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同人誌の感想:大滝のぐれ『バナナ農園』(再読)

大滝のぐれさん『バナナ農園』を読みました。(再読)

※以下、ほぼ同内容を「尼崎文学だらけ」(あまぶん)の推薦文として投稿しております。

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「誰彼かまわず推薦できないかもしれない!」
『バナナ農園』の表紙を再度開いたときの正直な気持ちです。
推薦文なのに、いきなりごめんなさい。

だって、一作目から「チョコミントとうんこ」。うんこですようんこ。お食事中の方すみません。ていうか、お食事中ならこんな文章を読んでないで食事に集中したほうがいいのでは。
こちらはタイトルの軽やかさに反して、かなり猟奇的です。描写がすごく見事だから、臨場感が半端ない!
「誰彼かまわず推薦できないかも」と思ったのは、その筆力の凄さゆえです。

でも、このたび再読するまで、私は不思議なほど「ギョエッ」の印象を忘れていました。たぶん続く二作の印象によるものなのでしょう。
二作目「雪上のぬくみ、あるいは彼女の死」は、不穏な題名ですし今度は吐瀉物が登場しますが、ゲロ吐いてるのに後味はさっぱりとして、希望に満ちています。
語彙を放擲した言い方ですが、冒頭がすごくエモいんですよ。恋人に裏切られ、号泣しながら嘔吐している主人公を見ているのが、猫と「古い印刷屋の『Tシャツも作れます』という文言が書かれた看板」だっていう。「Tシャツも作れます」、まるで的外れな励ましみたい。

そして表題作でもある三作目『バナナ農園』。
兄弟ふたりの危うくも微笑ましいドキドキの冒険譚を読み進めていくうちに、突然がらりと変わる風景が鮮烈。
詳しくは読んでのお楽しみですが、きっと自分の期待や想像と違ったときの驚きや戸惑いを実感することになるはず。

三作を振り返ってみれば、登場人物たちは大なり小なりみな誰かに期待をして、そして裏切られています。
けれども100%期待通りの人間なんて、本当にいるでしょうか。
人間なんて、いくら人前で取り繕っていようとも、「どんなゲロマズな部分が隠れてるかわかったもんじゃねえ」(「チョコミントとうんこ」)もの。
あるいは単に「血と肉」(同)でしかないのかもしれません。
それでもこの本を読み終わった後には、そんなに悪いものでもないような気がするのです。きっと「バナナ農園」が、前の二作で描かれた生々しいおぞましさやきたならしさもひっくるめて、半ば諦め、半ば肯定してくれるからなのではないでしょうか。

最後まで読み直して、やっぱり誰彼かまわず推薦したくなったので、この文を書きました。
『バナナ農園』、面白いですよ!

通販情報

・尼崎文学だらけ(~2021年7月31日まで)

・BOOTH


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泡野瑤子(阿波/シネマ芋先輩)
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