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Klara and the Sun / Kazuo Ishiguro

いやー、良かった!!

ちょっと切ないけど、じんわり温かい名作。

主人公のクララは人の形をしたロボット。ロボットの専門店を訪れた病弱な少女・ジョジーと運命的に惹かれあい、控えめながらも献身的に彼女に寄り添うようになる。ロボットでありながら病気を治すような技術や知識はなく、むしろ「太陽が不思議な力で助けてくれる」という迷信を本気にしているクララが本当に愛おしかった。

物語の後半になると、子どもたちは将来に悩み、大人たちは「人の心の中にはその人だけの特別な物があるのか」と悩み始める。そんな中で、変わらずに太陽の力を信じるクララの思いだけがまっすぐで、単純で、実は1番普遍的な本質を捉えている気がした。思えば、クララはお店に居た頃からショーウィンドウ越しに時間と街の流れを定点観測してたんだな。

「歳をとった主人公が過去を回想する話」を書いてきたカズオ・イシグロによる、初めての「歳をとらない主人公が時代を定点観測する話」。
「ある人が特別な理由はその人の中ではなく、その人を愛する人の心の中にある」っていう答えには、ハッとしたなぁ。

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