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好きな小説50選

狂おしいほど久しぶりにnote書いています。

Xとかいうツイッターで相互フォロワさんの守宮さんがやってらっしゃったのをみて、わたしもやりたーい! と思いやってみました。
(守宮さんの記事はこちら! 好きな本がいくつか重なっていて、にこにこしました)

記事を分割したら途中で飽きちゃう気がしたため、強引にまとめた結果、1万字を超える長い記事になってしまいました。
てきとうに読み飛ばしたりなんだりしてお付き合いください。
なお小説のタイトルと収録されている書名が同じ場合は『』、異なる場合やシリーズは「」を使用しています。
リンクはAmazonアフィリエイトを使用しています。
新潮文庫が多めなのは新潮社の回し者だからではなく、スピン(しおり紐)がついてるのが好きだからです。


日本の小説

日本文学:明治~戦前

思いついた順に書いており、作品が発表された時系列順ではないです。
学校の授業で取り上げられていて好きになるパターンが多かったようです。

1.夏目漱石『こころ』
言わずと知れた。高校の教科書に抜粋が載っていたのを読んだ方は多いのではないでしょうか。
多様な解釈が許される永遠に解けない謎が魅力的なのかなと思います。
漱石は大学のゼミでやっていたので結構思い入れのある作家です。
ほかにも『坊っちゃん』『それから』などが好きです。

2.芥川龍之介「羅生門」
これまた高校の教科書に載っていて、すげー小説だなと思いました。普段は退屈な現代文の授業が楽しかったです。(そろそろ、大正に書かれた小説を「現代文」て呼ぶのも違うのかなという気がしますね)
芥川龍之介はほかにも「鼻」「蜘蛛の糸」「地獄変」などが好きです。

3.国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」
こちらは大学時代に、漱石とは別の先生のゼミでやりました。
「死ちょう事実に喫驚(びっくり)したい」という岡本のわけ分からん願望は、大学時代にはほんまにわけ分からんなと思ったんですが、社会人になったある日満員電車から降りた瞬間に「こんなにいっぱい人おるのに全員いつか死ぬんやな、めっちゃヤバいな」と、ふと理解できたような気になった瞬間があって、とても印象に残っています。
国木田独歩はほかにも「富岡先生」「空知川の岸辺」などが好きです。

※余談
なお私はじゃがいもアンソロにお招きいただいた際に、「牛肉と馬鈴薯とゾンビ」という語呂とノリだけのゾンビ小説を書いています。
これを書いている時点では、まだ架空ストアさんに1冊だけ在庫があるようですので、ご興味ありましたらぜひ。

4.徳冨蘆花『不如帰』
ここから3作は大学時代の卒論で取り上げたよシリーズ。
「なぜヒロインは死ぬのか?」という考察をした卒論で、論文なんて立派なものではなく、感想文に毛が生えたぐらいのものができました。
結核にかかったために愛する夫と別れることになり、二度と女なんかに生まれはしないという浪子の臨終の叫びが痛切です。
黒田清輝の装画も好きです。

「ああつらい! つらい! もう――もう婦人(おんな)なんぞに――生まれはしませんよ。――あああ!」

徳富蘆花『不如帰』

5.尾崎紅葉『金色夜叉』
厳密に言うとお宮は死んでいませんが、夢の中で殺されるんですよね確か。
すごくおもしろくなってきて夢中になって読んでいたのに未完で終わってて(紅葉が連載途中で亡くなってしまったため)呆然とした記憶があります。
いつか伊豆にある貫一お宮の像も見てみたいです。

6.菊池寛『真珠夫人』
こちらが卒論のメインでした。大学時代にお昼のメロドラマ版真珠夫人が流行ったのですが、そちらは観ておりませんでした。
めちゃくちゃ魔改造してあったみたいで、たわしコロッケ(奥さんが晩ごはんに「今日のおかずはコロッケよ」と言ってたわしを出すという、冗談みたいなシーン)とか、かなり話題になった記憶があります。
なお菊池寛は短編も好きなものが多く、「忠直卿行状記」や「入れ札」がとても好きです。
『真珠夫人』の文庫本は絶版になっていますが、青空文庫で読むことができるようです。

