憎しみの行方 その1(全2回)



今日はね、賢いお殿さまのお話しだよ。
ポンと昔、ある日のこと。お屋敷の庭先で処刑が行われることになったんだ。処刑というのはね、悪いことをしたんでその罰として殺されてしまうことをいうんだよ。

お屋敷の庭には木や花が植えられていてね。その間には一筋の飛び石が向こうへと続いているんだ。少し広くなったところに石が詰まった俵と、水の入った桶が置かれていたよ。石の入った俵は処刑の時に人が逃げ出さないように囲っておくものだったんだ。俵とはね、本当はお米を入れておく大きな入れ物のことをいうよ。

お殿さまがゆっくりと廊下を歩いてやってきたんだよ。俵や水がちゃんと準備されていることを見ると、黙って頷かれた(うなずかれた)んだ。そこへ悪いことをした男の罪人が引き立てられてきたんだよ。両手は背中の後ろで縛れて(しばられて)いたよ。罪人はね、ぐるり囲われた俵の中に入れられたんだ。こうして準備が整うと、罪人の男の人が叫び出したんだ。
「お侍(さむらい)さま、あれはわざとしたんじゃないんです。ワシは、うっかりもんで、ちょいとやっちまったんです。悪い気があってやったんじゃないんです。だのに、殺されるんじゃぁ、恨み(うらみ)ますぜ。お侍さんもここにいる皆全部を恨んで恨んで憎んで(にくんで)やって化けて出てやりますぜ。復讐(ふくしゅう)に来ますぜ」
どんなものでも、恨みを持って殺されると、その相手に復讐するために化けて出てくると言われているからね。そういうことは誰でも知っていることだし、そして、その復讐を怖がっていることでもあるんだ。
「よかろう。死んだ後、思う存分復讐するがよい。だが、死んだ後お前は本当に化けて出ることが出来るものか」
「出来やすとも。必ず来ますぞ」
「そうか、ではお前の首を刎ねた(はねた)後、その怨念(おんねん)の証拠を見せてみよ。よいな、どれだけの恨みがあるのか、そこの目の前にある飛び石に食いついてみせよ。お前の怨念がどれほどのものなのかをな」

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
続きは明日だよ。ポン!

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