内容に関しては、社会を知るための示唆の多い小説だったと思う。

経済的なマイノリティが他の軸でもマイノリティになる、交差性。
追い詰められるほど自分を責めてしまう人と、その視界に入らない「公助」。
被疑者に圧倒的に不利な司法。
でもまともに聞かれない被疑者の主張にも、その人なりの大切な真実があること..... etc.

でも結局そういう学びより、「しんどかった」の印象が勝ってしまう。現実を直視しすぎて引っ張られるより、その現実を変える活動を適度に能天気に進めたいと思った。

ちなみに舞台は三軒茶屋。どの程度ノンフィクションか分かんないけど、知ってる街の知らない一面に気が沈むなぁ…。

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