「妾、男性がしてもよいことは、女性がしてもよいと云うことを、男性に思い知らしてやりたいと思いますの。」

菊池寛『真珠夫人』

※余談
なお『真珠夫人』に影響されて思いついたお話が『ムーンライト・ミンストレル』です。

7.中島敦「山月記」
これも教科書ですね。私ってもしかしたら天才かも? と勘違いしそうになっていた当時の私にハチャメチャに刺さりました。
ただでさえ調子に乗った若者だったので、これを読んでいなかったらもっと大変なことになっていたと思います。

8.幸田露伴『五重塔』
これは最近読んだものです。
幸田露伴は漢字がムズいイメージが強くて敬遠していたのですが、しばらく読んでいたら慣れました。
芥川の「地獄変」もそうでしたが、こういう、芸術に取り憑かれて義理人情を置いてきてしまう人の話はけっこう惹かれます。


日本文学:戦後~昭和

昭和の、文章が美しく、しかも時代が下っているので明治大正と比べてはるかに読みやすい小説が好きです。

9.川端康成『名人』
これも芸事に引きつけられすぎた人のお話ですね。当時「ヒカルの碁」を読み直していて、囲碁つながりでこちらも読みました。
文章に引き込まれすぎて、電車を乗り過ごしたことを覚えています。

10.獅子文六『てんやわんや』
いまはどうか分かりませんが、私が愛媛に住んでいた頃は「てんやわんやの善助餅」というCMが流れていました。
「食いたる餅の数五十、本当ですらい」だったかな?
愛媛を舞台にした小説といえば漱石の「坊っちゃん」が有名ですが、あちらが坊っちゃんの怒りでちょっとギスギスしているのに対し、こちらはのほほんとしていてとても好きでした。
私は図書館で新潮文庫版を借りて読んだのですが、ちくま文庫で復刊されたものがあるようですね。買おう。

※余談
愛媛土産はタルトとか坊っちゃん団子とかいろいろありますが、善助餅もオススメです。甘すぎず、ほどよいサイズで食べやすいです。
お通販もできるらしいです。

11.安部公房「棒」
男がデパートの屋上から転落して棒になっちゃう話。
高校の教科書に載っていた短編で、最初読んだときは意味がよく分からなかったけれど、授業で解説してもらって「おもしろ!!」って思いました。
同作者の「盲腸」とともに大学のレポートでも取り上げました。なんだっけ、肉体と精神の関係がナントカみたいなテーマで書く課題だった気が。
「棒」と「盲腸」はともに以下に収録されています。
なお自分のブクログを確認すると、安部公房は『壁』も『砂の女』も未読なのに、なぜか『笑う月』と『箱男』を読んでいました。なんでだよ。

12.遠藤周作『沈黙』
マーティン・スコセッシの映画から入った派です。
スコセッシは西洋側の傲慢さに注目していたように思いますが、原作はキリスト教が根づかない日本の社会的風土に重点があったのかなと思います。
遠藤周作は『海と毒薬』も読みました。表現が上手すぎて引用メモがいっぱいになります。

魅力のあるもの、美しいものに心ひかれるなら、それは誰だってできることだった。そんなものは愛ではなかった。色あせて、襤褸のようになった人間と人生を棄てぬことが愛だった。

遠藤周作『沈黙』

13.竹山道雄『ビルマの竪琴』
子どもの頃に読んで、大人になってから新潮文庫で再読しました。
書かれた時代が時代だけにけっこうどぎつい差別表現もあり、手放しで称賛しづらいですが、竪琴やオウムのやさしいイメージと戦争の悲惨さとの落差が印象的です。
なお竪琴のモチーフとなったミャンマーの民族楽器サウン・ガウは、外見だけですが自作『ムーンライト・ミンストレル』の吟遊詩人クロワが弾く竪琴の元イメージになっています。

