ゲーム業界における「品質向上」という謎文句について

あら、奥さん、『風雨来記4』の発売日が7月8日に延期されたんですって! 発売1ヶ月前なのによ! ええと、なになに、

このたび、弊社が2021年4月22日(木)に発売を予定しておりました、
PlayStation®4/Nintendo Switch™『風雨来記4』につきまして、
さらなる品質向上を図るため発売日を下記の通り延期させていただくことになりました。

ああ、品質向上! じゃあ仕方が無いわね! それにしても、ゲームって発売延期するときに必ず“品質向上”を謳うわよねぇ……どうしてかしら?

とまあ、繰り返されるゲーム業界の悲劇について思いを馳せる今日この頃ですが、ユーザーにしてみれば「おいおい、来月遊べると思ったソフトが夏まで延期しちまったよ」って話なわけで、お待ちいただいているファンの皆様におかれましてはご苦労さまでございます。

今回の『風雨来記4』の件はたぶんモ○ハンのせいもあるのでしょうが、思い切った延期ですね。これは品質向上にも期待が持てます。

なぜ発売1ヶ月前に延期発表が多いのか

というのはさておき、なぜ発売1ヶ月前という、直前になって発売が延期になってしまうのか、それは、発売1ヶ月前で「こんな品質でソフトを出そうってか? ふさけんじゃねぇよクソザコが」とプラットフォーマーに拒否されたからに他なりません。日本一さんは違いますけどね。

プラットフォーマー、つまり、任天堂・SIE・マイクロソフトの三社。現在、彼らの許可なくしてコンシューマーゲームを発売することは罷りなりません。彼らが要求する様々な技術的要件を満たし、要修正と判断された不具合を修正するなどしないと「お前は不合格、列の最後尾に並び直せ」と地獄の宣告を食らうのです。その宣告が出される限界最終究極リミットが発売の1ヶ月前。ダウンロード専売タイトルはまた違うのですが、普通の会社の普通のパッケージ版タイトルの場合、ここで合格しないと発売延期というギリギリのスケジュールです。

別に日本一さんを責める気は無いのですが、ちゃんとした会社は「何回か不合格になるだろうな」みたいなスケジュールを組み、余裕をもって発売に漕ぎ着けるわけです。もっと言えば、普通じゃない巨大ゲーム会社ともなると謎の神通力が発動し、列に割り込めるとか割り込めないとか、これは私企業の争いですから弱肉強食もやむ無しですね。そりゃ、お得意さんには有形無形のサービスをするのが商売人ですから。

発売1ヶ月前に合格になれば、ロムの発注もパッケージングも流通もなんとか間に合います。まさに背水の陣。今回の日本一さんの件は何が特別な理由があるとしても、今、まさに時はコロナ禍ですから、スケジュールが読みづらいという側面もあります。余裕をみて発売を延ばすのは、企業として合理的な判断だったのではないでしょうか。

“品質向上”の真実

じゃ、品質向上って、ユーザーから見ると「ああ、ゲーム内にあんな要素やこんな要素が追加されたり改善されたりして、すごいことになっちゃうんだろうな!」みたいなイメージがあるかもしれませんが、その実態は「御社から指摘されました3件の不具合を修正いたしました」という、悲しい現実があるのです。いやでもこれ立派な品質向上だし。不具合無くなったら品質が上がったってことっしょ? 嘘ついてねぇし。日本一さんは違うし

最近じゃ「不具合? あー、発売初日にパッチをどかーんと当てれば万事オッケーっしょ?」っていう半グレみたいな会社も多いわけですが、その点、日本一さんは誠実です。そう、物理ロムは後世まで残るわけですから、きちんと直しましょうよ、直せるものは。未来永劫、パッチが配信され続ける保証はないわけですから。

品質向上しないと発売できない、だから発売延期をして品質向上を図る。これがゲーム業界だ! ビバ! 品質向上!

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