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【ブルアカTD】ブルーアーカイブでタワーディフェンスをする楽しさについて

 ブルーアーカイブ3.5周年はとんでもないことになっています。私は小鳥遊ホシノに完全に脳を焼かれていて延々小鳥遊ホシノ……と呟く哀れな存在と成り果てているのですが、今日はその話ではなく、ミニゲームの話をしましょう。

 イベント「Sheside Outside」における「Hi-Lo Ha-Lo」の話です。面白かった。とても面白かったです。何がどう面白かったのかという話を、タワーディフェンスというジャンルとブルーアーカイブというジャンルを絡めて話します。

タワーディフェンス

 「タワーディフェンスゲーム」に馴染みある方はどの程度いらっしゃるでしょう。私には多くを把握できません。

 「タワーディフェンスゲーム」は文字の名の通り「塔を守るゲーム」です。次々湧いて出る敵が塔(拠点)に攻めてきて、一定の数の敵を拠点に通してしまうと失敗となります。

 そのため、プレイヤーは限られたリソースをやりくりしてユニットを配置する・ステージ上でユニットを育成する・ユニットにスキルを発動させる……等々リアルタイムで様々な戦略を採り、複雑で困難な状況を解決することになります。

 タワーディフェンスというジャンルを大雑把にわけるときの方法のひとつが(唯一ではありません)、「進行する敵を直接ブロックし、進行自体を止める(敵を抱える)」ユニットが存在するかどうかです。

 たとえばNIKKEのミニゲーム「LAST KINGDOM」はユニットで敵を抱えるのではなく、進行通路の脇にユニットを配置し、通り過ぎ、拠点へ到達される前に殲滅するタイプのタワーディフェンスでした。敵の進路自体にユニットを置くことはできず、その進路の脇にユニットを置いて攻撃し、通過して拠点に到達される前に敵のHPを0にするのです。正確かどうかはともかく、私はこちらに古のタワーディフェンスを感じており、Flash時代などによく触っていた記憶があります。

 もう一方は今回のブルーアーカイブの「Hi-Lo Ha-Lo」と同じく「敵の侵攻通路にもユニットを置くことができ、直接敵をブロックする(抱える)」ことのできるゲームです。

 原点かどうかはともかく、後世に多大なる影響を与えた「千年戦争アイギス」や、Yostarに親しんでいるなら「アークナイツ」を忘れることはできないでしょう。先に挙げた敵の侵攻を止められないタイプのユニットは「遠距離」や「高台」などと呼ばれ、ブロックを行えるユニットは「近距離」や「地上」などと呼ばれます。

 今回はこちらの、大きくアイギスの流れを汲む類の(アイギスがこの潮流の真の原点かどうかはともかく)タワーディフェンスとして話をしましょう。

 開発はともかくパブリッシャはYoの仲間として「アークナイツ」を積極的に絡めたかったのですが、私が最前線にいないため「千年戦争アイギス」を通例に語っていくことになると思います。

 以降で言う「タワーディフェンス」とはそのタイプのタワーディフェンスと思っていただけると嬉しいです。

タワーディフェンスの王道

 タワーディフェンスの攻略には様々なパターンがあり、型にはまらないステージは枚挙に暇がありません。しかし、「王道中の王道」と呼ぶことのできる基本の攻略法が存在します。

 ①コスト稼ぎ役のユニットを置く
 ②遠距離火力・回復を置く
 ③高い防御力を持つ壁役のユニットを最前線に置く
 ④以上を拠点前などに密集さる
 ⑤これをもって、壁で抱えて回復しながら火力で焼く

 以上が敵ユニットを抱えることのできるタワーディフェンスにおける王道パターンです。敵には概ね基本的な攻撃優先度が設定されており、おおよそ最後に配置したユニットを狙います(配置順に関わらず遠距離優先などの性質を持った小賢しい敵ユニットも存在します)。そのため、いったん壁で抱えてから遠距離を置くのではなく、遠距離を置いてから壁を最後に置くことが王道になり、耐久に不安を感じつつなんとか遠距離の火力を厚くして敵の進行を凌ぎながら、壁を置くコストを捻出する……というのが序盤~中盤の王道になります。

