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マンディアンと申す



さて今回もチョコレート好きなら知らないといけないチョコレート話である。

私がフランスに来てから「かわいい〜。」と思ったチョコレートは2つある。一つはスーパーマーケットなどでも一袋2ユーロ以下で簡単に手に入る熊の形をしたマシュマロチョコレート。

シリル・リニャックのくまさんチョコ


でもこれは保管の関係か、コンフィズリー(チョコレートや飴、キャラメルなどを販売している専門店)で買ったほうが全然美味しいのである。

フランス人の大の大人の中にも実はこれを好きな人がいるのを知っている。
隠しているけどホントは好きだという人も結構いると思う。
試しに隠れキリシタンのように踏ませてみようか。

いや、熊さんかわいそうー。

もう一つが今回の主役である<マンディアン>である。これは意外と知られていないかもしれない。薄い丸板チョコレートの上にナッツやドライフルーツ等をのせたもの。

「あーそれなら見たことがある。」
或いは「知ってる〜。」という方も実はいらっしゃるだろうな。


その名も<マンディアン>という。
チョコレートの上はもともと四人のマンディアン(托鉢修道士)を表したものが飾られていて、フランスのプロヴァンス地方ではクリスマス・イヴの大ごちそうの際の<13のデザート(ヌガー、フルーツのコンフィ、カリソンなど)>というのがあるが、そのうちの4つだと言われている。

13のデザート


どうしてこの4つかというと、4つの托鉢修道会の制服の色からアイディアを得たそうである。
先ずはドミニコ会の白(アーモンド)、フランシスコ会のグレー(ドライいちじく)、カルメル会の茶褐色(くるみ、ヘーゼルナッツ)、そしてアウグスチノ会の濃紫色(ドライレーズン)と、少々無理があるかとも思うが、よくおもいついたものだ。

ただし、この13のデザート自体、1920年代まで全く知られていなかったそう。

だからあまり歴史的な、またプロヴァンスのと言っても郷土的な感じもしない。
基本は4つであるが、現代ではピスタチオやオレンジの皮のコンフィなどを加えて華やかさも加えている。
また、イチジクは値段が高くつくせいかあまり見なくなった。

クリスマス・イヴに限らずいつでもちょっとしたプレゼントに最適だと思う。
また、チョコレートはブラックでもミルクチョコでもホワイトでも、もちろん3つを合わせてかわいい小袋(その場合は圧倒的に透明で中が見える小袋でないとダサ過ぎ)に入れてプレゼントして相手に怒られる事は決してないだろう。

ベルギーのチョコ、ジェフ・ド・ブルージュのマンディアン


さて前回はヴァレンタインだったので、今回は一見ホワイトデーを狙っているようであるが、私の辞書にそんな言葉はない。それどころかフランスにだって、3月14日にそんなこと考える人はいないであろう。
あっ、さっきフランスの首相がニュース番組の中で3月14日からマスクとワクチンパスについて廃止するという決定事項を述べていた。まあ交通機関などを除いてかなと思うけれど。
本当に本当に?

私の気持ちはフランス語だと「オンヴェラビィアン(On verra bien.)」になるけど、まあそのうちわかるさ、という感じ。


ところで今回はフランス、いやひょっとして世界的に名高いアラン・デュカス大先生の<ラ・マニュファクチュール>という名のチョコレート・ショッブをご紹介。

もう日本でもすつかりお馴染みのアラン・デュカスシェフはフランスのピレネー・アトランティック県にあるオルテズ(Orthez)という町のご出身。
スペインに近いのでなんとなくそんな濃いめの雰囲気が漂っている素敵なお方。

まあ三つ星レストランの話はまたの機会のためにとっておいて、今回はなんと言ってもチョコレート、しかもマンディアンの話しをしないと。


そんなアラン・デュカス様の最初のチョコレート・ショップはバスティーユの
ロケット通りという速くて強そうな名前のストリートにオープンした。
少し通りから入ったところなので隠れたような感じで最初は目立たなかったけれど、段々と知る人ぞ知るという感じで、また私はすぐ近くのダンス・スタジオに通っていたので常に注目していて、プレゼントにはよくここのチョコを選んでいた。

やがてコーヒーショップができ、またここのコーヒーは美味しいのでちょくちょく寄らせていただいた。
余談だけど、パリのコーヒーには当たり外れがある。
でもアラン・デュカスのコーヒーはいつも格別に美味しいので(値段もなかなか…)御用達なのだ。
わりと最近にアイスクリーム屋もオープンしたので今度試してみよう。

店内


今ではあれよあれよと言う間にパリの至るところに陣取った感じのアラン・デュカスだが、つい先日意外なところで発見した。
オペラ界隈の、ギャルリー・ヴィヴィエンヌすぐ近くで、以前は別のパティスリーがあったところだ。
私はずっとそのパティスリーがそこで営業しているのかと思っていたので驚いた。

外観


つい入ってしまった私は2分後には店員に声をかけられる。そして当たり前の質問をしたり、写真を撮らせてもらったり…、私の場合は「買わないぞ〜。」というオーラが滲み出ているのか、商品の説明などはなかった。

少し話しているうちにここにオープンしたのはかれこれ一年前だけど外出制限が原因で閉めたりしていたとのこと。

「だから気がつかなかったのかなあ」と取り敢えず納得。
また、色々眺めているうちにアラン・デュカス風マンディアンとの遭遇。
通常のマンディアンとは違って分厚い板チョコの上にいちじくやらナッツやらがキレイに並んでいる。
これは美味しそうだ。
チョコレート感があって、またフルーツ、ナッツなどがアーティスティックに乗っかっている。
値段は11ユーロと、すこし高めだけど皆で分け合って楽しみたい。

まてよ、ちょっと喧嘩のもとか…、誰がイチジクで誰がオレンジピールでとかなると私のような両方欲しい人がいるとその場の雰囲気がガラッと変わってしまう恐れが。

とにかくこれは「そんじょそこらのパティシエには出来ないだろう。」というアラン・デュカスのセリフが聞こえてきそうな特別感のあるマンディアンだなあと思い知らされだ。

これは口にする機会を選ばなくては神様に申し訳ないチョコレートである。

かと言うと、ありきたりのマンディアンは自分で作っても良いし、クリスマスイヴの脇役としてテーブルを飾るのも素敵。甘口ワインとともに宴の最後を飾るにも相応しいチョコレートである。







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