14.山本周五郎『さぶ』
高校時代にお世話になった国語の先生がオススメしていた本。
あんまり細かい内容は覚えてないんですが、さぶがめっちゃいいやつだった記憶があります。
大学の二次試験前日に「いまなら読める!!」と思ってホテルで読みました。最後の追い込みをすべきだったのかもしれませんが、当時は受験のために数か月大好きなゲームにも触らなかったくらいだったので、よほど限界だったんだろうなと思います。

15.村上龍『限りなく透明に近いブルー』
村上龍はほかにもいくつか読んでいますが、これが一番印象に残っています。
タイトルかっこよすぎやしませんか。
暴力、ドラッグ、セックス、苦しみの果てにたどり着く青のイメージが鮮烈です。本にはクリーム色の紙に黒インクで文字が書いてあるだけなのに。

恐がるな世界はまだ俺の下にあるんだぞ。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』


日本文学:平成~令和

明治どころか昭和も遠くなりにけりな令和六年現在。平成から令和に絞っても好きなものがけっこうありますね。
社会人になってから読んだものがほとんどです。自分で金を稼げるようになったのでめちゃくちゃ本を買って積むようになりました。電子書籍というものがあってよかったなと心の底から思います。

16.辻仁成『海峡の光』
これだけは大学時代に読んだんだっけな?
舞台は函館の刑務所。看守のもとに、かつて自分をいじめていた奴が服役囚となってやってくる……。男同士のややこしい関係性がとても刺さりました。
大学以来引っ越しを何度かしており、そのたびに紙本をだいぶ処分してしまいましたが、こちらは大事に取ってあります。また読みたいなこれ。

17.辻原登『枯葉の中の青い炎』
この本も大事にとってあります。正直内容はほとんど覚えてないのですが、
当時住んでいた家の近所にあった「ふらんす亭」でハンバーグを待ちながら読んでいて、文学って自由で面白いな! と興奮した記憶。
Kindle版もあるようですね。

18.梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』
19世紀末、トルコへ留学した村田がほかの国からきた留学生とともに過ごした帰らぬ日々。
引用されるテレンティウスの言葉が胸に響きます。
角川文庫で出ていましたが、少し前に新潮文庫で新版が出ました。
『家守綺譚』や『冬虫夏草』と統一感のある装丁で嬉しいです。
そのほか、梨木作品では『西の魔女が死んだ』なども好きです。

私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない

梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』より、テレンティウスの言葉

19.京極夏彦『嗤う伊右衛門』
お岩さんのお話、くらいしか覚えてないけど、確かめっちゃ感動しました。
京極夏彦の作品については、百鬼夜行シリーズは分厚さにおののいて『姑獲鳥の夏』くらいしか読んでいませんが、『巷説百物語』が面白かった気が。

20.打海文三『ぼくが愛したゴウスト』
文庫版刊行当時、伊坂幸太郎の帯とあとがきにホイホイされて買ったやつ。主人公の少年が、心を持たないけどしっぽがある人間の世界に迷い込んでしまうお話。
こないだ書いた「沈黙せしミランダの献身」の根底にあるお話です。

21.佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』
最初に図書館で単行本を読んで、その後文庫を買って再読した気がするのですが、処分してしまったようです。残しておけばよかったなあ。
よく小説書いてる界隈で見かける「ほかに面白い小説を書く人はたくさんいるのだから、自分が書かなくてもいいのでは?」というお悩み、私はこれを若いうちに読んだので無縁でいられそうです。(まあ、そんなに悩むほど真剣にやってないんだろうとも思う)