 「千年戦争アイギス」で具体例を見てみましょう。

懐かしの田園よ……ここでは美味しいヘクターが採れる。銀で煮込んで食べるのだ

 画面のとおり、まず最初に敵を阻むように近距離のコストが低いユニットを配置します。アークナイツで言う「先鋒」です。

 このユニットは配置から一定時間を経過すると任意でスキルを使用でき、上掲のとおり出撃コストを15回復します。画面左下に16と書かれているコストは時間経過とともに増えていくわけですが、これをいきなり15加算するわけです。各ユニットには役割に応じて相応の出撃コストが設定されているため、コスト稼ぎは基本的に重要な仕事です。

 コスト役だけでは敵を撃ち漏らしてしまうかもしれません。近接キャラクターは基本的に一定数の敵しか抱えることができません。1人だけだったり、2人だったり、敵を抱えることが役割のキャラクターでも3人だったりです(ふざけた例外がしばしばいます)。なので、敵に殺到されると素通りされるおそれがあります。よって、コスト稼ぎ役を援護するように遠距離の単体攻撃アタッカーを起きます。上掲の画面左下のユニット一覧の左から2番目、コスト12のユニットが彼女です。同じ遠距離攻撃でも範囲攻撃を行う右端のユニットはコスト34でありまだまだ出撃できず、コスト稼ぎを待っている間に敵が殺到すると処理できません。まずは出しやすい子から、というわけです。

 そうこうしているうちにコスト回復役のスキル準備が完了しました。現在の出撃コストは25で、スキルで15回復します。つまり合計39になり、範囲火力を投入できるようになるわけです。

スクショにもたつき、47などというとんでもない値になっていますが

 スクショにもたついたこともあり、コストに余裕があるのでさらにヒーラーを置きます。いくら火力があっても、こちらがちくちく殴られて倒れてしまってはよくありません。

 こうして、攻撃の準備は整いました。基本的に範囲火力がどんがどんがと敵を焼き払ってくれます。

 しかし、通常タワーディフェンスでは最後に置いたキャラクターが敵の攻撃対象になってしまいます。今のままだと最後に置いたのはヒーラーであり、耐久力はありません。他のキャラクターも皆防御に特化しているわけではありません。

 そこで、最後に防御役を最前線に置きます。

 これで敵を受ける準備が完了しました。範囲火力が焼き払い、迫ってきた敵を盾が受け、その盾をヒーラーが回復するタワーディフェンスの基本形です。このステージでは右奥の三方からしか敵が湧きませんが、ステージによっては中央上下からも敵が湧く可能性はあります。同じように遠距離火力とヒーラーを置いてタンクで蓋をすればそれも処理できるわけです。

 このような戦い方について、キルゾーン(KZ)を作るなどと呼びます。射程範囲に入った敵には雨霰と猛攻が加えられ、攻撃優先度の点から敵は弓矢などを装備していたとしても遠距離ユニットに攻撃することはできず、やむを得ず高耐久の近距離ユニットを攻撃しながら進行します。当然敵の攻撃を受ける高耐久近距離ユニットには即時ヒールがかけられます。

 柔らかい敵ユニットはこちらに触れることもできずに火力に焼かれてHPが0になりますし、固い敵ユニットがなんとか近距離ユニットに接敵できたとしても、接敵により進行はブロックされます。そして、ブロックしているのはHPや防御力の高い高耐久ユニットであり、遠距離にはヒーラーがいるため削りきることは困難であり、依然として雨霰と敵へ攻撃が降り注ぎます。タワーディフェンスはこちらの拠点に敵が攻め込んでくる防衛戦ですが、だからこそ敵は待ち構えるこちらに乗り込んでくる他ありません。こちらの準備が整っていれば、敵が乗り込んだ先には超えられない壁と容赦ない火力が待っています。この高火力高耐久の領域がキルゾーンです。

