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令和5年年末を迎えるにあたって、頭の中の大掃除

早いもので今年も残す所10日となりました。
年末年始は世の中全般的に慌ただしくなりますが、ヨコクラうどんも御多分に洩れず12月になるととにかく毎日毎日仕事に追われてる日々の連続でした。ですので、毎年9月ぐらいになると
「ああ、後3ヶ月で12月になる・・・。」
10月になると
「ああ、後2ヶ月で12月がくる・・・。」
そして11月に入ると
「遂に、遂に、ら、来月には12月が・・・・。」
日捲りカレンダーを一枚捲るたびにストレスが増していく・・・。
そんな日々を送っておりました。

・・・?
送っておりました・・・?

と、過去形で書いているということは・・・。

そうです!そうなんです!
ヨコクラうどんは今年の12月からこれまでのやり方をいくつか変更することになりました。今回はそのことについてご紹介したいと思います。

§ずっと抱えていた思い

年末年始はどの業種においても割と人の動きが激しくなることはある程度の共通認識して誰でも心構えとして持っているものだと思います。

ヨコクラうどんにおいても12月が忙しくなる理由として大きく二つの事柄がありました。それは以下の二つです。

❶お歳暮用の半生うどんの製造
❷年越しうどん、蕎麦の予約、販売

❶お歳暮用の半生うどんの製造

この半生うどんは完全に自家製麺で対応していた為に、麺の製造、袋詰め、パッケージ詰、包装、宛名書き、請求書発行、集荷、入金確認、これらの作業を全て自店舗で行わなければならず、これらの作業に付随する備品の管理等も加えるとかなりの手間のかかる作業となっておりました。

❷年越しうどん、蕎麦の予約、販売

年越しうどん、蕎麦なので実際に作業が発生するのは12月30日と31日の2日間だけなので12月全体の忙しさに直接関わってくるとは言い難いのですが、通常営業時に比べると作るうどんと蕎麦の玉の数が5、6倍になります。ですので、年末に向けて備品や人員の確保に手間がかかることになります。

❶についても❷についても結局、忙しくなるのは作業量が増えるから、というあまりにもわかりやすすぎる理由である事は同じです。しかし実は純粋に「作業量が増えたから忙しい」ことが12月を憂鬱に感じる理由ではないのです。

§この仕事でお客さんは喜んでいるのか?

12月なるとストレスを感じる理由は

「自分のキャパシティを超えた作業をこなし続けた結果、商品やサービスのクオリティにバラツキが出てしまうこと」

これが大きな要因です。たくさんの仕事や注文をこなせばこなす程に、その仕事をやり終えた時に達成感よりも不安感に付き纏われるようになるからです。

次から次へと注文が入り、それぞれに納期が定められます。そうなってくると非常に情けない話ではありますが、仕事は時間に追われるようになって、とにかく「注文通りに数量を間に合わせること」が最優先になってしまいます。

そういった状態で仕事をやり終えた時には
「今日の商品で果たしてお客さんは喜んでくれるんだろうか?」
そんな気持ちにしかなりませんでした。

そして、お歳暮というのは商品の特性上、うどんを食べるのはご注文者ではなく、贈り物を届けられた先の受取者様です。ですので、実際にご注文をされた方と商品を召し上がる方が別になります。

大抵の場合、誰かからの贈り物を受け取った場合は送り主様にお礼のメッセージを伝えると思います。そして、メッセージを伝える際にはおそらく大抵「嬉しかった。」「美味しかった。」とポジティブな意味のお礼を伝えることでしょう。

となると送り主様の方は「喜んでもらえた!」と理解してそれから以降、毎年当店にご注文をいただくようになります。これは売上という意味では非常にありがたいことなのですが、作り手である私としては常にすっきりしない心持ちになってしまいます。

なぜなら、常日頃「お店で食べるうどんが一番美味しい」と思いながら店舗営業しておりますので、それに比べるとお土産のうどんのクオリティはどうしても追いつくことができていないことに負い目を感じてしまうからです。

そして自分の心の中から先ほど述べた
「今日の商品で果たしてお客さんは喜んでくれるんだろうか?」
この疑問が湧き上がってきてしまうのです。

そして、それと同じ理由が年末の年越しうどん蕎麦の製造、販売にも当てはまるのです。
先ほども述べたように通常営業の5倍以上の製麺を行うために製法も変わります。普段は手打ちであったり、手作業の部分も全て製麺機での作業になったりします。

誤解がないように申し上げますが、ここで言いたいのは「手打ち」が良くて「機械製麺」が良くない、といっている訳ではありません。その製法に熟練しているのであれば「手打ち」であろうと「機械製麺」であろうと一流の商品を作ることは可能です。

ところがヨコクラうどんにおける普段の製麺方法と違うやり方を使って一年に一度だけ製麺してしまう、という事に非常に後ろめたさを感じてしまうのです。特に普段の数倍のお客様が来店されるということは、この年末の年越しうどん、蕎麦の時にしかヨコクラうどんの麺を食べないお客様もかなり含まれていらっしゃると思います。

決して12月31日の製麺が手抜きをしている訳ではないのですが、できることなら普段の営業において何とか美味しくなるように、と1年中、頭を悩ませながら作り上げた麺の方を食べてほしいなと、単純に考えてしまいます。この意見が作り手の我儘であることも十分にわかってはおるのですが、こうした思いが毎年年末の営業を終えた時に強く湧き上がってしまいます。

§お店が大事にしたいもの

こうした思いはお店を始めた15年前からずっと持ち続けていました。
それでもモヤモヤとした気持ちを抱えたままでも続けてきたのは、お歳暮うどんにしても年末の営業に関してもそれが無くなってしまうと経済的には大きな損失となってしまうからです。

それでも、猛烈に悩んだ末に今年からお土産うどんの販売も取りやめ、12月31日の営業も辞める事にしました。
それには今まで作業をしてくれていた職人の辞職であったり、当店におけるお土産うどんの需要も減ってきているという営業上の理由もあります。

ですが、それより大きな理由としては、今年も今まで通りにお歳暮にも年末営業にも取り組んだとしても、結局、全部終わった後で、今までと同じような悩みからは逃れられないだろうなと感じたからです。

ものすごく当たり前のことですが、自分自信がしっかりと胸を張って「どうぞ!」と差し出せる商品やサービスをお客様に提供しない事には商売は始まりません。
その原点に今一度、立ち返る意味で今年は今の体制でできる限り質の高い商品を提供するために制限を設けさせてもらいました。

私で5代目となる古いお店である故に、知らず知らずのうちに
「これはこういうものだ。」
ほぼ思考停止状態で現状のまま受け入れている考え方やルールが存在します。
そうした事について一つ一つ立ち止まって考える必要性を強く感じます。

お店にとって本当に大事なものはなんだ?
年末年始の売り上げなのか?
それとももっと他にないのか?

そんなことを考えた結果、辿り着いた一つの洗濯が今年の12月のお店の取り組みです。果たしてどんな結果になるのかはわかりませんが、とにかくようやく長い間、悩んでいた事に対して一つの行動を取ることができた、そのこと自体は自分なりには大きな一歩だと考えています。

従来のやり方を捨てることで失う売り上げは、手放したことで生まれた余剰の時間や人的なコストを新たに振り分けることで今まで以上の価値向上を達成できるサービスや商品の開発に向けていくつもりです。

一旦、設定された考え方や普段、当たり前のように扱っている思考様式は中々自分自身では振り返ったりし難いものです。でも、一年に一度、この年末年始を頭の中の大掃除のいい機会と捉えて見直しをしてみるのもいいのかもしれませんね。

本日もありがとうございました。




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