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理転を考える文系東大生の皆さんへ

この記事はeeicの2Aを終えた新B3が、理転を考える文系東大生の助けになればいいな〜と考え、進振りや授業について振り返るものです。進振りの注意点や乗り越え方、進学先の選び方、授業への取り組みなど参考になれば幸いです。


1. 理転を決めた理由

 結論から言うと、私が理転を決めた理由は、プログラミングやコンピュータや数理などに興味関心がある人と一緒に大学生活を送りたいと思ったからです。私自身の考えとして、人は環境によってその人の未来も才能の使い方も変わるものだという考えがあるので、自分がなりたい姿になるために最適な選択は理転することだろうと考えました。また、文系では最新技術に追いつけないのではないかという漠然とした危機感もありました。

 以下では自分の気持ちの遷移を綴っています。進振りや授業についてみたい方は飛ばしてください。

 入学当初は、文科二類ということもあり私自身はなんとなく経済学部に進学するだろうと思っていました。経済学部に進学するつもりの友人が多く自分もそうなるだろうと考えていました。私自身大学生になるまでパソコンも持っていなかったし、情報系に行くなんて考えもしませんでした。

 しかし、一年生の夏休みに気持ちに変化が起きました。些細な出来事ですが、理系の友人に「AtCoderをやってみないか?」と誘われました。「授業でもプログラムを書いたこともないし、パソコンもそんなに触らないよ〜」なんて思いましたが、友人の助けももらいながら、いざやってみると結構楽しかったことを覚えています。

 夏休みも終わり1Aの授業が開始したころ、大学の友人と会う時間が増えました。当然と言えば当然ですが、文系の友人が多い自分の周りには、プログラミングが好きな人はなかなかおらず、同じ趣味の人が周りにいる環境がいいなと思い始めました。大した理由もありませんでしたが、なんとなく共通の志を持っている人たちが集まる学科に行きたいなと思ったのが理転を考え始めた理由です。

 昨今はAIによる第4次産業革命といわれたり、小中高で情報が必修化されるなど情報という分野の学習が不可欠になりました。そんな中、文系を選んでしまった自分がこの流れについていけるのか?と思うことが多くなりました。新しいインパクトを生み出す人間になりたいと思っていたので、圧倒的な技術の進歩に遅れをとるわけにはいかないという思いが強くなっていました。最新技術に追いつくためには、まずは素晴らしい教員の方々や友人など環境から作っていくべきだろうと思ったので、理転を決心しました。

2. 進振り 

 賛否両論がありますが東大の名物といえば、やはり「進学選択(通称 進振り)」でしょう。入学時の学科によって学科の受け入れ人数の違いはあるものの、成績次第では入学時には思いもよらなかった学科へ進学することができます。 

2.1 理転にはどのくらい窓口があるの?

 文系から理系へ進学するといっても、理系学部がどれくらい文系学生を受け入れるのか疑問に思うことでしょう。実際、理転をする学生は多くはありません。しかし、毎年50人弱は理転をしています。

 そもそも、進学選択時に文系学生が選べる理系の学科は、こちらの2023年度進学選択 第一段階進学定数を見れば人数がわかりますが、「全科類」(入学時の科類に関係なく募集される)に数字が割り当てられた学部・学科に限られます。見てみるともちろん、理一などと比べれば募集人数は少ないですが、思ったよりは数が多いと思われるのではないでしょうか。

2.2 進学の条件

進学可能なことは上記のようにわかりましたが、進学には学部・学科が求める「要求科目」の単位を取得する必要があります。例えば、『進学選択の手引き』(電子版もutasから見れます)の学部・学科別 要求科目一覧を見ると、理学部への進学には、文系の必要要件に加え、

<文科全類>
(1)基礎科目(基礎実験) 「基礎実験Ⅰ、基礎実験Ⅱ、基礎実験Ⅲ」(計3単位) または「基礎物理学実験、基礎化学実験、基礎生命科学実験」 (計3単位)
(2)基礎科目(数理科学) 「数理科学基礎、微分積分学①、微分積分学②、線型代数学①、 線型代数学②、微分積分学演習、線型代数学演習」 (計10単位)
(3)基礎科目(物質科学) 「力学、電磁気学、熱力学または化学熱力学、構造化学、 物性化学」(計10単位)
(4)基礎科目(生命科学) 「生命科学、生命科学Ⅰ、生命科学Ⅱ」から1科目 (2単位または1単位)

