行基菩薩(ぎょうきぼさつ)と東山(ひがしやま)温泉 その2(全2回)


ポンと昔々。天平(てんぴょう)年間といいましたら、729年から748年のことです。行基菩薩(ぎょうきぼさつ)が会津の国にやってきました。ふと、空を見上げますと雲が東の山の方へとたなびいていきます。なにやら不思議だと山の中の草を分け入り岩を登って雲の流れていったほうへと山の奥へ奥へと進んでいきます。すると、黒川のほとりに着きました。今の湯川(ゆがわ)のことです。行基菩薩は黒川に沿ってさらに奥へと登っていきました。霧は濃くなり谷も深くなっていきます。しばらく行きますと、目の前にゴウゴウと流れ落ちる滝がありました。そこで行基菩薩はその滝の傍ら(かたわら)で念仏を唱えておりますと、どこから来たのか、一羽の鳥がすぐ傍の木の上でさかんに囀って(さえずって)います。行基菩薩はその鳥に目をやりますと、びっくりされました。その鳥には足が3本あるではありませんか。その鳥は行基菩薩を誘うように振り向いては振り向いては木から木へと飛び移って行くのです。行基菩薩はその鳥の後についていくことにしました。その鳥は黒川をさらに奥へ奥へと飛んでいきます。しばらく行きますと、もうもうと白い湯気の立ち込めている所にでました。
「な、なんと。これは湯壺(ゆつぼ)ではないか。この湯気が霧を深くしていたのじゃな。」
行基菩薩は傍らにあった岩に腰を掛けて、しばらく休んでおりますと、今度は山の峰の方からカラスの鳴く声がしました。おかしな鳴き方です。行基菩薩は空を見上げました。そこには何と、軍荼利(ぐんだり)、妙見(みょうけん)、聖観音(ひじりかんのん)の三尊(さんぞん)がお姿をお見せになっておられてのです。
「これは、この場所が霊場の証(あかし)に違いない」
行基菩薩はお喜びになり、叫びました。行基菩薩はこの場所に三社権現(さんじゃごんげん)をお造りになりました。そして、山の峰の頂きには、東光寺(とうこうじ)を開いたのです。そうしてこの山を羽黒山(はぐろさん)と名付けられました。
これが有名な東山温泉の始まりのお話しです。

今日も読んでくれてありがとう。
お休み、ポン!

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