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方眼紙

 現代の装飾を目的とする刺し子には、伝統模様(またはそれをアレンジした模様)がよく使われます。私が師事した先生は、「初めての模様はまず方眼紙か斜眼紙に描く」を基本とされていたので、私はお稽古でたくさんの模様を紙に描きました。それをコピーして貼り合わせ、晒しの間に挟んで写したり、布の上に乗せて鉄筆でなぞって写したりするのです。コピーする際に拡大縮小すればある程度希望のサイズになります。ある程度ですが。「そうやって、晒しだけでなく色んなものに刺してみてね」とよく言われていました。

 私はこの、方眼紙に描いて規則性を捉える作業が、いまだにとても苦手です。空間認識能力が低いのです。今に始まったことではなくて、子供の頃から図形やグラフの読み取りが苦手でした。
 先生は私とは真逆の方で、お稽古の最中、紙を挟んで向かい合いながら線を引いていると、手がスッと伸びてきて「そこ、一マスずれてる」と指される。「そこは捨て線だからもっと薄く書くといいよ(私のだめっぷりを理解しているので書くなとまでは言わない)」と言われる。上下のある模様でも、重なりの多い模様でも向かい側から迷いなく。同じものに視線を向けていても、見え方が違うんだろうな、拾えている情報量に差があるんだろうな、といつも思っていました。7年近くお世話になりましたが、わたくし、清々しいほどに進歩なし。

 進歩はなかったけれど、いつも自分でも引くくらい時間がかかったけれど、あれは本当に大切な時間だったと思います。お稽古では、こちらからリクエストすることもたまにはありましたが、ほとんどの課題を先生が用意して下さいました。だから自分では選ばない模様も随分描きました。instagramを見て下さっている方はお分かりになると思いますが、私はそもそも「好き」の幅が狭くて、同じ模様ばかり刺しているのです。ずっと一人ならこんなにたくさんの模様と格闘することも、一度描いてみるという作業が自分にとってどんなに大切か身に沁みて感じることもなかったでしょう。

相棒

 余白と模様のサイズを細かく調整したいと思うことが多くなって、今では布に直接方眼線を引いて模様を描くことが多いです。それでも模様の大きさ、針目のボリューム、組み合わせの好み、刺し順を確認するために、過去の下書きを引っ張り出して来たり、新たに紙に描いたりする工程は私にはとても重要です。面倒なんだけれど、これを省略するともっと面倒なことになる。自分の頭の中で描くバランスは信用ならない。とにかく面倒で仕方ないのだけれど、目の前に現れてもらわないと、という心です。諦めて描きます。

毘沙門亀甲と麻の葉

 今は一枚の布に三つの模様を刺していて、これも事前に方眼紙を布と同じくらいの大きさに切り貼りして模様を描きました。麻の葉模様も毘沙門亀甲もベースは六角形ですが規則性は異なるので、私の場合は頭の中だけで掴もうとすると混乱してしまうのです。毘沙門3拍子、麻の葉2拍子、簡単なはずなんですけど・・。昨日から三つ目の模様に取りかかっていて、それも紙で確認しながら進めています。

 紙はA3が良いです。B4では規則性を見るには少し大きさが足りないのです。私のようなタイプの方には、頭の中の整理整頓が出来る方眼紙、お勧めです。



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