大人のお仕置き その3(全4回)


稲葉城には人質として、半兵衛(はんべえ)の弟の久作(きゅうさく)がいたんだ。まずはお手紙で久作に仮病(けびょう)を使って病気のふりをするようにと言ったのさ。久作もねできる限りのお芝居で病気のふりをしていたんだよ。さぁ、久作が病気だとの連絡をもらった半兵衛は、にこりとして次の準備に移っていったよ。それは、看病するためといって、お見舞いの品を入れた長持(ながもち)を持ち込ませて行ったんだよ。長持とは、大きな箱のような物だったんだね。長持の底には戦いに使う鎧(よろい)や兜(かぶと)や刀なんかの道具を隠しておいたんだ。それをいくつも運び入れておいた。これで準備が整ったよ。

永禄7年、1564年の2月6日の朝のこと、半兵衛は、わずか17人の供を連れて、稲葉山(いなばやま)城に向かったんだ。城内に入ると、お見舞いに来たと言ってね、久作の居間に集まると、皆手早く鎧と兜を身に着けたんだ。いよいよその時が来た。一人が鐘郭(かねくるわ)に駆け上がって、鐘をガーンガーンと鳴らして「火事だ~、火事だ~」と叫んだ。火事だと聞いて、城内の人たちは、あちらこちらへと右往左往(うおうさおう)しだした。半兵衛たちは、龍興(たつおき)の家来たちが詰めている広間に一気に流れ込んでいったよ。斉藤飛騨守(さいとうひだのかみ)は、たちまち切り捨てられてしまった。何事が起ったかと、うろたえつつも、家来や小姓(こしょう)たちを半兵衛たちは次々と切り伏せていく。鎧(よろい)をつけた半兵衛たち武者の数は少なかったけれど、平服の侍(さむらい)たちは取り囲んで切りかかっていっても、かすり傷ひとつも負わせることができない。
「何、竹中のうつけめ。狂いおったか。このワシが直々に成敗(せいばい)してくれるわい。」
龍興はよろよろと立ち上がったよ。

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
いよいよ明日は最終回。お楽しみに、ポン!

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