2023年度履修の手引き

など追加で最低24単位の取得が必要であり、正直降年などをしないとこんなに取れないと思います。文系から理学部への進学は茨の道です。

 さて工学部はどうでしょうか? eeic(電気電子工学科 / 電子情報工学科)は

<文科全類>
(1)基礎科目(社会科学)・基礎科目(数理科学) 「数学Ⅰ」(2単位)または「微分積分学①、微分積分学②」 (3単位)
(2)基礎科目(社会科学)・基礎科目(数理科学) 「数学Ⅱ」(2単位)または「線型代数学①、線型代数学②」(3 単位)

2023年度履修の手引き

であり、文系向けに開講されている数学を4単位取得すればいいとわかります。さらに、化学系や物理系の学科(物理工学科や応用化学など)を除き、他の様々な工学部の学科では要求科目が課されていないものも多いです。

 このことから、理転を志す文系学生はまずは工学部への進学を視野に入れてみるのはどうでしょうか?

2.3 進振りを乗り越える! 高得点を目指す戦略

 進学先が広いといっても、希望通りの学部・学科に進学するためには、点数を高く取る必要があります。私は2S終了時で約87点の進振り点があったので、点数を高く取るためのtipsをいくつか紹介します。

 一年生特に1Sの一年生は高得点が必要と言われても、自分がどれくらいの点数を取れるか全く想像できないでしょう。 ですから、1Sでは様々な授業を興味の赴くままに取るのがいいと思います。 最初から点数に固執しては視野が狭まってしまうので、最初から点数を取るとは意識しなくてもいいかと思います。
 興味のある授業を取るべきという前提があるものの、やはり点数は大事です。

  • 自分が高得点を取れる授業を見つける

それぞれの授業の評価には、

  1. テスト一発の授業

  2. レポートがメインの授業

  3. テスト、レポート、出席などから多様に成績を出す授業

など様々な評価基準があります。1Sの段階でどの形式の授業だと自分は他の学生に勝っているかを知ることがまずは大切です。 自分の得意形式がわかったら、1A以降で総合科目などで同じ形式の授業を多く取って点数を稼ぎましょう。自分はテスト一発の形式が得意だったので、総合科目の

  1. 数理科学概論I、II、III(文科生)

  2. 記号論理学I、II

などを取りました。
(担当教員によっても評価基準は変わってくるので、シラバスでよく確認しましょう!)

  • 重率をかける科目などに注意する

学科によっては、重 率をかける科目(ある科目の得点を高い割合で得点換算する)や、履修点(履修して単位を取得するだけで、進振り点が上がる)など、細かな点数計算方法が変わってくるので、履修の手引きの後半「学部・学科別 指定平均点一覧」などをよく見ましょう。

  • しっかりテスト対策をする

 当たり前ですが、いい点数を取るには授業にしっかり出て、勉強をする必要があります。授業を受ければいい点数が取れる授業が多いので、心配はありません。

 ただ、大学での定期テストは過去問が非常に有効です。担当教員によっては問題を使い回すことも多いですし、傾向を掴むことは大切です。 

3. 2Aまでにやっておくべきこと

 ここでは、eeicに進学した私が今(2024年3月)に振り返ってやっておくべきだったと思ったことを書いておきます。おすすめの教材なども書いておきますので、是非参考にしてください。

3.1 数学

 理転を考える文系学生にとって大きな敵が数学ではないでしょうか?数学III・数学Cを受験で使ったか否かの違いは正直大きいと思っています。 数学はどこでも使いますし、早いうちから対策をしましょう。

 一年生であれば、文系の社会科学の「数学I・II」の履修をすれば、基本的な微分積分と線形代数に触れられるので、履修を強くお勧めします。 ただ、「数学I・II」は文系向けの最低限の内容になっているので、理転を考える上では正直不足しています。なので、上でも述べましたが、数理科学概論I、II、III(文科生)の履修も勧めます。多少発展的ですが、これらを履修すれば理系の進度と大差はなくなります。統計も重要なので、基礎統計の履修も勧めます。
二年生の方は、2Sに開講される

  1. 微分積分続論

  2. 常微分方程式

  3. ベクトル解析

も履修の検討をしてみてはどうでしょうか? これらはかなり発展的な内容なので、難しいですがここで履修をしておくと2Aで楽になるので、余裕のある方は履修をしましょう。 2Aでも習うことが多いので必須ではないです。