 これを基本として様々な「崩し」を行われるのがタワーディフェンスなのですが(たとえば盾を対象に攻撃を行うものの、その攻撃とは盾を中心にして遠距離ユニットを巻き込む高火力範囲攻撃であり、攻撃優先度に関わらず周囲一帯が焼き尽くされる。KZのような密集地帯はかえって危険、というように)、基本はこれです。

 「基本」では対処できない敵の攻勢にてんやわんやしているうちに自陣が崩壊し、一度持ち帰って練った戦略もなんかわからないけど想定通り働かなくてオリチャー発動なんとかなれするのがタワーディフェンスあるあるであり、この「基本」で処理できるステージはごく簡単なものに限るのですが、基本は大事です。

 こういった基本を前提に、「Hi-Lo Ha-Lo」を見ていきましょう。

タワーディフェンスでブルーアーカイブをやる

 まず「Hi-Lo Ha-Lo」にはユニット(生徒)について「配置コスト」の概念が存在しません。タワーディフェンスの基本はコスト稼ぎ役の軽いユニットを置いて、徐々にコストを稼ぎながら火力やヒーラー、タンクを呼んでKZを形成することです。

 たとえばタワーディフェンスでシャーレを防衛する際、まず誰よりも出動が早いとされる生活安全局のフブキやキリノを設置して、彼女達が時間を稼いでいるうちに、どこからともなく来てくれるセリナを回復役として設置し、近所の子ウサギタウンにいるだろうRABBIT小隊に来て貰い火力を盤石として迎撃態勢を整えたところで、電話で叩き起こして呼び出しアビドスからダッシュで来てくれた小鳥遊ホシノを最前線に最後にどかんと置くような類が常道と言えるでしょう。

 しかし「Hi-Lo Ha-Lo」は違います。開始時点でユニットの配置は全て終了しており、全員準備万端です。1ステージ中におけるコストを払った成長要素(たとえば「御城プロジェクト:RE」の巨大化)などもなく、

画面中央上の気「28」のうちユニットの巨大化「15」を選択し、ステージ中限りの強化を行えます。

 ステージ開始前から生徒の迎撃準備は完了しています。臨戦状態の小鳥遊ホシノやらでかシロコやらが明らかに敵を皆殺しにしそうな位置に最初から0コストで配置枠に全てついています。理不尽といえるでしょう。

 さらに理不尽なのが「スペシャル」の存在です。タワーディフェンスにおける遠距離のヒーラーや火力は、敵を抱えずに回復や攻撃を行える一方で耐久力に難があることが多いです。そのため、配置順が上手くいかず盾役より後に置いてしまうと敵の弓兵などに呆気なく射殺されてしまったり、順番的に上手く配置してヘイトを逸らしたとしても範囲火力を持つ敵が盾中心の範囲攻撃でKZの範囲内にいるヒーラーや火力を消し飛ばしてしまったりします。遠距離のユニットにはどうしてもそのようなデメリットがあります。

 しかし「スペシャル」は違います。トリニティ総合学園のティーパーティーホスト、桐藤ナギサが擁するL118牽引式榴弾砲部隊が「MAP」に出現することなどあり得ません。なぜなら彼女たちはそういった領域の外に部隊を構え、砲撃するからです。これは対策委員会編などでのカイザーPMCへの攻撃でも同じです。「トリニティで紅茶を飲んでいるナギサを戦場から攻撃対象にとることも、攻撃範囲に巻き込むこともできない、敵は何もできない」というMAP外からの理不尽を強いるユニットが「スペシャル」です。

 他のTDにも「スペシャル」のような存在は確かにいます。たとえば「モンスター娘TD」の獣神はそれです。

 画面左上の獣神枠を選ぶと、上の画像のように範囲を指定して攻撃できます。しかし、その火力は大したものではありません。雑魚を一掃できるかどうかも微妙に信頼できません。しかも、画面左下に「あと2回」と書かれているとおり使用回数制限があります。