22.村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』
36歳になっても魔法少女になる妄想を続けている丸の内OLのお話。純文学の短編集を読んでこんなにゲラゲラ笑うことがあるでしょうか。
表題作のほか「変容」も好きですし、芥川賞受賞作の『コンビニ人間』もすごく好きです。


日本のファンタジー・SF・児童文学

自分で小説を書くときはファンタジーものが多めなのですが、いろんな本に目移りしてしまうタイプなので、何冊も続くハイファンタジーのシリーズは敬遠してしまいがちです。
上下巻くらいで終わってたり、n部作になってて一冊一冊は完結していたりする本が読みやすいです。

23.安房直子『天の鹿』
安房直子の本はほとんど大人になってから読みました。
中でも図書館で借りて読んだこちらが特に好きです。異類婚姻譚というか。
単行本は確か活版印刷で文字組みに風合いがあって美しかった気がします。いまでは文庫版も在庫なく、数年前に復刊ドットコムでソフトカバー版が復刊していたのを見かけた気がするのですが、なかなか入手が難しそうです。

24.茅田砂胡「デルフィニア戦記」シリーズ
わたしには珍しく最後まで読んだ長編ファンタジーです。
高校の図書室でノベルス版22冊を全部借りて読んだので手元にはなく、さすがにあんまり覚えてないのですが、ナシアスが推しで次点がウォルとバルロ(だったっけ?)でした。
ほんのり油絵風な装画(沖麻実也)も好きで、イラスト集だけは買いました。中公文庫でも出ましたが、表紙のギャップがすごすぎて笑っちゃいます。

25.荻原規子『空色勾玉』(勾玉三部作)
高校生のときに読んで以来何度か読み返しています。
不器用な科戸王が好きでした……
勾玉三部作はどれも好きですし、つづく『風神秘抄』も好きです。
その他荻原作品では『これは王国のかぎ』も好きです。「西の善き魔女」は途中でネタバレを食らってから読んでないなあ。

26.向山貴彦『童話物語』
これは大人になってから読みました。
ペチカはあらすじに書いてあるほど性格が悪いとは思いませんでしたが、子どもの時に読んでいたら印象違っていたかもしれませんね。
作者の向山貴彦さんは生前Twitterで私にリプライをくださったこともあり、温かい人柄がうかがえる方でした。
「ほたるの群れ」が未完に終わってしまったのがとても残念です。

27.上橋菜穂子『闇の守り人』(守り人シリーズ)
高校生のときに図書室仲間の友達が激推ししていたのですが、いつも『精霊の守り人』が貸し出し中でタイミングを逃したまま卒業してしまい、大人になって新潮文庫が出てから読みました。
全シリーズ好きですが、子を持つ親の心情に言及した二作目の『闇の守り人』が一番印象に残っています。
タンダが好きです。

28.川上弘美『七夜物語』
芥川賞作家のファンタジー。若干説教くさいなと思うところもあるのですが、美しい言葉がいっぱいあって宝物のようなファンタジーだなと思います。酒井駒子の装画もすばらしいですね。
こないだ文庫化されましたね! 買おう。

29.森絵都『カラフル』
高校生のときに読み大人になってからも再読しました。
後半のお兄ちゃんの言葉にちょっと泣いた。
森絵都はほかにも『宇宙のみなしご』が好きです。

30.菅浩江『永遠の森 博物館惑星』
その名の通り、宇宙の博物館のお話。細かいことは覚えてないのですが最後のシーンがとても美しくて好きです。
続編が二冊出てるみたいなので、こちらもまた読み返したいです。


日本のミステリ・サスペンス

殺人事件の謎解きに重きを置いた本格ミステリはあんまり得意じゃなくて、伏線が美しく回収されるやつとか、どんでん返しがあるものとかが好きです。

31.伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
伊坂幸太郎は『オーデュボンの祈り』が大学生協の本屋さんに積まれていたのを手に取ってから、ずっと好きな作家です。最近の作品はあんまり追いかけられてないのですが。
中でもこちらはスケールが大きくて、伏線回収も見事だったなと思います。
ほかに特に好きなのは『ラッシュライフ』や死神の千葉君が登場する『死神の精度』『死神の浮力』です。

