ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー《涙》2012年 @水戸芸術館現代美術センターとHELLOWEEN (ジャーマンメタル)の楽曲「How Many Tears」
"アートが生まれる場"として機能・存続している水戸芸術館現代美術センターで、開催した「アートセンターをひらく2023ー地域をあそぶ」。
ギャラリー6室「書く。部」の紹介ブースに置いてあるこの本は、2012年の展覧会「ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー = 力が生まれるところ」の関連書籍だ。
2012年の展覧会には、ゲルダとヨルクが、東日本大震災後の水戸に1か月滞在しながら制作した『Tear Reader(涙を読む人)』という作品がありました。
来場者から採集された涙は、1日目に最初の結晶が見られ1週間後に見ごろとなるのだとか。ガラスケースに収められた涙の結晶を顕微鏡で見ると、幻想的な世界が広がっていた。
【テキストからの抜粋】
涙もろい人のことを「水のほとりに建っている」というドイツ語の言い回しがあるように、感情的になるのをよくないことだととらえる人がいます。
涙は、私たちがあまり知らない体内の複合的な力の産物として、それぞれ無二の姿へと結晶化し、その不思議な力は、万華鏡のように多様なこの涙のコレクションに現れていて、私たちはそこから様々な眺望を楽しむことができます。
ペンとインクで描かれた竹林へと続く風景。飛行機から眺めたようなシベリアの地形、根っこ、中世の記号、シダ植物、刺青、新芽、宝石、市街図、胃袋、大聖堂の見取り図、真菌培養、孔雀、雪の結晶、霧に包まれた花々、闇に飲まれた思い、霧の中に消えゆく構造体。
この本に再会したのは必然だったのか?
私はちょうどドイツ文化圏における「涙」のことを考えていたのです。
ジャーマン・メロディック・スピードメタルのサウンドとイメージを1980年代後半に作り上げた先駆者にHELLOWEENというハンブルク出身のバンドがあります、初期の代表作のひとつ「How Many Tears」(1985年)は涙と迫害についての曲。
【部分的意訳】
果てしない空を見上げると、いつもどこかで戦争をしている、かつて楽園だったところも今は破壊と絶望、餓死する子供、ガス室。
恐怖の海を満たすためにどれだけの涙が流されただろうか。
"涙"って、とても個人的なものだと私は捉えていたのです。人に見せるのみならず集めて本にするとか、大量虐殺を涙の数に換算して、海にたとえて表現することには驚きがありました。
「How Meny Tears」は急・緩・急の展開で、中間の暖の部分は大河が流れるようなメロディに(違うんだけど) モルダウを感じる。収録されているアルバム「WALL OF JERICHO」は角笛で始まり、ジェリコの壁が崩壊する音が確認できる。映画「ベルリン天使の詩」と同じ頃、東西ドイツが壁で分断されていた時代。パンクの影響が残っていてボーカルは叫んでる、スラッシーな速弾きが新しくてかっこいいHMだった頃。長髪に化粧をしたいかつい兄ちゃんたちが演奏していたのは世界を憂う政治的、神話的な内容だった。歌詞からはユダヤ人迫害をも連想する。アルバムが内包している北ヨーロッパ神話的世界観と長大なクラッシックを聴いて育ったドイツ人の音楽的基礎体力。伝統と文化を肯定する一方で日本とは一線を画す敗戦国としての自虐感。ヘビーメタルな強面の奥の情感にやられます。
ゲルダ&ヨルクの『涙』のテキストはこの言葉で締めくくられていました。
「固いものはやがて打ち負かされるのです。」
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HELLOWEENは、リアタイで聴いていて「BETTER THAN RAW」までアルバムを買っていたけれど、好きなバンドの範疇じゃなかったけど、この夏ハマりまくってました。「」の最初のバージョン「Sea Of Fears」を聴いて歌詞に興味を持ったのがきっかけ。
Sea Of Fears
https://youtu.be/HedfNt0pqvU?si=dM2I14Fq50xBtx3p
How Many Tears
https://youtu.be/FXdWS6aENG8?si=mfzOKygyUXNX4HC-
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ほぼ一年後の今、「BETTER THAN RAW」以降の全アルバムを聞いて、動画も死ぬほど見た「Where The Rain Grows」がやっぱり一番のお気に入り。
Where The Rain Grows
https://youtu.be/kOAsDxSVPO4?si=H3MrblwH6nZjlye4
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