街と人と生命と。風街ダイアリー
飲食店やショップが集まる人が多く集まる街に住んでいる。スーパーに食材の買い出しに向かう。さすがに人が少ない。
土曜日、日曜日。ショップを中心に、全体で4分の1くらいが臨時休業を選択したようだ。
飲食店は「テイクアウト」を開始した店舗が目立つ。各国のロックダウンのニュースを受け、店舗自らが考え、粛々と動き始めているといった様子。
アメリカでは、グーグルマップに「テイクアウト」「宅配」可能なお店が表示されるようになっている。
日本では、テイクアウトできる店が一覧できるサイトが立ち上がった。
軒先で、有機野菜や契約農家の野菜の販売を始める飲食店もチラホラ。
テナント募集の張り紙もチラホラ。
殺風景だった壁に、いつの間にかアートが描かれていた。
作詞家であり、ミュージシャンの松本隆は、青春時代を過ごした街、つまり青山、渋谷、麻布界隈の原風景のことを“風街”と読んだ。その定義でいうなら、私の住んでいる街は“風街”ではないけれど、店舗1軒1軒が細胞かのように活動形態を変えている街を見つめると、“風街”と形容したくなる。風にまかせてユラユラと逐次、表情が変わる。
ロングセラーとなっている『生物と無生物のあいだ』。
例えば、1年ぶりに知人に会ったとき「お変わりありませんね」などと言うものの、実際は分子レベルではすっかり入れ替わっており、かつて自分の中にあった原子や分子はすでに自分の内部にはないことから「お変わりありまくり」なのである。
「生命とは、実は流れゆく分子の淀みにすぎない」
普段、見慣れているはずの街を不思議な気分で歩く。著者が語る「動的平衡=動くことで均衡が保たれている状態である」になぞらえてみる。街も“生物と無生物のあいだ”である。このとらえどころのない時間を超えたら、一見変わらないように見える街も、私たち同様に原子、分子レベルでは、きっともう別人なのだ。そんなことを思った。
【追記】
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今日の名言
スティーブン・キング「もし、アーティストが無用というのなら、音楽、本、詩、映画、絵ナシで、この隔離期間を過ごしてみればいい」。
今日のpod cast
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