退職所得の源泉徴収事務

退職所得の源泉徴収事務についての5つ

①退職所得の源泉徴収義務
②退職所得の範囲
③退職手当に対する税額計算
④退職所得控除額と勤続年数の計算
⑤退職所得控除と税額の計算例

①退職所得の源泉徴収義務
1)退職所得の源泉徴収と納付
・退職金は、他の給料・賞与等と「給与所得」と区分して「退職所得」として源泉徴収を行う。
・退職金の支払時に所得税および復興特別所得税を徴収し、徴収した月の翌月10日までに金融機関を通じて国に納付(小規模事業者はまとめて年2回)
・退職金の支払い時に住民税を徴収し、徴収した月の翌月10日までに金融機関を通じて市区町村に納付(小規模事業者はまとめて年2回)
*住民税で給与の時は市区町村が計算してくれるが、退職金は支払者が住民税を計算し納付する。

②退職所得の範囲
退職所得とは、退職手当、一時恩給その他退職により一時に支給される給与およびこれらの性格を有する給与をいう。
1)退職所得となるもの」、ならないものの判定
2)非課税となる退職手当等
3)退職手当等の収入すべき時期
*通常は退職日、役員は株主総会で金額が決まった日

③退職手当に対する税額計算
1)退職所得の課税標準
一般
(退職手当等の収入金額)ー(退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額

特定役員
(退職手当等の収入金額)ー退職所得控除額=課税退職所得金額
特定役員退職手当等とは、役員等勤続年数が5年以下である人が、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもの(天下り)

2)退職手当等の税額計算
1.「退職所得の受給に関する申告書」が提出されている場合
①所得税および復興特別所得税
(課税退職所得金額)×(所得税額の速算表)=所得税および復興特別所得税
②住民税(市町村民税および都道府県民税)
(課税退職所得金額)×(市町村6%、都道府県4%、合計10%)=住民税

2.「退職所得の受給に関する申告書」が提出されていない場合
①所得税および復興特別所得税
(退職手当等の支払額)×(20.42%)=所得税および復興特別所得税
②住民税(市町村民税および都道府県民税)
(課税退職所得金額)×(市町村6%、都道府県4%、合計10%)=住民税


④退職所得控除額と勤続年数の計算
1)退職所得控除額の計算
・勤続年数が2年以下の場合は退職所得控除額は800,000円
・勤続年数が2年を超え20年以下の場合は退職所得控除額は400,000×勤続年数
・勤続年数が20年を超える場合は退職所得控除額は
8,000,000+(勤続年数ー20年)×700,000円
*勤続年数が長ければ長いほど控除される
*障害者となったことに直接基因して退職した場合は、一般の退職の場合の金額に一律100万円を加算した金額を退職所得控除とする。

⑤退職所得控除と税額の計算例
1)計算例
①勤続年数を求める
②「退職所得控除の表」により退職所得控除額を求める。
③(退職手当等の収入金額−退職所得控除額)×1/2=課税退職所得額
④「課税退職所得額」に「所得税の速算表」を税率を乗じて所得税・復興特別所得税を求める。
⑤「課税退職所得金額」に税率(市町村6%、都道府県4%、合計10%)を乗じて住民税の税額を求める。

2)計算例
その年中の支給にかかる他の退職手当がない旨の「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合。

(事例)一般退職の場合
・退職手当等の金額 5,200,000円
・就職年月日 平成19年(2007年)10月1日
・退職年月日 平成30年(2018年)6月30日

(解答)
①勤続年数を求める
10年9ヶ月→11年(1年未満切上げ)

②「退職所得控除の表」により退職所得控除額を求める。
「退職所得控除の表」により 4,400,000円

③(退職手当等の収入金額−退職所得控除額)×1/2=課税退職所得額
(5,200,000ー4,400,000)×1/2=400,000円

④「課税退職所得額」に「所得税の速算表」を税率を乗じて所得税・復興特別所得税を求める。
400,000×5%×102.1%=20,420円(円未満切り捨て)

⑤「課税退職所得金額」に税率(市町村6%、都道府県4%、合計10%)を乗じて住民税の税額を求める。
ⅰ.市町村税 400,000×6%=24,000円(百円未満切り捨て)
ⅱ.都道府県民税 400,000×4%=16,000円(百円未満切り捨て)

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