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『JR上野駅公園口』柳美里

とある男性の一生を、一人称の詰り手で回想した話。

出稼ぎ続きで家族の時間の奪われ、働く目的だったその家族にも先立たれ、あてもなくたどり着いた上野公園でホームレスになり...。

軽々しく言われる「みんな」とか「私たち」から何重にも排除された人生が、
緻密な取材でリアルに描かれ、深みのある文章で息を吹き込まれていた。

物語の終盤では、天皇家の行幸のためにホームレスが立ち退きを指示される。
上皇と同じ年に生まれ、全く異なる陰の人生を歩んだ男性が「上野恩賜公園」からも排除される皮肉に、胸が詰まる。

絶えず歩き回って新しいものを消費していると、「公園のベンチ」とか「過去」に留まっている人が見てる景色はなかなか想像できないから、読んで良かった。

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