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人間は「ピーク」と「エンド」しか覚えていない

『Think clearly』によれば、私たちが感じる「瞬間」の長さは、心理学者たちによれば「約3秒間」であるらしい。

ノーベル賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンが定義づけた「ピーク・エンドの法則」。

何かを体験したとき、おもに私たちの記憶に残るのは、その出来事の一番印象深い「ピーク」部分と、その「終わり」だけなのだ。それ以外のことは、ほぼ記憶に残らない。体験する出来事の「長さ」さえ、脳の認識には影響を与えない。

今、私たちは皆でゴールが見えない、距離すら分からないマラソンを気づけば走らされている状態だ。でも、数年後に振り返れば、「こんな時間がいつまで続くのだろう」と感じている、この永遠にも感じる憂鬱な「期間の長さ」は記憶には残っていないということだ。ただ、残るのは「ピーク」と「エンド」のみ。この騒動の「ピーク」と「エンド」が結果的にどのようなものになるか(いろいろな有識者の意見を総合すると、残念ながらピークはまだ日本に来ていないのだと思う)。つまり、その記憶がどのように私たちの歴史に刻まれるのか、今、その大きな分岐点にいることは感じている。

同著には、

人間は「短期間」に集中して得られる喜びを課題評価し、「長期」にわたって手に入る静かで平穏な喜びを過小評価しがちなようだ。

とも書かれている。

刹那的、享楽的な行動に走らず、これまで過小評価してきてしまった静かで平穏な喜びに目を向けて。『暮しの手帖』が問いかけた、「ていねいな暮らしではなくても」ではないが、私は、もう一度、これを機会に自分の暮らしを見直すキッカケにできればいいな、とも思う。

一瞬は約3秒間。睡眠時間を差し引くと、私たちは1日あたり約2万の「瞬間」を体験している。けれども、そのほとんどの「瞬間」は忘れ去られていく。「ピーク」にも「エンド」にもならない、それらの他愛もない瞬間を噛みしめて。



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