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水戸芸術館現代美術センター     蔡 國強 《水戸風水龍脈図》1994


 "アートが生まれる場"として機能・存続している水戸芸術館現代美術センターですが、所蔵している作品もあり、「アートセンターをひらく2023ー地域をあそぶ」に展示されている複数の作品は、開館以来の展覧会をなぞるような構成になっています。

《水戸風水龍脈図》は蔡國強が「水戸アニュアル'94開放系」展において、中国風水学を用いて水戸の形勢と歴史を調査した成果を絵画的に表現した平面作品。空撮写真+コンピュータドローイングを用い、布と和紙に馬の背台地上に龍脈が走る様子を表わしている。
この風水学に基づき、龍の首を切断するように切り通っている水郡線の脇と、大工町の交差点の2箇所に鎮物(しずめもの)としての獅子像が実際に設置されました。獅子像のひとつは市民の浄財で賄われたような話を聴いています。作品と現実がこのように直結する状況には、90年代前半の日本の経済力とアートセンター創設当時の熱があったからなのでしょう。

私は花崗岩を粗く削った(だけの)この2体の獅子像を、街中にシンボリックに立つブロンズ彫刻と同列の芸術作品として見ることが出来なくて、違和感を持ち続け、住まいからほど近い水郡線脇を散歩した時にも獅子像を写真には撮るけれど、SNSに投稿することにはストレスを感じていた。彫刻作品としての完成度の低さが気になるのだ。
今回の展覧会で《水戸風水龍脈図》と遂に対面した。大きい。
積極的に芸術館と関わるようなったのは1997年頃なので、私はこの風水龍脈図の実物を観ずに獅子像の存在だけを身近に感じていたというわけ。
あの獅子像は近代彫刻というより、お地蔵さんであったのだ。

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