 その上、使用すると上掲画像左上のとおり40カウントのクールタイムに入ります。ブルーアーカイブの「スペシャル」の暴れようと制限のなさ、スキル回しにもよりますがクールタイムの短さと比して一般的に「スペシャル」のような動きはTDにおいて「切り札」であり重いのです。「モンスター娘TD」は自ら「かんたんTD」を掲げており(最新メインストーリーとか本当にかんたんかな? かんたんかも……)、簡単なタワーディフェンスでもこのレベルの制約がかかっています。

 こういったTD用として作られていないブルーアーカイブのユニット・システム上の仕様をタワーディフェンスにそのままぶつけるのが「Hi-Lo Ha-Lo」です。

 通常のミニゲームではブルーアーカイブの戦闘時と同じ挙動をキャラは採りません。音ゲーでイオリがEXを撃ったり、縦シューでユズがEXを撃ったりはしないのです。しかし、「Hi-Lo Ha-Lo」ではタワーディフェンスの位置につかせた生徒たちが好き放題に暴れます。

 一例を見てみましょう。チャレンジ4です。

 編成の時点で既におかしいです。ゲーム開始前から右上にKZが完成しています。臨戦ホシノが抱えてメイドモモイとドレスヒナと水着ハナコが構えていたらどうしようもありません。右下もでかシロコと水着ハナコがいれば抱えるまでもなくおわりでしょう。つまり画面右はほぼ注意を払うことなくこの時点で敵側が詰んでいます。チートだチート! ノーゲームだ! わかったかッ!

 ちなみにチャレ4のMAP制作者はユニットを一般的なタワーディフェンスで考えるなら、鬼のようなMAPの作りをしています。

 確かに右側は何の意識もせず潰せるでしょう。ユニットの配置枠が多く、戦力過剰と言えます。そう、過剰なのです。

 敵陣前にこれだけ前のめりで詰めるようなタワーディフェンスの攻略は(特にシステム上配置枠から別の配置枠への「移動」が通常できないゲームについて)タワーオフェンスとさえ呼ばれます。

 本来拠点へ敵が攻めてくるゲームなのに、こちらが敵拠点を詰めているわけですね。これを自発的に行うなら一つの戦術なのですが、チャレ4はこれを強制します。

 そもそも拠点前には近距離を1枠しか置けません。それだけならまだよいです。敵陣右上はKZが完全に形成されていますし、右下も十分処理できるでしょう。右の敵が拠点に流れてくるようなことはありません。右を警戒するだけなら、「枠があってもそもそも拠点前に誰も配置しない」という戦略も可能です。完全なタワーオフェンスを行う際、よくそうなります。

 しかしこのMAPでは、右側の配置枠の子たちでは対処不可能に見える、左端、つまりこちらの拠点前のMAP上下から敵が攻め込んできます。せめてあとひとつでも枠があれば色々と違うでしょうが、拠点前にはただ一人孤独に戦ってもらうほかありません。

 「配置枠にはシステム上の限界がある」

 素晴らしい攻略法です。こちらがブルーアーカイブとして事前に編成画面を使ったとしても、そもそもMAP上拠点前に一人しか編成できなければどうしようもありません。

 しかし、こちらにも手があります。ブルーアーカイブにおけるスペシャルは配置枠の制限に縛られることなく、範囲内の敵味方に影響を与えます。

 ですが。

 「チートにも限界がある」

 ご丁寧にも、今回配布される単体ヒーラーである水着の姫では拠点前の団長に回復が届きません。悪意すら感じさせるほどです。

 しかし、私たちがやっているのは完全にブルーアーカイブです。

 射程範囲に団長がいなくても、「射程範囲の限界」を指定した「効果範囲の円内」に団長がいれば回復が届きます。

 通常タワーディフェンスにおける範囲ヒーラーというのは私が戦っているこのMAPでいうと水着ハナコの位置などに置かれ、水着ハナコを中心として指定人数を回復するものなのですが、これはブルーアーカイブなので。

 匿名の行人は何をしている!

