小山城(おやまじょう)の落城 その1(全2回)


ポンと昔。戦国時代のことだよ。1590年の7月7日のこと。栃木県にある小山城のお殿さまの、小山政種(おやままさたね)は霧の深い朝もやの中、寄せて来る大波のような豊臣軍の鬨の声(ときのこえ)を聞いていたんだ。朝霧を透かして見れば、お城の周りにはおびただしい旗指物(はたさしもの)や弓が見える。政種の家来たちも同じように深い朝霧の中を見ていた。豊臣秀吉は30万の大軍を率いて難攻不落と信じられていた小田原の北条氏直(ほうじょううじなお)を攻め滅ぼしてしまった。小山政種は北条氏直の兄弟の姫をお嫁さんとして、この小山城に迎えていたから、だから、北条氏の味方だった。政種は秀吉にお城を明け渡して降参すると言ったのだけれど、それは許してもらえなかったんだ。秀吉は北条氏の味方の者は誰一人許さなかった。
「このように多勢に囲まれてしまっては勝つことはありえない。さぁ、おのおの落ちて行くのじゃ。このお城を捨てて逃げて行くのじゃ。」
政種はお城に火をつけた。豊臣軍の者たちが槍を手にして小山城の中へと、どっと流れ込んできた。ぼうぼうと燃え盛る火の中、あちこちで悲鳴や叫び声が渦巻いている。政種も敵兵の間をくぐり抜けながら、お城から逃げていったんだ。政種の子供の姫も、その後を追って逃げて行こうとしていた。けれど、皆とはぐれてしまった。泣き叫び声と炎の中、煙にむせながら、姫も付き人を見つけていたのだけれど、見つからない。落城、落城、とあちこちで叫んでいる。姫はもうこれまでと諦めて覚悟を決めた。ちょうど目の前に大井戸があった。

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
また明日!ポン!

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