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【詩】 漂う

「何をやってるんだ、お前は」

    ゆらゆらと……。

「ほら、起きなさい」

     ぷか〜りぷか〜り

「目を開けて、ほら、レイ」

     うるさいなぁ

「ワシの声を聴いて、誰だか分からんのか?」

      声?ワシ?あれぇ?

「あれぇじゃない、こっちを見なさい」

    面倒くさいけど、声の方を見た

    やっぱりだ


「自分の爺さんに久しぶり会ったのに、何なんだ、その面倒くさそうな顔は」

     面倒くさいのがバレてる

「当たり前だ、ポックリ逝くまでの何十年もレイの爺さんをやってたんだぞ」


    すごい!気持ちを読まれてる


「別にすごくはない、いずれお前にも出来る日が来る」

    そういえばお婆ちゃんは?

「……」

    ねえってば。お婆ちゃん!


「まだ、会ってない」

    ええ!なんでよ!行ってあげなよ

「行った。ワシがポックリ逝って直ぐに」

   ならなんで一緒にいないの?


「それは、その、あれだ」

    何言ってんだかわからないよ


「つまりは、まだ怒ってるのだ」

    怒っ……そうなの?

「うむ、そこでレイ、お前の出番なわけだ」


   せっかく気持ちよく寝てたのにぃ

「悪いが、頼む」

   お婆ちゃんもしつこいタイプだな

   お爺さんの浮気のことは、もうい

   いじゃん


「だろう?お互いにもう死んだんだし、いいじゃんな」

  あんまり調子に乗らない方がいいよ


「めんぼくない」

  じゃあお婆ちゃんのところに行って

  来るわ

「レイ」

   なに?お爺さん。

「乗り越えろよ。あんな輩よりもっといい男はごまんといるんだからな」

    ……行ってくるよー!

「頼んだぞ〜」


    ゆらゆらと

      ぷか〜りぷか〜り

        涙は海に溶けた


     了







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