山芋掘りは木や竹に抜かせろ(全1回)


今日はね、鹿児島県に伝わるお話しからだよ。
ポンと昔。鹿児島に伊助(いすけ)さんという人がいたよ。伊助さんは山芋掘りが大得意の名人さ。山の中の土のなかにある自然薯(じねんじょ)という山芋を掘り出すのさ。そのおいもはグローブを潰したようなヘンテコな形をしているんだ。昔からこのお芋を食べるととても元気になると言われているんだよ。すりおろしたこの自然薯にお醤油をちょっと入れてご飯にドロンと乗せて食べると、最高に美味しいのさ。栄養たっぷりなのさ。山の中で自然薯を見つけて掘り出すのは大変なんだ。伊助さんは皆から自然薯の掘り方を聞かれる。
「山芋の自然薯を掘る時はな、柄の長いきんつっ、なんか使って苦労して掘ることはないさ。山芋の弦(つる)を見つけたら、近くにある丈夫な木や竹を地面近くまでグイっと曲げてさ、それに山芋の弦をぎゅうっと縛り付けておくんだ。こうしておけば曲げられた木とか竹がバネのように元に戻ろうとするだろう。その力を借りるってわけさ。それから、盃で一杯の種油(たねあぶら)を弦の根元に垂らしてやるんだ。こうしてやると、油が少しづつ山芋に沿って泥のなかにしみこんでいくだろう。こうして油が根っこの先まで届くとな、山芋が滑りやくすなってくるから、木や竹に引っ張られてするりと抜けてくるって訳さ。夕方に仕掛けて次の朝に行けば、ほれ木や竹にでっかい山芋がぶら下がっているってわけよ。」
伊助さんは摺り下ろした自然薯に生卵ともみ海苔を乗せて、それを丁寧に混ぜながら話をしてくれたよ。


今日も読んでくれてありがとう。じゃぁ、お休み、ポン。

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