32.柳広司『新世界』
原爆が生まれた街で起こる殺人事件。オッペンハイマーが探偵役だったんでしたっけ……?
犯人の動機が怖いんだよなあ。
柳広司はほかにも「ジョーカー・ゲーム」のシリーズや、『トーキョー・プリズン』『贋作『坊っちゃん』殺人事件』『ロマンス』とかも好きだった気がします。

33.東野圭吾『容疑者Xの献身』
原作も面白いのですが、映画版が堤真一の名演によって有名になりましたね。
私は映画公開当時大学生で、互いに原作既読の友達と観に行ったのですが、上映終わってライトついたら隣で友達がべしょべしょに泣いててびっくりしました。

34.杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』
「電子書籍化絶対不可能」「ネタバレ厳禁」て、それがもうなんかちょっとネタバレな気もしなくもないんですが、純粋にめちゃくちゃ驚きました。
アイデア自体は誰か思いついても良さそうなものかもしれませんが、自分でも本を作っているのでこのすごさが分かるというか、実際にやる労力を想像すると気が遠くなります。
作者も、この本を実現させた関係者の人たちも、本当にすごい。いっぱいいっぱい褒められてほしいです。

35.浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』
出版当時、渋谷駅のハチ公口にでかい広告が出ていて気になっていました。作品にしかけられていたトリックと、表現しようとしている内容がうまく噛み合っていて、すごく良いなと思いました。
日本のミステリ史に残ってよい作品だと思いますが、就活文化が廃れたら読者もピンとこなくなるんでしょうかねえ。
浅倉秋成は『俺ではない炎上』も好きです。


日本の歴史・時代小説

36.黒岩重吾『中大兄皇子伝』
高校の図書室で単行本を読み、大人になってから文庫本を読みました。
二回も読んでる割に記憶が薄れているのですが、鎌足が魅力的で中大兄皇子が怖かった覚えがあります。
女性の扱いはひどかった気がするので、今読んでも楽しめるかはちょっと不安です。

37.飯嶋和一『始祖鳥記』
江戸時代に空を飛ぼうとした表具師のお話。
濃いキャラクタや派手な展開に頼らないけど迫力があって胸が熱くなります。
飯嶋和一は『黄金旅風』も読んでいて、どちらも好きです。ほかの作品も絶対面白いと思うのですが、通勤電車やスキマ時間に消費するのではなくて、ちゃんと腰を据えて読みたい! と張り切りすぎてついつい積んでしまっています。


海外の小説

海外文学には相当疎いのですが、中高生のときはシビアな海外YAが好きでよく読んでいました。
日本のYAは、ファンタジー以外は生ぬるい青春モノばっかりで読む気がしない(中二病患者の意見)と思っていました。
大人になったいまも海外のシビアYAが大好きです。

海外文学

38.スーザン・ヒル『ぼくはお城の王様だ』(『城の王』)
これはYAなのか……? 一部界隈でトラウマ本と名高いこちら……。
お気をつけください。私は通勤電車の中で読み終わってしまい、午前中「ハァ……」とため息ばかりついていました。
ちなみにフランスで映画化され、日本では「罪深き天使たち」という変な邦題がついており、そのタイトルで出版されていたこともあるそうです。
その後講談社文庫から『城の王』と改題されて文庫になりましたので、もしかしたらどこかの書店には残っているかもしれません。
(と、これを書いていたら1冊だけお通販で新品が見つかったのでポチりました! やったね!)
作品もそうですが、スーザン・ヒルのあとがきの言葉が印象的です。
私はこんな立派な志で小説を書いていないけれど、せめて「私をひとりぼっちにしないでくれ」という小説は書かないようにしたいな、と思っています。

