柿とみたらし用水 その3(全4回)


善五郎じいさんの穴掘り。
山は砂地が多くて、水はすぐに吸い込まれてしまうから、赤土の所を選んでいかなくちゃ、なんだね。たった一人でやっているんだもん。秋になったって、ちょっぴりの穴にしかなっていなかったんだ。

秋になってのある日のことさ。
「善五郎さん、ここを誰か逃げて行かなかったかい?」
数人の村人が息を切らせて駆け上がってきたんだ。
「どうにか実った柿が盗まれてな。こっちの方に逃げていったもんがある、っちゅうんで来たのさ。役人が年貢(ねんぐ)を取りに来る前に取り返しておかなけりゃ。」
「いやぁ、いやぁ」
その頃、みたらし田んぼでは、年貢を納めることができず、藩の命令で荒れた土地を柿畑に開墾(かいこん)して、柿で年貢を納めるようになっていたんだ。

日が暮れてきたんでね。善五郎じいさんはね、帰り支度(したく)を始めたんだ。すると、向こうの草むらから何やら微かな(かすかな)話し声が聞こえてくる。
「兄ちゃん、やっぱりおっかねぇよ。母ちゃんのためだけど、皆が一生懸命に作った柿だよ。」
「じゃぁ、母ちゃんの薬はどうなるんじゃよ。この柿さえありゃ、薬が買えるんだよ。さぁ、早よう行こう。」
村一番の働き者で親孝行の兄弟が小さな声で話をしていたんだよ。二人の前には大きな袋が置いてあったんだ。善五郎じいさんは、胸が痛くなったのさ。水がなくて田んぼが出来なかったんで、この子たちは柿泥棒をしたんじゃ。おっかさんの薬を買いたくてな。この子らを罪人にするわけにはいかん。そう思ったんだね。

今日はここまで、読んでくれて、ありがとう。

続きはまた明日。お休み、ポン!
善五郎じいさん、すごい人助けをするよ。これは明日のお楽しみ。
お休み、ポン!

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