おすすめの教材

ここに挙げたのはほんの一例ですし、参考書などは自分で読んで選ぶのがいいと思いますし、複数あっても全然いいと思います。ただ、理系学生でも読むのが難しいとされる参考書などは避けた方がいいと思います。謙虚に初歩的なものから進めるのがいいと思います。

3.2 物理

 数学に引き続き、物理もかなり苦戦する科目でしょう。 自分は大学受験では生物基礎・化学基礎を選択したので、かなり苦戦しました。学科の「要望科目」(進学に必須ではないが、履修が勧められる科目)に入っていることもおいですが、理系の必修科目の

  • 力学

  • 電磁気学

  • 熱力学

は履修した方がいいです。 自分は力学しかやっていなかったので、2Aでかなり苦戦しました。物理は大学入学まであまり学んでこなかった方も多いでしょうが、自分も物理で最も苦戦しました。物理はヨビノリさんの動画などから始めて早いうちに学習を始めることをお勧めします。

おすすめの教材

  • 物理学スーパーラーニングシリーズ

3.3 プログラミング

 2Aになるまでプログラミングをあまり触れてこなかったという人もちらほら見たので、そこまで神経質になる必要はないと思っています。学科によってプログラミングで扱う内容がかなり違うので、自分の行きたい学科はどのようなプログラミングの授業があるかは把握するのがいいと思います。eeicはC言語の授業が多く、Pythonに慣れていた自分には難しかった印象です。

 初心者でも乗り越えられるという記事をよく見ますが、自分としては授業のレベルも高く経験者でも大変なので、ある程度は経験しておいた方がいいと思います。「データ構造とアルゴリズム」に関してはPythonなど始めやすい言語で触れておくことをお勧めします。
前期教養の授業としては、

  • アルゴリズム入門

  • 計算機プログラミング

などがお勧めです。

4. 2Aの授業の立ち振る舞い

4.1 どの授業を取る?

 以下はeeicのホームページに載っている時間割です。 何個あると思いますか? 
なんと22個あります!eeicは工学部の中でも比較的授業が多く大変というイメージを持たれがちですが、実際授業数も多く、内容も濃いです。 

 ただ、これをすべて取る必要はないということは覚えておいてください(青く塗られた授業は必修なので必ず取ります) 。一つ一つの振り返りはまた別の記事で書こうと思います。

 私は、「生命科学概論」・「電気機器学基礎」・「電子物理基礎」以外の授業を取りましたが、もっと少なくてもいいかと思っています。

https://www.ee.t.u-tokyo.ac.jp/education/timetable/

4.2 友達に頼るなどしてなんとか乗り切った2A

 理転して初めてのセメスターはとても大変です。周りには優秀な学生が多く、授業の進度もかなり早いです。独力ではとても乗り越えられません。月並みなアドバイスになりますが、一人で乗り切ろうとせず、誰でもいいので質問できる友人や先生などを見つけて質問しましょう。みんな優しいので快く質問に答えてくれるはずです。

 最近はChatGPTなど生成AIのサービスが増えています。必ず正しい答えを提供するわけではありませんが、困ったときに助けてくれるいいパートナーであることには変わりありません。このようなツールも使っていきましょう。

 eeicは毎週課題が出る授業も多いです、毎週全ての授業を理解して課題をこなすことは難しいですから、少なくとも必須の授業は理解して課題に取り組みましょう。さもないと、中間試験や期末試験で痛い目に遭います!(かくいう私も友人に頼りっぱなしで中間試験はボロボロ 20点とか取った科目もありそう?!)

 大変ではありますが、私はフル単(可と良しかなかったけど)になりました。10月から2月まで長い2Aにはなりますが、最後まで諦めず食い付くことが大切です。決して途中で投げ出したりせず、とにかく進みましょう。2Aは成績は気にせずとにかく、耐えて単位を取り切りましょう!さもないと3年生になって駒場の授業を再び受ける(駒バック)することになってしまいます!

5. まとめ

 理転することをテーマに、進振りや必要な勉強などを綴ってみました。2Aを乗り切ってみて、eeicに理転したことは全く後悔していないし、むしろ理転して良かったと思っています。日本の大学では文理が決定的に分かれ、融合した教育を得るのが難しい現状にあると思っていますが、東京大学では進振りによって進路を自ら選択できます。先の読めない現代ですが、大学生になって視野が広がった今、後悔のない進路を選ぶための一助になれたら思います。
 初めての記事なので、読みにくい箇所もあると思いますが、読んでくださった方はありがとうございました。 コメントお待ちしております!


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