よく思うのだが、なぜ、なんのために、小説を書くかといえば、結局はこれに尽きる――あなたはひとりぼっちじゃないんですよ、と伝えるため。

スーザン・ヒル『ぼくはお城の王様だ』あとがきより

39.ラリー・バークダル『ナゲキバト』
YAといっていいのかな? 静かなるシビア本。
高校生のときに旧版で読み、どうしても欲しくて大人になってから新版を買いました。これも『さぶ』と同じ国語の先生がオススメしていた本です。
『ぼくはお城の王様だ』とは違う意味で結末にびっくりしました。

40.ヘミングウェイ『老人と海』
海外のザ・文豪みたいな人の本はあまり読めていません。たとえばシェイクスピアやトルストイは一冊も読んだことがありません。ヘミングウェイはいまのところこの一冊だけです。
漁師サンチャゴがダイナミックでたくましくて、満足感がありました。読むだけでカルシウムが取れそうな骨太本。

41.ロバート・コーミア『チョコレート・ウォー』
ロバート・コーミアはYA作家に分類されていると思いますが、私は大人になってから好きになりました。右から左までどれをとってもシビアだなという印象です。
「チョコレート」という言葉から甘やかで楽しそうな印象を受けるかもしれませんが、全然そんなことはありません。バレンタインデーのチョコレート争奪戦ではありません。
学校の命令で生徒はチョコレートを売らされるのですが(その時点でだいぶひどい)、それを拒否した生徒がめちゃくちゃひどい目に遭うお話です。
コーミアの作品は、日本ではほぼ絶版になっているのではないかと思われます。売ってないけどどうしても読みたくて、よその図書館まで行って借りたりしていました。
こちらはアメリカで映画化されたことがあるそうです。再映画化されて日本でも復刊されないかな~。

42.アン=ロール・ボンドゥ『殺人者の涙』
こちらもシビアYA。
殺人者アンヘルが荒れ野の一軒家に逃げ込み、そこに住んでいた夫婦を殺害して居座るのですが、そこには夫婦の息子パオロもいて、アンヘルとパオロの奇妙な同居生活が始まる……といったお話です。

43.トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』
札幌にかつてあった名書店「くすみ書房」さんの「なぜだ!?売れない文庫フェア」で出会った本。
嘘はつかないが愛想のないカトリと、森を描くことにしか興味がない画家のアンナがお互いの世界を乱し合う過程が静かに描かれている、その雰囲気がとても好きでした。もう紙本は手放してしまいましたが、だいぶ忘れているのでまた読みたいな。


海外のファンタジー・SF・児童文学

前述の通り長いシリーズものが苦手で、ハリポタは読みましたがそこまでハマれず、ダレン・シャンは未履修のままやってきました。SFもあんまり詳しくはないです。

44.ルース・スタイルス・ガネット『エルマーのぼうけん』
子どもの頃に大好きだった本で、シリーズ3冊セットを持っており、姪っ子にもプレゼントしました。読んでくれたかは知りませんが。
作者が最近お亡くなりになったと知ってびっくりしました。『エルマーのぼうけん』はずっと昔から子どものそばに当たり前のようにある物語で、作者がいるなんて考えたこともなかったのです。
エルマーの冒険=みかんのイメージが強くて(私が愛媛県民だからかも)、思い出そうとすると一緒にみかんの香りを想像してしまいます。

45.オトフリート・プロイスラー『クラバート』
大人になってから名作らしいと聞いて読みました。これもなかなかのシビアYA(童話?)ですね。
読んだ後で知ったのですが「千と千尋の神隠し」に影響を与えたことでも有名らしいです。たしかに、水車小屋で働かされながら魔法を習うところや、最後の両親あてクイズ(?)なんかそっくりだなと思います。
何年か前にNHKラジオの青春アドベンチャーでラジオドラマ化されていて、全話録音してとってあります。

