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A Pale View of Hills / Kazuo Ishiguro

「ザ・カズオイシグロ!」って感じの、記憶がテーマの作品だった。

代表作のRemains of the dayが「自分の政治的立場を正当化するための美化された回想録」だとすれば、本作は「自分の母親としての立場を正当化するための美化された回想録」。

今以上に「日本の母親=家庭に尽くす」のスタンダードが支配的だった終戦直後の長崎で生まれ育ったものの、スタンダードから大きく外れて「渡英」や「再婚」、そして「家族の崩壊」を経験した主人公の不安定な自意識が垣間見える回想録だった。

面白いのは、この回想録がどの程度美化されているのか、巧みな仕掛けによって分からなくなっているところ。
僕はラスト2ページで「これ100%空想だったんじゃない..?」と思いました。鳥肌立った。

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