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『やさしい猫』中島京子

入管に収容されたスリランカ人の父のために、妻や娘が奮闘する小説。

小説といっても、綿密な取材に基づいて入管の問題を伝えるルポルタージュ的な要素が強い。『それでもボクはやってない』の入管法バージョン、みたいな。

技能実習生を描いた映画『コンプリシティ』でも同じことを思ったけど、この国では外国人が普通に暮らしているだけでどんどん追い詰められていく。
この小説に出てくるスリランカ人の父も、オーバーステイの主な原因はビザ更新に関する情報にアクセスできなかったことで、不法滞在は意図していなかった。
野球やスリランカ料理を通じて仲睦まじい関係を築いていた家族の日常を突然奪い、病気になっても放置される地獄みたいな場所に長期間収容する。
そんな地獄みたいな国に、本当に絶望的な気分になる。

『それボク』や『コンプリシティ』との違いは、明確にハッピーエンドなところ。でも退去強制に対する取消訴訟の勝率は2%。ここに描かれなかった残り98%の人生も想像しつつ、引き続き寄付で応援していきたい。

寄付してるところ→ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY

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