46.ヨースタイン・ゴルデル『カードミステリー 失われた魔法の島』
ヨースタイン・ゴルデルは、中学生のときに流行っていました。
一番流行った『ソフィーの世界』よりこっちのほうが面白いと友達の間で評判でした。
夢中になって読んだ記憶があります。プルプルソーダにめちゃ憧れました。
同じ作者の『サーカス団長の娘』も好きなのですが、こちらは入手困難そうだなあ。

47.タニス・リー『闇の公子』
「平たい地球」というシリーズ名ですが別に陰謀論とかじゃないです。
ひとりの人間が考えた話とは思えないくらい壮大で圧倒されました。美しい訳文と装画込みで大好きなのですが、細かいことを忘れているのでまた読みたいな。

48.パトリック・ネス『怪物はささやく』
みんな大好きシビアYAだ!
重い病気の母をもつ少年のもとに怪物がやってきて、三つの物語を語る。そのあとで、少年が四つ目の物語を語れというのだが……。
たしか読書感想文コンクールの課題図書になっており、そのころに図書館で借りて読みました。
舞台化のおかげで文庫にもなったぞ! やったね!
怪物の声をリーアム・ニーソンが演じた映画版もすごく好きです。

49.ジョージ・オーウェル『一九八四年』
読んだときはとても衝撃的で圧倒されたけれど、いまやビッグ・ブラザーとアイアムウォッチングユーぐらいしか覚えてないぞ!
再読したい気もするけど、しんどかった記憶があるので気おくれしてしまいますね。私が読んだのは黒い表紙のハヤカワ版ですが、角川から新しい訳も出ているようなのでそちらでチャレンジしてみるのもいいかな。

50.カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』
以前、同僚に元出版社の社員だった人がいて、一緒にご飯を食べに行く機会があったので「好きな本はありますか?」と聞いてみたら教えてくれたのがこちら。
映画もすごく良くてヴォネガットが「原作より出来がいい」と称賛したらしいことと、「でも、ヴォネガットを初めて読むなら『タイタンの幼女』のほうがオススメ」とも教えてくださったのですが、気にせずこっちを読んでしまいました。
第二次世界大戦時のドレスデン空襲を題材にしたお話で、作者自身捕虜としてかの地で空襲を経験したのだとか。
映画も当時は新宿ツタヤでレンタルできたので観ることができました。グールドのピアノと、ドイツ語で何度も繰り返される「シュラハトホーフ・フュンフ」の響きが耳に残っています。

お、50冊終わった。

おわりに

最後に選んだのが『スローターハウス5』だったので、それにちなんだことを書きます。

ちょっとネタバレなのですが『スローターハウス5』にはトラルファマドール星人というのが出てきて、彼らはとある性質によって楽しくて平和な時間だけを見続けることができます。

いっぽう私たちはトラルファマドール星人ではありませんので、過去から未来へ向かっていく時間の中で生きていて、つらいことや悲しいこともいっぱいあります。
また、そのときは楽しかった思い出が、その後に起こる出来事によって悲しいものに塗り替えられることもありえます。たとえば仲良しだった人と楽しく過ごした記憶は、その人にめちゃくちゃ嫌われたら悲しい記憶に変わってしまうこともあるでしょう。

けれども、こんな風に自分の好きな本について思い出すときは、いつだって良い気分になります。たとえ本の内容はきれいさっぱり忘れていても、あの本はいい本だったなあ、と思い出すだけで十分に愉快なのです。

読書はきわめて個人的で、なかなか外からの影響で覆されることのない経験だと思います。(後日作者がすごい差別主義者になっちゃってたとかだったら嫌になるかもしれませんが)
別にそのために読書するわけではないけれど、後々振り返ってみたときに、いつでも取り出せるしあわせな記憶が増えていくのが、読書のいいところだなあ、と改めて思いました。


こんな長い記事を読んでくださった方いるのでしょうか。
もしいらっしゃったら、ありがとうございます。


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