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シャンパーニュの真の姿



シャンパーニュというと、リッチでゴージャスなイメージのあるアルコール飲料であるが、それは何故だろう?
スティルワインと言われているいわゆる普通のワインとどこが違うのであろうか?

泡が決め手であるが、泡のあるワインでもフランス北部のシャンパーニュ地方で収穫された葡萄を使ってつくられたものでなければシャンパーニュと名乗る事は出来ない。

誰が決めたのさ。

フランスにはAOC(原産地統制名称)という飲食物に関する制度があり、内容はそれぞれではあるがどんなワインにも適用する。例えばシャンパーニュだったら葡萄品種、収穫率、醸造に関しては瓶内二次発酵であること(これがあの泡々を生み出す秘訣でもある)、さらには熟成期間に関しても、ノンヴィンテージのものは15ヶ月でヴィンテージのもの(葡萄の収穫の出来が良かった年)は3年置くことが課せられる。

これらはほんの一部であるが、大事なことである。テロワールと産物が関わり合ってこそ良いものが生まれるという理論である。よって、従わないものには罰則が与えられる。厳しいのだ。

「ウソー!信じられない。」という方もいらっしゃるだろうが、良いものを、良い状態を作り出す為にフランスは努力を惜しまない。
今回のコロナ禍に関しての対策を見ているとよくわかる。妥協は一切ないのだ。

結果、美味しいシャンパーニュができるのだから。ただし生産者にとっては容易なことではないかもしれないけれど。


さて、難しい話はここまでにして、シャンパーニュを楽しもうではないか。

数年前に私は<ポメリー>を訪れた。
初めての訪問であったが、日本のインポーターの紹介だったので、特別コースであった。

あとから知ったのだが歩く道も違うし、ティスティングも応接室で。カナッペがついていたような気がした。
その時驚いたのが、見学を担当してくれた女性が「シャンパーニュはいつでもどこでも楽しめるのよ。」例えば食前酒から前菜、メイン、チーズ、そしてデザートまでず〜っとシャンパーニュで通してもイケると言うのだ。

これは当時の私にとっては発見だった。
確かにメインだってチキン(モモ肉に限る)のクリーム煮や、あるいは舌平目のムニエルなんかも想像した段階で幸せいっぱい夢いっぱいになる。

そうなるとカーヴ巡りをして、もっとシャンパーニュのことを、いや、シャンパーニュのすべてを知りたくなる。


お酒が飲める人(飲めなくても楽しい。大抵のカーヴでは葡萄ジュースをお子様用に用意しているし)にはまるでパラダイスのような素晴らしさ、あのシャンパーニュがどうやって出来上がるのか、また自分の大好きなシャンパーニュメーカーではどのようにして葡萄からスパークリングワインを誕生させて、大切に大切に熟成管理して…、さらにエチケット(ラベル)が貼られているところなんて見たらそれこそ感動の嵐と言っても決して大袈裟ではないだろう。


パリからだったら電車でもOK,あっという間である。一番速くて簡単に行けるのはパリ東駅からエペルネー(Epernay)という駅まで一時間少々位で、驚くのは駅から徒歩5分のところにあのモエ・シャンドンがあること。もちろん見学は有料で要予約であるが、また、内容も担当者によって違いがある。お土産のブティックは素敵なので見学ビギナーにはやる気を与えてくれるところである。
シャンパーニュはもちろんのこと、グッズやタブリエ(エプロンのこと)など、記念になるスグレモノばかりだ。

お土産コーナーも楽しみの一つ


見学内容は皆ほぼ同じかなと思うが、日本から酒類のインポーターを通しての予約という場合は当然違ってくる。
メートル・ド・シェ(醸造責任者)が直接出てきて普通では聞けないようなシャンパーニュ造りの秘訣などを丁寧に説明してくれる。

ルミアージュ。泡が生まれる前の重要な作業のうちの一つ。


そう言えば、少し前にシャンパーニュカーヴ見学専門ガイドという方に出会った。どこのメーカー専属と決まっているのではなく、あらゆるカーヴをお得意様専用でガイドをするのだ。

