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『relax』の愛読者だった私が、その編集長の本を出すまでの話

編集者・岡本仁さんとファッションディレクター・岡本敬子さんの共著『今日の買い物』新装版を9月末に発売する。これは、私が先頃まで在籍していたwebマガジン『ミモレ』での最後の仕事だ。

↑の記事にも書いたが、私は雑誌が大好きで、中学生くらいから、かなりのお小遣いを雑誌購入に充てていた。で、大学生の時に熱心に読んでいた雑誌の一つが『relax』で、「私もこんな自由な雑誌が作ってみたい!」と大学4年生の時に雑誌を出版している出版社を受験した(ちなみに、この年マガジンハウスの新卒採用はなかった苦笑)。

この頃の『relax』編集長が岡本仁さんだ。

そして、私は出版社に入社し、20年以上雑誌の編集者をやっている。その間、岡本さんは『BRUTUS』『Ku:nel』などを担当された後、マガジンハウスを退社された。それ以降、いろいろなところでご活躍を拝見する機会が増え、いつも私はそれを目の端で追っていた。いつか会えることを夢想しながら。

そして、先に奥様である敬子さんと仕事をすることとなる。

今年の春、敬子さんの著書の出版記念イベントで、遂に仁さんと初対面の時を迎えた。いつもの何分の1かの言葉数しか出てこなかった。思いが溢れすぎて、何を言っても無粋になるような気がして、「『relax』読んでました」と伝えるのが精一杯。我ながら不甲斐ない。

ただ、私は、仁さんがポツリと「カミさんと出した共著を復刊したいんだよな」というつぶやきを聞き逃さなかった。大切に胸にしまい、翌日、すぐに上司の下へ。

出版不況と言われて久しく、数字が見えづらい書籍の出版企画を通すのはなかなかに難儀なご時世である。けれども、私はこの上司が岡本夫妻のinstgram投稿を楽しんでいるのを知っていた。ある意味、不戦勝狙い(笑)。そう期待しつつも、上司が頷かざるを得ないよう異常なる熱量を浴びせるべく意気込んだが、その前に上司は私の意を汲んでくれた。このタイミングで、この上司の部下であった幸運よ!

しかしながら、当時、私はwebマガジンの編集長業務量に溺れかけていた。それを見ていたその上司は、「書籍は私が進めようか?」と。その上司は、これまでに民藝や伝統芸能の書籍を数々担当している。もちろん、自分で何から何まで手掛けたい気持ちはあったものの、現実問題と対峙し、お言葉に甘えた。結果的に現場の実務を上司に担当してもらえたことで、今秋の発売が叶った。

打ち合わせには参加していたものの、現場の実働は上司が粛々と進めてくれた。進捗を共有してくれ、私にも逐一確認をとってくれる。その度に「いいと思います」と上司にOKサインを出す私。何様だよ(笑)!

結果的に、とてもステキな一冊ができた(実働は上司だけれど苦笑)。

時を超え、「私が雑誌編集者になりたい」と強く思う動機になった雑誌の編集長だった方の書籍を担当する。

こんなことってあるのだなぁ。歳を重ねる醍醐味だなぁ。「そりゃ、あるでしょうよ」と思われる方もいらっしゃるだろうが、私は未だに狐につままれたような感覚なのである。

発売は9月下旬。どうぞ、ご贔屓に!




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