MAO II / Don DeLillo
おお……。展開こそ少ないけど、ずっと緊張感のある小説だった。
貧困と暴力が蔓延する、ディストピア的な設定。
ザッピングみたいに、せわしなく切り替わる場面。
直訳すれば「毛沢東2世」となる、ミステリアスなタイトル。
そのどれもが革命前夜の緊張感を醸し出していると思った。
たぶん全体を通じてテーマになっているのは、「言葉」と「写真」。
たとえば戦争反対を訴えたり、戦地の惨状を伝えたり、一般的に「言葉」と「写真」はどちらも暴力に抵抗する手段とされる。
でも、革命家の「言葉」と「写真」が暴力的に思想を統一し、国民から言葉を奪っていくこともある。
この小説の登場人物たちは、そんな二面性を持った「言葉」と「写真」の最後の可能性を信じて闘っているように思えた。
書く恐怖と葛藤する小説家とか、
発狂しないように言葉を紡ぐ人質とか、
人の内面を写そうとする写真家とか。
最後には、フィルムをreloadしてshootするカメラと、弾丸をreloadしてshootする銃の類似性がことさらに強調される。でもそれが非暴力の手段としてのカメラの敗北を示しているのか、真意は分からない。
謎が多いだけに、誰かと感想を共有したい。
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