その時は確かランス市にあるG.H.マムで、私は日本からのインポーターグループの通訳をしたのだが、テイスティングのときに<ラルー>という最高のシャンパーニュ(値段も最高)を出してくれたので心の中で「良い人だな。」と呟いた。
最後に彼は「それでは私は午後にポル・ロジェでガイディングをしなくてはいけないので。」といってカッチョ良く去っていった。

最高のシャンパーニュ・ラルー


「そんなガイドも良いな。」と、こっそり再び呟いた。

まあでもこういうのはビジネス絡みなのであの場においてたとえこっそりでも喜んでいたのは私だけであって、皆真剣にテイスティングをしていたのであった。
これはあくまでも特別な例である。

もしあなたがシャンパーニュ造りに興味があって初めてカーヴを見学するのであったら、ここのG.H.マムはおすすめである。
日本でもよく出回っているので、少なくても呑兵衛なら聞いたことが、いや飲んだことがあると思う。

コルドンルージュ


<コルドンルージュ>というと「あ〜、ハイハイ」という人は少なくないのでは?

G.H.マムはランスの町にあり、駅から歩けなくもないが、それでも車でいくのがおすすめ。
見学は45分で試飲15分。
地下14メートルまで階段で降りていき、品種、収穫、醸造、熟成などについて軽い説明があるが、シャンパーニュの特徴である瓶内二次発酵などは詳しく話してくれる。

最後にミニ博物館をサラッと見る。これは主に19世紀に使われていた道具の展示である。

19世紀にはシャンパーニュはこうして造られた。


その後エレベーターで地上に戻ってテイスティング。
非常にわかりやすい。ただし一つだけ偉そうなことを言わせてもらえば、先程言及したAOCも近年どんどん進化してきている。いつまでも大昔のままの知識は使えないときもあると思う。
この仕事も常に勉強して、時には新しくてマニュアル以外のものも提案するくらいでなくてはと勝手に思う。
いや、これは自分に言い聞かせたのである。

その後希望者はブティックでお買い物。

ランスにはその他テタンジェ、ポメリー、ヴーヴ・クリコなどもあってどれも良いと思う、G.H.マムの場合見学後に
<フジタ礼拝堂>があるので、興味がある人は寄っていってもいいかも。

フジタ礼拝堂内部


ランスには歴代のフランス王の戴冠式が行われた、また、シャガールのステンドガラスで知られているノートルダム大聖堂もあるのでカーヴ見学後に是非寄って欲しい。

ランスのノートルダム大聖堂


ここでまた空想癖のある私はあのルイ16世の戴冠式の時にマリー・アントワネットは当然参加したわけだが、どんな気持ちで参列していたのだろうか。
戴冠式の後は当然シャンパーニュでお祝いしたと思うが、お酒を飲まないマリー・アントワネットは何を飲んだのだろうか。

大聖堂内シャガールのステンドガラス


今回はベーシックコースをご紹介したが、はまってしまったら更にディープなシャンパーニュのカーヴ巡りはいくらでもある。


最後にお勧めマリアージュであるが、今回はG.H.マムのコルドンルージュを選んだ。
きりっと爽やかな辛口と華やかに泡が舞い上がっていく粋なシャンパーニュ。
私が特定のものを挙げるのは初めてであるが、これには当然理由がある。

以前働いていたレストランのハウスシャンパーニュはコルドンルージュであった。毎回アンチョビのミニクロワッサンをアミューズブーシュとしてサーヴィスしていた。

これがまた最高である。

これ以上のマリアージュはないと言い切れる。クロワッサン作れる方には是非お試しいただきたい。
アンチョビ嫌いな人は残念ながらこの至福の瞬間を辞退していただくしかない。
でも、シャンパーニュと合わせることであの臭みも程よく口の中で蕩けていくようだ。

ただしアンチョビは入れすぎないように。

これはアペリティフ用アイディアなので、クロワッサンは一口サイズのミニでなくてはいけない。これでお互いを引き立てることは保証付きである。

グルメ業界も今元気を出さなくてはいけない。そんなときにシャンパーニュは活躍してもらいたい泡ものである。






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