幼馴染と過ごす最後の春休み EP2
土曜日の朝がやって来た。
予定通りの時間に目が覚めた俺は、
5分置きに設定しておいたアラームを切って起き上がった。
洗面台に直行し、
顔を洗い、歯を磨いて、服を着替えた。
家の中は静かだ。
土曜日だが、両親は朝早くから仕事に出かけている
俺は玄関に向かって薄暗い廊下を歩いた。
最近新調したスニーカーの靴紐を結び、
全ての部屋の電気が消えていることを確認した。
ガチャっ
ドアを開けると、心地良い青空が広がっていた。
ドアの鍵を閉め、
俺は遥香の家に歩き出した。
俺には兄弟がいない。
子供の頃から、一人の時間が多かった。
共働きの両親は、いつも朝早くから仕事に行き夜遅くに帰ってくる。
いつも、寂しかった。
遥香の家は、
俺の家から歩いて10分ほどの距離にある。
今考えてみると小学生ぐらいまでは、自分の家より遥香の家にいる時間の方が長かったように思う。
思い出にふける間もなく、
俺は遥香の家のインターホンを押した。
ピーンポーン。
ガチャっ
ドアがゆっくりと開いた。
遥香: おはよ!時間ぴったしじゃん!
そう元気な声で僕を見つめる彼女の屈託のない笑顔は、昔から全然変わっていない。
遥香: ちょっと外で待ってて!すぐ出るから!
そう言って、遥香は家の奥へと消えていった。
ガチャっ。
ドアが開いた。
遥香: お待たせ!
花柄のカーディガンにジーパンスタイル。
相変わらずスタイル抜群だ。
遥香: 今日、思ったよりあったかいねぇ
〇〇: そうだな、3月とは思えない
遥香: よーし、天気も良いことだし『思い出ツアー』
張り切っていこーう!
遥香は天高く拳を突き上げた。
彼女がよくやるポーズだ。
〇〇: おーう!
俺達は、通っていた幼稚園の方向に歩き出した。
幼稚園が見えてきた。
変わらず、綺麗な建物である。
遥香: 知ってる先生いたりするかなぁ〜
〇〇: いたら凄いよな、15年以上も経ってるのに
遥香: これ正門から入っていいのかな?笑
〇〇: いいんじゃない?笑
遥香: ま、ちょっとお邪魔するだけだしね〜!
俺達は、正門から幼稚園に入った。
教室の窓は透明で、園庭からも中の様子が確認できるようになっている。
園児達は、教室の中で先生の話を聞いているようだ。
遥香: わぁ〜みんなお利口さんに座ってる〜
かわいい〜
遥香は教室の中の園児達を見てそう呟いた。
〇〇: 俺ら不審者だと思われないかな笑
遥香: え、やばいかも?笑
顔を向き合わせ2人は微笑んだ。
すると、
後ろから声が聞こえてきた。
??: え、もしかして、遥香ちゃん??
遥香ちゃんと〇〇くんじゃない??
2人は声のする方向に振り返った。
そこには40代後半ほどの優しそうな女性が立っていた。
??: 私、誰か覚えてる⁇
女性は俺達に尋ねた。
遥香: え、もしかして...嶋村先生ですか!!?
遥香は興奮している。
嶋村先生...聞き覚えがある名前だ。
〇〇: え、あの嶋村先生ですか!?
??: そう!16年前貴方達の担任だった嶋村です。
今はね、ここの園長をしているの。
遥香: えぇ、そうなんですか!凄い!
ってことは、ずっとここで働かれてるんですか?
嶋村先生: そうね、20年間、ずっとここで。2人とも美男美女になって。。
〇〇: よく、僕達ってこと分かりましたね。
嶋村先生: なんとなくね、面影があって。
もしかしたらと思って。今日は、どうしたの?
〇〇: 思い出ツアーしてるんです。
僕が、この春から東京に引っ越すので東京に行く前に最後に2人で思い出の場所を周ろうと思って。
嶋村先生: 思い出ツアー?それはいいわね。
先生は微笑んだ。
遥香: そうなんです!それでここに最初に来たんです!
嶋村先生: そういうことなのね。
遥香: まさか、嶋村先生に会えると思ってなかったので凄く、嬉しいです!!
遥香は心底嬉しそうだ。
嶋村先生: 私もよ。大きくなった2人に会えてとても嬉しい!
わぁ〜お外だぁ!!!
園児達が一斉に外に出てきた。
嶋村先生:懐かしいでしょう。2人とも運動が好きで、よくこの庭を走り回っていたわね。
〇〇: そうでしたっけ?
嶋村先生: そうよ。よく鬼ごっこをしていたわ。
逃げる遥香ちゃんを〇〇くんがよく追いかけてた。
遥香: 私、覚えてます!
基本〇〇が鬼で私が逃げてた。笑
〇〇: あぁ、そうだったかも笑
嶋村先生: 本当に懐かしいわね。。そんな2人ももう就職かぁ。遥香ちゃんは、地元で働くの?
遥香: はい、そうです!〇〇銀行に。
嶋村先生: ほぉ、〇〇銀行!立派だわ。
それで、〇〇君は東京かぁ。
いつも一緒にいた2人がとうとう離れ離れだなんて。。
あっ、ごめんなさいね。
〇〇: 大丈夫ですよ、全然。
3人は気まずくなりそうな雰囲気を変えようと
微笑みを浮かべた。
その後、俺達は先生とひとしきり話をして幼稚園を後にした。
遥香: ほんと、最後に会えてよかったね!嶋村先生
〇〇: そうだな、会えてよかったよほんと
遥香: この調子で!次は小学校!!よーし!
遥香はまたも拳を高く突き上げた。
〇〇: 気合い、入ってんなぁ。笑
遥香: 〇〇と過ごす最後の春休みだもん!
楽しまなくっちゃっ!
そう言って、照れ笑いした遥香の横顔は
少し新鮮だった。
EP3へ続く〜
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