キンキンはカンカン。(全1回)


今日はね、山口県の萩(はぎ)に伝わる面白い伝説だよ。
ポンと昔の昔。萩のお城のお殿さまが町へ出て行った時のことなんだよ。お魚屋さんの店先に、変わったお魚が売られていたんだよ。まだ見たこともない変わった形のお魚だったから、お殿さまは、お魚屋さんに、その名前を聞いてみたんだ。
「はい、これはキンキンも申す魚にござります。」
お殿さまはね、珍しいお魚だったから、それを買ってきてね、それを干して日干しにするようにと家来に言っておいたんだ。そうして、その魚が綺麗に日干しになった頃、またお殿さまはそのお魚を持って、あのお魚屋さんへと行ってみたんだよ。あの時と同じようにお魚の名前を聞いてみたんだ。
「はい、それはカンカンと申す魚にてござります。」
これを聞いたお殿さまは、カンカンに怒りだしたんだ。
「おい、魚屋。先日この魚をキンキンと言ったではないか。今日はカンカンと言うか。ワシをバカにしおって。手打ちにしてくれるわい。」
可哀想にこのお魚屋さんは縛られてすぐにお城に連れていかれてしまったんだ。
いよいよ打ち首になる時の事だよ。お殿さまの前で家来は刀を構えていたんだ。お魚屋さんは、諦めて静かに座っていたんだよ。
「最後に何か言いたいことはあるか?」
お殿さまはお魚屋さんに、こう聞いてくれたんだ。
「はい、魚屋を継いでいく息子に最後ひとこと伝えたいことがございます。」
そこで早速息子が連れて来られたんだ。お魚屋さんは物静かにね、心静かに息子に言ったんだよ。
「わしはなぁ、あのキンキンの魚の干したもんをカンカンと言ってな、お手打ちになるんじゃ。お前はこれから先、決してイカの干した物をスルメと言うではないぞ。」
するとね、これを聞いておられたお殿さまは、ポンと膝を打たれて、
「ほう、、なるほどそうじゃったか。いやはや、そうだったのか。これはこのワシが悪かった。早とちりをしたわい。済まぬことをしたなぁ」
お魚屋さんはお殿さまの思い込みで危うく殺されてしまうところだったんだね。
干した物で名前が変わっていくものは、いくつかあるよね。イカはスルメになるし、柿は干し柿になるし、大根は切り干しになるもんね。そして、キンキンはカンカンになるんだね。他に何かあるかなぁ? 見つけてみてね。

今日も最後まで読んでくれてありがとう。
お休み、ポン!

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