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BTSがグラミー賞にノミネート。そして、「視点」の問題

2021年グラミー賞のノミネート速報。

なんといっても、BTSが初ノミネート(「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞」候補)されたことに胸が熱くなる。


その瞬間のメンバーのアクション。

2019年にはプレゼンター、2020年にはコラボパフォーマンス、そして、2021年はノミネート!

一夜限りのコラボレーションとなったリル・ナズ・X、ビリー・レイ・サイラス、BTS(防弾少年団)、メイソン・ラムジー、ロデオ、ナズ。”カントリー”と”ラップ”を融合させた『Old Town Road』により、TikTokでカウボーイの恰好をするミームが発生。その楽曲にBTSが参加。アジア勢初‼︎ ジャンルも国境も世代も超えたボーダーレス時代の到来を告げる楽しいパフォーマンスだった。

グラミー賞の規定期間内で一番売れてたアルバムがBTSだったことを考えれば( 2位 Post Malone、 3位 The Weekend  4位 Harry Styles 5位 Roddy Ricch)、「あれ、アルバム賞は?」とも思うけれど……(苦笑)。っていうか、The Weekndはノミネート自体がゼロなのかぁ。ちなみに、ジャスティンは、自身の想定していたジャンル(R&B)とは違うジャンル(ポップ)でのノミネートに素直に喜べない様子。

ブツブツ言うのも無粋なので、とにもかくにも、米国の「壁」を乗り越えたBTSの快挙にスタンディングオベーション(ともあれ、BTSに賞を授賞させないと、あまりにバランスが悪いので、絶対に授賞すると私は睨んでいる)。

毎年生中継をしているwowowのゲストは、ここ数年、山下智久さんで、彼は舞台上のBTSを現場で観ていた。いろいろな憶測や邪推などが飛び交っているが、純粋にやっぱり「壁」に挑戦したくなったのだろう、と。「日本のトップアイドルが、次にそれを目指したくなるのは当たり前だろうよ」と私はどうしても考えてしまう(実は、私は一時期連載の担当をしていた)。

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「僕たちは、世界征服するつもりはなかった」という特集タイトルのエスクアイア。

以下は、米国の音楽誌で活躍する音楽ジャーナリストで、『BTSを読む』(邦訳は柏書房)の著者であるキム・ヨンデ氏のインタビューより。

米国の音楽界というのはとても保守的なところがあります。「何が主流(メインストリーム)か」「何が傍流(サブカルチャー)か」を明確に分けて考える意識が社会の根底にあって、その意識は人種や民族、権力などといった「階層」に基づいている。
アメリカで生きている多くの人々は今、自分や身近な人に対して向けられる人種差別や排外主義について大きな苦悩を感じています。ファンたちは意識的に政治的になろうとしたわけではなかっただろうけれど、自分や身近な人たちが直面している差別と、BTSに向けられる差別、2つの差別に対する苦しみが自然に合わさって、さらなる情熱が生まれていったのだと思います。

「グラミー賞の選考委員の大半は高齢の白人男性で、音楽世界で何が起きているかよくわかっていない」とキム氏は言う。けれど、全米、そして世界中のアーミー(ファン)がBTSと共に闘い、この「壁」を瓦解した。

インタビュー最後、K-POPと、J-POPとの差を語るキム氏の言葉は重い。

質の問題ではなくて、視点の問題だと思います。K-POPは本当に初期から世界を見ていました。(中略)一般的に日本のポップカルチャーは東京や大阪といったローカルシーン、地元の客層に受け入れられることを何より重視していると思います。日本はすべての文化が到達する終着点で、すべてのものが日本化していくという印象があって、西洋のポップカルチャーも日本に入れば、日本化していく。

強さは、同時に弱さ。両刃の剣なり。

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【今日の一冊】


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