憎しみの行方 その2(全2回)


怨念(おんねん)で飛び石に食いつけるかと問われた罪人は、
「あ~ぁ。食いついて見せまさぁ。食いついてやるぞ」
ギラリと刀が光ると、罪人の首は切って落とされたんだ。血しぶきに跳ね上げられた罪人の頭は飛び上がってから、ボトリと地面に落ちるとごろりと転がって、飛び石の角にがぶりと食いついたんだ。周りの人たちは声も出ずに、かたずを飲んで見ていたよ。頭はすぐに口を開けたまま、ゴロリと地面に転がったんだ。

家来は刀に水を丁寧にかけると返しできれいに拭き清めたんだ。皆恐ろしくて一言も喋らなかったって。

この日からというもの、家来や召使たちは、あの罪人の幽霊が出はしまいかと毎日ビクビクしていたんだって。風でコトリと扉が揺れたり、床の軋み(きしみ)を幽霊だと言ったり、飛び石に人の顔が映ったとこか、誰もいないのに人の姿が見えたとか、困ったことになったんだ。そこで皆で相談して、あの罪人を成仏(じょうぶつ)してもらえるように、お殿さまに頼むことにしたんだよ。
「そうか、しかしそれは無用というものじゃ。確かに恨み死にというものは、恐ろしいものよ。怨念の恐ろしさとはな。あの者の死に際の考えだけなのじゃ。あの時、わしは恨んでいる証拠を見せよといってあの者の復讐の気持ちをそらしてやったんじゃ。あの者は飛び石に食いつこうとの一念で死におった。見事に食いついて見せてくいれたからな。その一念を果たしたから、それでおしまいじゃ。その方たち心配には及ばぬぞ」
お殿さまの説明を聞いた後は、幽霊は一度も出なかったんだって。

訳の分からない時って、なんだか怖くなっちゃうものだよね。

今日も読んでくれてありがとう。
少し怖かったけど、これでおしまい。

じゃぁお休み、ポン!

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