 同じ理由でナギちゃんのL118牽引式榴弾砲部隊も、射程範囲に限界がありますがその限界を指定して、そこに効果範囲を据えることで抱えた敵をまるごと吹き飛ばすことができます。もちろんナギちゃんはトリニティで茶をしばいているのでアウトロービーチにいる子たちがナギちゃんのHPを削り撤退させることは絶対にできません。そんな存在がいるなら先に言えよッ!

 なお佐天さんなどに至ってはそもそも射程範囲内です。

 さらに、右上の敵拠点前でKZを形成しているはずのドレスヒナちゃんが普通に左奥のこちらの拠点前の敵をEX射程範囲内に捉えています。

 これは「ブルーアーカイブ」なので。

 もうひとつ、「タワーディフェンスとしてふざけんな」というMAP構成と「ブルーアーカイブ」による対処を挙げましょう。チャレンジ3です。これが一番ふざけています頭おかしいです

 チャレンジ3でも右側にはしっかりKZが形成されています。団長と臨戦おじさんがいて敵を逃すはずがありません。右側を処理するだけならドレスヒナの箇所と水着ハナコの箇所はどうでもいいです。雑に処刑できます。

 問題は左上です。ここからものすごい速度で敵が突っ込んできます

 タワーディフェンスにおける古典では「」などと呼ばれる現象です。なぜ「犬」と呼ぶかというと、文字通り犬が突っ込んでくるからです

 百聞は一見にしかずです。実例を見てみましょう。

 以下のステージでは初期コストが10しかなく、アークナイツで言うところの「術師」、遠距離配置の魔法攻撃ユニットしか置けません。

魔法大戦です。古の王子、吐いていいよ

 とてもコストが足りないので範囲火力を置くことはできず、とりあえず立ち上がりで単体対象の術師を配置していくことになります。

 何やら犬が駆け回っていますが、とにかくコストが溜まり次第術師を置くしかありません。それしかできません。

 無常にもその疾駆は止められず、高速で移動する「犬」が開幕から拠点にゴールしていきます。これが「犬」です。「犬」のゴールインはタワーディフェンスをやったことがあるなら、誰もが一度は経験するものです。そして「犬」への憎悪を燃やします。犬は可愛いですが「犬」は許しませんよ私は。

 今回で言うところのチャレンジ3です。もう一度画面を見てみましょう。

 右奥は問題ありません。抱えて潰します。KZです。問題は左。左上からの敵を迎え撃つ枠として遠距離に火力が二人います。しかし「抱えてくれる近接」がいません。

 そこに「ものすごい速度で」スイーパーが突っ込んできます。ものすごい速度な上にわりとHPがあります。「犬」です。こいつが「犬」。こいつに憎悪を抱いたなら、あなたはタワーディフェンスをやったことがあると既に胸を張ってよいでしょう。

 しかし……これは「ブルーアーカイブ」なのです。

 「ブルーアーカイブ」であるならば、ウタハ先輩の「雷ちゃん」はどこにでも配置できるのであり、敵を抱えることだってでき、EXを発動すれば無制限に再配置できます。それが「ブルーアーカイブ」の仕様なので。配置枠とか知りませんが、これで敵を抱えて遠距離で焼くKZができました

 あんなもの、あんなもの許されるものか!

 そんなのナシだろ……配置枠無視召喚抱えユニットなんて……TDでこれは、ズルだろう……? はあ……??

