鶴姫(つるひめ)と常山城(つねやまじょう)落城 その2(全3回)


鶴姫が、なぎなたを抱えるのを見て、春日局(かすがのつぼね)と女房(にょうぼう)たちがびっくりして、鶴姫の鎧(よろい)のそでに取り付いてね、
「戦うことなど、お止めくださいまし。死後修羅の責め苦(しゅらのせめく)は免れませぬ。成仏できませぬよ。今はただご自害をなされませ」
と止めたんだ。修羅とは地獄にいる鬼のことだよ。すると鶴姫はね、カラカラと笑うと、
「そなたは、女のことゆえ敵も殺しはいたすまい。どこへなりとも一足先に落ち延びなされよ。我は観念して、この戦場を西方浄土(さいほうじょうど)とみて、修羅の苦しみも極楽の営み(いとなみ)と思えば、なんで苦しいことがあろう」
といってね、皆を振り切って打って出たんだ。ちょうどその時討ち行ってきた敵が、
「隆徳(たかのり)のお首を頂戴する」
と言いながらかかってきた。鶴姫は、ここぞと敵をきっと睨み返す(にらみかえす)やいなや、
「狼藉(ろうぜき)なり。汝(なんじ)     らにや」
と声高く言うと、すぐさま薙刀(なぎなた)を水車よろしく、クルクルと廻し始めると、5人切り捨てて、7人に傷を負わせた。これに切りかかろうとしていた敵が恐れをなして、向こうへと散って逃げて行く。

この鶴姫の勇ましさを見て、春日局たちも
「散るべき花ならば同じ嵐に誘われて 死で三途の道案内をしようではござらぬか」
というや、髪を解き乱して鉢巻をすると、長柄の薙刀を手にして、34人の女房たちが、我先にと駆け出したよ。家僕(かぼく)たち83人も遅れてはならぬと走り出ていった。

鶴姫は腰に差した銀の采配(さいはい)を取り出すや、真っ先に進み出て、
「駆け破れ、ものども!」

今日はここまで。読んでくれて、ありがとう。
勇ましい鶴姫だけど、どうなるのだろうか。
ポン!

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