クラスのマドンナは人知れず泣いていた 第2話
「おーい、なにぼーっとしてんだよ早く行くぞ」
同じサッカー部で同じクラスの仲の良い大沢に声をかけられた。
大沢「お前、最近おかしくない?常にぼーっとしてる感じ。部活中もさ、、」
〇〇「そう?」
大沢「そうだよ、心ここにあらずって感じ」
〇〇「大沢はよく僕のこと見てるんだね」
大沢「なんだよそれ。」
〇〇「最近、ずっとある人のこと考えてる」
大沢「ある人?え、なに好きな人?」
〇〇「ん〜そんなんじゃない」
大沢「チッ、違うのかよ面白くねーな〜」
〇〇「からかうなよ、結構真剣な悩み。」
大沢「誰なんだよ」
〇〇「正源司陽子。」
大沢「え、正源司陽子!?お前、やっぱそれ好きな人じゃねぇか!」
〇〇「だから違うって。」
大沢「じゃあなんで。」
〇〇「正源司が、泣いてたんだよ1人で。」
大沢「泣いてた?いつ?どこで?」
〇〇「少し前雨降って部活休みになった日あっただろ?あの日、教室で。」
大沢「は?俺と一緒にすぐ帰った日だろ?」
〇〇「忘れ物教室に取りに行くって、大沢のこと待たせたじゃん、その時に、教室で見たんだよ。」
大沢「あっ、そういうこと。他に、誰かいたのか?」
〇〇「いない。僕と正源司だけ。」
大沢「なんだよそれ、正源司と2人きりなんて激アツじゃん。」
〇〇「普通ならね。でもそれどころじゃなかった。」
大沢「おう...」
〇〇「教室入った時、最初暗くて誰なのか分からなかったんだけど話しかけたら振り向いてそれで正源司だって分かって...」
大沢「それで...?」
〇〇「凄く目真っ赤にして涙ぐんでた。」
大沢「えぇ.....」
〇〇「忘れ物取りに来たって言ったら、今のは見なかったことにして!って走って教室出てったんだよ...」
大沢「そうか...で、正源司の涙の理由が知りたくてその事で頭いっぱいで最近こんな感じなんだ、と...そういうことか?」
〇〇「そう。物分かりいいじゃん。」
大沢「まぁね〜」
大沢は右手を顎に当て、考えるポーズをした。
大沢「俺も、正源司が泣いてる理由興味あるわ。
だってあいつ超可愛いじゃん。」
〇〇「そんな理由かよ。」
大沢「まぁいいじゃん、興味ある理由なんてさ。
一緒に解明しようぜ、正源司の涙の理由。」
〇〇「本当に??ありがとう。」
大沢「おう、できる限り手伝うぜ。俺も知りたいし。」
僕達はそれから、あまり怪しまれないように注意しながら正源司陽子周辺の調査に入った。
大沢「〇〇、なんか情報入ったか?」
〇〇「何も。もともと知ってる情報だけ。大沢は?」
大沢「俺も、何も。はぁ...」
大沢は溜息をついた。
大沢「仲の良い女子を探ってみても分かるのはいつものマドンナっぷりだけ。凄く楽しそうに毎日過ごしてるよな、正源司。本当に泣いてたのかよ。」
〇〇「本当だよ。間違いない。」
大沢「だってあれ、見てみて、あの顔。人生イージーモードって感じだよなぁ。あんな可愛かったら何も困らないだろ、正直。」
〇〇「どうなんだろうなぁ。」
大沢「一旦、忘れようぜ...このこと。」
〇〇「そう...だな...」
僕達は、正源司周辺の調査をやめた。
あの日、あの雨の日、僕がみた陽子の顔はずっと鮮明に脳裏に焼き付いている。
でも次第に
僕はそのことをあまり考えないようになって、
また今までと変わらない日常が戻り始めている。
正源司陽子の涙の理由が分からないまま、
時間だけが経っていく。
もう気にしなくていいのかも
そう思い始めてきた。
僕は布団に篭りながら窓を見つめた。
まだ昼の時間なのに、外が暗い。
窓を開け空を見上げると、
一面灰色の雲に覆われていた。
明日、台風来るんだっけ。
雨、降らないといいな。
〜第2話〜
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