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なぜグリエルの本塁打は急増したのか?

今シーズンのグリエルはキャリアハイの打率.298 31本塁打 104打点 OPS.884をマーク。特に本塁打は昨年の13本、一昨年の18本を大きく上回るものでした。
そこでなぜここまでの成績を残すに至ったのか、去年の打球傾向等と比較し、本塁打増の理由を探ろうと思います。

まず最初に打球速度に着目しました。当然のことながら打球速度が速ければ打球は飛びますし、遅ければ飛んでいきません。去年よりもホームランが倍以上に増えたということは打球速度が飛躍的に上昇したのか?という事で調べました。

         2017年       2018年   2019年
平均打球速度   89.8mph   89.3mph  89.3mph
HardHit%     43.1%        36.2%       37.5%
平均打球角度   10.3°         11.5°          14.5°
Barrel%           3.4%         1.9%          3.8%

※Baseball Savantより引用、HardHitは95mph(約153km/h)を超える打球を指す

平均の打球速度自体は2017年の方が速く、今年はむしろ一番ホームランが少なかった去年と変わらないという結果です。
またハードヒットの割合も増えているわけではありません。

しかし、Barrel%という指標は2017年より上昇しています。この指標は、近年多く用いられるようになったバレルゾーンと呼ばれるゾーン内に入った打球の割合を示します。
このバレルゾーンというのは、その打球速度、角度で放たれると打率.500、長打率1.500を超えると推定される打球のゾーンで、下の写真のようになっています。

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つまり、このバレルゾーン内に入るような打球を放てばそれだけ安打になる確率も上がり、鋭いライナーやフライになるので長打になる確率も上がるというわけです。
またBaseball Savantではバレルゾーン打球には劣るものの高い数字を残せるSolid Contact(薄いピンク色のゾーン)Flares/Burners(オレンジ色のゾーン)というゾーンもあるのでそれらを含めてグリエルの打球を分析していきたいと思います。

                 2017年  2018年  2019年
Barrels                 16打席   9打席     18打席
Solid Contact      37打席  25打席        21打席
Flares/Burners    132打席   116打席      148打席

調べてみると、確かに去年よりは増えていますが、本塁打になりやすいとされるBarrelとSolid Contact2つの合計は2017年を下回っています。では一体なぜ…と思いながらふと見ると、17,18年と比べて19年は"Solid Contact"ゾーン内の成績で大きく差をつけている事に気づきました。どれくらい差があるかというと、

2017年 打率.657(35-23) 7本塁打
2018年 打率.440(25-11) 5本塁打
2019年 打率.900(20-18) 11本塁打

となっており、同じ打球速度、角度帯とは思えないほどの差です。
同じ打球速度、角度で成績が変わるのはどういう事か、その理由はこちらになります。

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上が2017年、下が2019年の打球傾向ですが、今年はSolid Contactゾーン内の打球のセンター方向割合がかなり下がっているのが見受けられます。
つまり、本塁打になりにくい左中間〜右中間の打球こそ減ったものの、距離が近いレフト方向、ライト方向の打球はほとんど減っていないという事になります。

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FANGRAPHSによると今年のグリエルは本塁打になりにくいセンター方向の打球を減らし、引っ張った打球の割合を増加させています。(Pull%増、Cent%減)

またこのグラフでは分かりませんが、今年のグリエル はライト側が狭い本拠地の特性を活かし、ライト方向のホームランも数を増やしています。
実際、ライト方向の本塁打はほとんど本拠地で記録しているものでした。本塁打の傾向は下の通りです。

2017年

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2019年(1本はランニングホームラン)

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以上の事柄から結論を言うとすれば、

①打球角度上昇によるライナー、フライ打球の増加
②ゾーン管理による打ち分け
③本拠地の形を活かしたホームランを打つ技術の向上

といった感じではないでしょうか。
パワー増加以外にも大幅に本塁打を増やす秘訣があるんだなと改めて実感させられました。




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