平戸(ひらど)の猿と山犬と狼(おおかみ)その1 (全2回)


今日はね、江戸時代の平戸藩主の松浦静山(まつらせいざん)が書いた甲子夜話(かっしやわ)という中に書かれてある、猿と山犬と狼のお話しだよ。

肥前国(ひぜんこく)平戸(ひらど)は、長崎県の北にあってね。海に恵まれた土地だから、大昔から漁業で盛んな村だったよ。

ポンと昔。ある時、肥前の奉行(ぶぎょう)ある役人が、神埼(かんざき)という町の海岸沿いをパトロールしていた時のことなんだよ。一匹の猿がね、海辺の岩場に一人ぼっちで立っていたんだ。そして、片足を高く振り上げながら「こちらへ来て」というように手招きをしているんだって。    役人は何か訳がありそうだなって思って近づいてみたんだ。するとね、猿の片方の足が岩の間に挟まっている。岩場のアワビを取ってたべようとして、アワビの貝に手を挟まれてしまったんだね。可愛そうに思った役人は、早速両手を水の中に入れてアワビの貝をこじ開けてやったんだって。岩の間から抜け出た猿はね、役人の足元に両手をついて、頭を低く下げたというんだよ。お礼を言ったんだね。この話を聞いた村人たちは、人のようだねってビックリしたって。

平戸領の東の境には、西ノ岳(にしのたけ)という深山(しんざん)があって、その麓(ふもと)に世知原(せちばる)という村があるんだよ。その世知原に一匹の山犬が姿をあらわしたんだって、普通なら山犬は人間が嫌いだから、姿を見せることなんてないんだよ。その山犬はね、口をあんぐりと開けて舌をたらしているし、頭も項垂れ(うなだれ)ていて、どうも調子が悪そうなんだって。村人がおそるおそる山犬に近寄って、その口の中を覗いて(のぞいて)みたんだよ。喉の奥に白い骨がひっかかっているのが見えたんだ。何か獲物を食べた時に、その骨が引っかかったんだね。

今日はここまで。
怖い怖い山犬。村人はどうするんだろうね。続きはまた明日。
お休み、ポン!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?