 これが本当にタワーディフェンスなら完全にやってます。配置枠とはタワーディフェンスを行う上での最低限の約束事です。

「遠距離と近距離の" この場所だけ "にユニットを配置できる」

 その約束で行われるのが、特に敵のユニット進行を近接キャラで抱えることのできるタイプのタワーディフェンスです。

 このタイプのタワーディフェンスにも全マップ対象攻撃や、プレイヤーによる範囲指定攻撃は存在しますが(さきほどモンスター娘TDの例を見たばかりです)、さすがに配置枠を無視して召喚物として敵の進行経路上に不動としてセットでき、配置枠における出撃上限から1枠を食うこともなく(配置枠に配置されるユニットではありませんからね。なんだそれは)、複数の敵をブロックでき、攻撃を行い、回復の対象になり、たいしたコストも払わず回数制限なしで再召喚できる「雷ちゃん」は完全にやっています。

 配置枠から他の配置枠へ「移動」でき、すれ違いざまに敵を攻撃できるゲームもありますが、配置枠と配置枠の間に「どかん」と「居座る」のは話が違います。そこは配置枠ではありません。

 驚異的な技術力、ミレニアムの猛獣。その看板に偽りなしです。

 なお、例によってこの雷ちゃんによって形成されたKZはドレスヒナちゃんの射程圏内です。抱えたら好き放題撃ってよいです。

 ドヒナちゃんでなくとも、光の勇者アリスちゃんなどもふざけたことをしてくれます。宇宙戦艦の主砲ですからね。当然です。

 なお、このゲームは「ブルーアーカイブ」なので移動する敵にドレスヒナのような狭い射程範囲の攻撃を当てることは技術を要します。特に「犬」のような素早い相手に対しては。

 一般のタワーディフェンスなら射程圏内の複数の敵に対して、設定された優先度でオートで誰に攻撃するか決定し、オートで攻撃を行います。偏差撃ちのようなテクニックは普通要求されません。

 ですが、そこに困難を感じる必要はそもそもありません。

 「ブルーアーカイブ」のせいでタワーディフェンスに苦しめられるのなら、「ブルーアーカイブ」で解決すればよいです。たとえば上から走ってくる「犬」は雷ちゃんで抱えて停止させてからドヒナちゃんをパなせば動かない敵となんら変わりません。「撃ちたい相手をいつでも自由に止められる」のでドヒナちゃんは特に困らず仕事ができます。雷ちゃんは全てを解決する。これは「ブルーアーカイブ」なので。

 タワーディフェンスのMAPの構成としてはちょっとだけいじわるな作りをしておきながら、ブルーアーカイブとして対処すればぐちゃぐちゃにしてしまえる。

 そういった作りのミニゲームを対策委員会編3章Part5の後に出してきたのはとてもおもしろかったです。

 ブルーアーカイブの生徒たちはタワーディフェンスのユニットとして調整されているわけではありませんが、あえてタワーディフェンスを押し付けようとしてくる「チート」が行われるなら、こちらは仕様上使える「ハメ技」で対処できます。これはパヴァーヌ2章でユズが言ったことでもあります。

 このミニゲーム「Hi-Lo Ha-Lo」の何が面白いのか。

 それはメインシナリオ上散々やってきた「ジャンルの縛り」の打破を「実際にゲームとしてプレイヤーに」体験させてくれたからです。

 それを、可能性は閉じたもの、全ては虚しいものだとしていた「アリウススクワッド」のみんなが笑顔で前を向くイベントのミニゲームとして設定したことは本当に素晴らしいと思います。これくらい何でもありでいいんだぞ、と雷ちゃんを置いたときに私は楽しくなりました。

 そもそもブルーアーカイブの生徒さんたちはシステム上タワーディフェンス用に性能設定されていないことと、タワーディフェンスの1ステージを作ることにはたいへんな労力がかかることとで、今後も「ブルアカTD」を期待することは強欲かもしれませんが(でも、あったらいいな……)、そういった期待抜きに、今回の「Hi-Lo Ha-Lo」は本当に最高でした。タワーディフェンスで気持ちよく「ブルーアーカイブ」できました。

 ジャンルの解体なんて好きにすればいい。
 
 曰く――「この椅子が、君たちを破滅させる」



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