見出し画像

未完了を完了させる

28歳の時に乳ガンになった
結婚して2年にも満たない頃だった

母には告知された夜に電話で伝え
次の日に母が会いに来てくれた

母を見ると目が真っ赤だった
昨日の電話の後泣いていたんだろう

でも母は涙ひとつ見せずに
気丈に振る舞った
必死にこらえているようだった

きっと母のことだから
一番辛い思いをしている私の前で
泣いてはいけないと思ったのだろう

そんな母を見ていたら
私も涙を見せてはいけないと思った
私も必死にこらえた

怖いよー
いやだよー
本当はそう言って
母と一緒に泣きたかった

心の中で叫んでいた感情は
外に出ることなく
心の奥底へと沈んでいった


そんな未完了の感情は
表に出さない限り
ずっと心の中でくすぶっていて
ふとした瞬間に
湧き上がってくる

もう済んだことだからと
見て見ぬ振りをしても
決して完了してはいない感情

そんな未完了の感情を出す機会を 
与えてくれたのは娘
娘が心の病になったことをきっかけに
私は自分と向き合うことを始めた
自分と向き合う過程の中で
出てきたこの未完了の感情を
終わらせることに決めた

私は母に言った
「本当はあの時、お母さんと一緒に
泣きたかった。怖さや不安を吐き出したかった。でもお母さんが泣かないようにしているのがわかったから泣けなかった。お母さんの前で思いきり泣きたかった。」
涙が止まらなかった

母は私の言葉を聴いて
手で顔を覆って泣いた
母は決して私の前で涙を見せてはいけないと心に決めていたらしい
一人になっては泣いていたと

母と私は抱き合って泣いた
あの時の感情を全て出し尽くすまで
声をあげて泣いた

約20年の時を経て
ようやく私の中の未完了を
完了させることができた


今から7年前の出来事を
懐かしく思い出す

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?