大人のお仕置き その4(全4回)


そうさ、龍興(たつおき)は、朝から姫をお相手にお酒を飲んでいたのさ。
「舅(しゅうと)の安藤伊賀守(あんどういがのかみ)も同じお心の様子。ご油断はなりませぬ。」
家来の新八郎(しんぱちろう)が言うのを聞いて、龍興は一気に酔いが醒めて震えあがったよ。
「殿、ここはお命が大事。城を出て落ちのびることといたしましょうぞ。」
家来の備中(びっちゅう)はね、龍興のお殿さまを連れて裸足のまま本丸から外へと逃げて行ったんだって。
「お殿さまのお出ましじゃぁ。ものども、続けぃ」
ってお城の外に出るまで大声で叫び続けていたんだってよ。訳も分からず、恐ろしさに震えていた城兵(じょうへい)たちは、これ幸いとその後に続いて行ってしまったんだ。でもね、そんな者たちの中、長井新八郎(しんぱちろう)、新五郎(しんごろう)兄弟だけは、わずかに残った兵を指揮して果敢に竹中勢に立ち向かっていったんだよ。けれど、鎧を着けている竹中善左衛門(たけなかぜんざえもん)他のするどい刀に切られて、皆倒されてしまったんだよ。

半兵衛(はんべえ)の一族の竹中善左衛門はね、鐘郭(かねくるわ)に駆け上ると、作戦成功の合図の勝利の鐘を力強くついたのさ。お城の外では待ち構えていた安藤伊賀守の軍勢2000人が喜びの声を上げて稲葉山城内へと駆け込んできたんだよ。

難攻不落(なんこうふらく)と言われて稲葉山城をこうして半年で落城させてしまった半兵衛の優れた軍師としての作戦は広く日本中へと伝えられていったんだよ。

半兵衛はこの時から半年後、8月に、逃げていた龍興(たつおき)のお殿さまにこのお城をちゃんと返したんだ。それならばといって、お礼のお金を渡したいと言われたのだけれど、それすらも受け取らずにお城を開け渡したんだって。龍興におしおきが出来たんだろうってことだね。

歴史を研究している先生方のお話しでは、過去に半兵衛のように、取ったお城をそのまま元のお殿さまへ返した人など、一人もいないんだそうだよ。半兵衛は欲のない人だったんだね。かっこいいよね。ボクはすっかり半兵衛のファンになっちゃったよ。

最後まで読んでくれて、ありがとう。
お休み、ポン!

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