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名曲「Rain」大江千里オリジナル版と朝倉さやカバー版を聴き比べてみて

不朽の雨ソングとして多くの世代に愛されている大江千里「Rain」。

よくメディアでも取り上げられているので楽曲の存在は知っており、数年前に一度聴いた記憶があるのですが、当時なぜか私にはピンと来ませんでした。
しかし、朝倉さやカバー版の独特な魅力によって、オリジナル版も含めどっぷり沼に浸かってしまいました。

沼にはまったきっかけ

7月頭、TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」に朝倉さやさんがゲスト出演しており、そこで彼女の楽曲が流れていました。
いつも日曜日はダラダラ寝ながらラジオを聴いているのですが、半分寝ぼけながらも「あぁ〜なんか印象的な声と曲だな」と目が覚め、あの曲は何だ?とTwitter検索して分かったのが「Rain」のカバー曲。
「あの大江千里の曲か、こんな曲だったっけ?」と思い、改めてオリジナルの大江千里版も聴いてみると、めっちゃいいやん!!とリピート。
梅雨の時期も相まって、日常と楽曲の雰囲気が合っていてすごく心掴まれたのです。

ネットで「Rain」を検索してみると、新海誠監督の「言の葉の庭」で秦基博さんがカバーしたことで若い世代の人も結構知ってる楽曲なんですね。他に槇原敬之さんも。

ただ、私の中では大江千里オリジナル版と朝倉さやカバー版の2つが群を抜いて好きなので、なぜこの2バージョンに心掴まれたのか比較してみました。

大江千里版は「リアルタイム」
今まさに起きている状況に対して、生々しい描写

私自身、歌詞分析があんまり得意ではないのですが、歌詞以外に編曲、歌唱を総合して分析してみたいと思います。

「Rain」発表時は1988年、まさにバブル突入時代。
80年代の音楽は独特の艶っぽさがありますね。当時の時代に影響されて音楽そのものも元気な印象です。

大江千里さんは当時27〜28歳で、まさにその時代の若者って感じがします。
世の中の勢いもあって自分で切り拓くパワーがあるというか、どことなく人間くささがにじみ出ているというか。
あと大変失礼なのですが、大江さんは歌が上手すぎないのも特徴ですね。そんなところが人間くささにつながっているのかもしれません。

そんな彼が歌う「Rain」は、全体を通じて主人公の後悔と焦燥感が漂っています。
歌詞に「どしゃぶり」「ずぶぬれ」とあるように、シンセの音とギターのカッティングのサウンドがしっかり雨が降っているようなアレンジで、メロディは何度かの転調によって感情が高ぶっていく様子が表現されています。
大江さんの歌い方もサビになると畳み掛けるような早口に変わっており、特に「行かないで 行かないで」と繰り返すところは、今まさに必死に別れを止めようとする主人公がいる。
でも「口笛ふくぼく」は、彼女には焦っている姿は見せたくないのかな?と。(実際にはバレてる)

男性側の主人公の心の動きが鮮明に感じ取れて、二人は別れるかもしれない…そんなシリアスなシーンを目の前で目撃しているかのようなオリジナル版です。

朝倉さや版は「回想」
彼女側の視点で、あんなこともあったねと過去を振り返る

朝倉さや版にはバンドサウンドとアコースティック(ライブ)の2種類が発表されていますが、特に惹きつけられたのはライブ音源の方です。

カバーなので歌詞もメロディも同じですが、こちらのアレンジはアコースティックギターとピアノのしっとりしたサウンドに。テンポもゆったりめで、本家と比べると歌声を聴かせる系の楽曲になっています。
音数が少ないアコースティックによって土砂降り感もずぶ濡れ感も薄く、ゆったりなので焦燥感もなく、オリジナル版にあった生々しさは感じられず、何かフィルターをはさんだような印象を受けます。

ここから勝手な解釈ですが、朝倉さんが女性ということもあり、主人公である男性側ではなく相手の彼女側の視点で歌っているのかなと思いました。
アコースティックサウンドによる雨のやさしい印象は、2人が別れてから少し経過して、ある雨の降る日に別れた時のことを思い出しているのかな、と。

別れた時はもしかしたら言い争ったかもしれないけど、少し時間が経ったことで冷静に思い返している元カノの回想シーンを描いている(と勝手に解釈した)カバー版です。
そして、朝倉さんの朗々とした歌声はやさしさと明るさがあるので、悲しい感じはなくてちゃんと前を向いて歩いているような印象です。

最後に、2つの楽曲を分析して

カバー版はどれも歌が上手と思ったのですが、その中で朝倉さん版は他の方とは印象が違っていたので、カバーの中で一番好きだなぁと思いました。

朝倉さやさん、今回のことで初めてお名前を知りました。民謡で培われた歌声のパワー恐るべしです。
「Rain」のライブ音源ではピアノの山岡恭子さんがコーラスを担当されていますが、二人の声が合わさるとまた良いですね。
朝倉さんは明るいのに対して、山岡さんは大人で包容力のある歌声です。2番のサビは主メロとハモりが反対になっているのも面白いです。

あと、オリジナルが発表されてずいぶん経ってから大江さんがつつじヶ丘を舞台にして作ったと言っていて、元調布市民としてはとても嬉しかったです。
80年代の調布は私が住んでいた10年前とは違ったと思いますが、京王線や23区より少し田舎な東京の風景が思い出されて、懐かしい気持ちにもなりました。
関西出身の大江さんがあのあたりを知ってるってことは実際に住んでたのか、それとも京王線沿線に彼女がいたんでしょうか??勝手に妄想が広がります。

(最後に)
今回初めてnoteを書きました。長文を読んでいただきありがとうございました。

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