童話 お風呂
ある家に、ブタさん、牛さん、ニワトリさん、羊さんが一緒に暮らしていました。
みんな、それぞれ仕事をしています。
ブタさんは、デパ地下でケーキを売る仕事です。
牛さんは、ミルクでチーズやヨーグルトを作る仕事です。
ニワトリさんは、卵を使った料理を商店街で売る仕事です。
羊さんは洋裁が得意なのでセーターを作り、洋服屋さんに買ってもらう仕事です。
🐖🐄🐓🐏
ある日、仕事を終えたブタさんが、何かを買ってきました。
先に帰っていたニワトリさんは、卵を使って夕食を作っていました。
牛さん、羊さんも、仕事場から出てきました。
「あ〜〜やっと仕事が終わった」牛さんが云いました。
すると羊さんも、「今日も、たくさん働いたから、疲れちゃった」
そう云いました。
それを訊いたブタさんは、ニコニコしています。
ニワトリさんが訊きました。
「ブタさん、なんだか楽しそうね、嬉しいことでも、あったの?」
「うん、そうなんだ。デパ地下で一緒に仕事をしているウサギさんが、いいことを教えてくれた」
🐖🐄🐓🐏
「ブタさん、いいことって、なあに」
牛さんが、チーズを食べながら訊きました。
「わたしも知りたいな」
羊さんも、云いました。
ブタさんが、
「分かった、教えてあげる」
そう云ったので、みんなはワクワクしています。
「あのね、今日は冬至っていう日でね、とても寒い日なんだって」
「うんうん」
みんなは、うなずいています。
ブタさんは続けました。
「ウサギさんがこう云ったの」
「ブタさん、今日みたいな寒い日には、柚を入れたお風呂に入るといいのよ」
だって。
🐖🐄🐓🐏
みんなは顔を見合わせました。
「ブタさん、お風呂って、なあに」
「僕も知らなかったから、人間の店長さんに訊いたんだ。
お風呂っていうのは、大きな入れ物に、たくさんのお湯を入れて、その中に入って温まるところだって」
それを訊いたみんなは、ビックリ!
震えあがりました。
牛さんが、「ボクは、いいや」と云い、
ニワトリさんも、「わたしも」
羊さんは、最後まで考えていましたが、
「やめておきます」と、云いました。
🐖🐄🐓🐏
ブタさんは、がっかりしてしまいました。
せっかく柚を買ってきたのにな。
「僕だけでも、お風呂に入ろう」
その言葉を訊いたみんなは、
「ブタさん、ブタさんもやめた方がいいよ」と、引き留めます。
「でもさ、せっかく柚を買ったし」
と、諦めがつきません。
「ダメだよ、入っちゃ、絶対にダメ」
みんなが、あまりに一生懸命に止めるので、ブタさんは、首をかしげます。
「どうしてダメなの?」
みんなは、云いにくそうです。
牛さんが、勇気を出して、ブタさんに云いました。
「お湯に入ったりしたら、茹でられてしまうからだよ。
ブタさんは、柚風味の茹でブタになってしまうよ」
「ゆ、茹でブタ!柚風味!」
さすがにブタさんも怖くなりました。
「分かった。僕も入るのをやめる」
🐖🐄🐓🐏
みんなは、ホッとしました。
こうして、誰も茹でられずにすみました。
良かったですね。
おしまい
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