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横浜市通訳ボランティア派遣制度

横浜市通訳ボランティア派遣制度は、主に横浜市内の区役所の窓口、市立小中学校、保育所、福祉施設などに通訳ボランティアの派遣を行うことにより、日本語の困難な外国人市民が日常生活を送るために必要な手続きや相談などを安心して行えるようにするとともに、公共機関等の窓口業務の円滑化支援を目的として行っています。
 この制度は、発足から約30年が経過しました。年間の派遣数は約2000件(2022年度実績)と、大規模な事業展開となっています。当事業は、8か所の市内国際交流ラウンジ等との共同運営となっています。各ラウンジは地域の学校や区役所等からの依頼を受け、ボランティア登録とマッチング業務を行っています。


制度発足の背景

制度発足の背景には、1990年の入管法の改正以降、定住化する外国人の増加に伴う国籍の多様化により、区役所の窓口を訪れる外国人が、これまで区職員で対応できていた英語に限らず、さまざまな言語を話すことになったことに起因しています。 横浜で暮らす外国人が、日本人と同等の行政サービスを受けられるようにするためには、区役所窓口で多言語の対応が必要です。そのために、言語が堪能な市民にボランティア通訳として登録してもらい、YOKEまたは国際交流ラウンジが通訳を必要としている区役所からの依頼を受け、ボランティアを派遣し、行政職員と外国人の通訳を担ってもらう仕組みが制度のスタートとなりました。

ニーズに応じた対応とその後の変化

外国人が横浜で生活していくなかで、子どもが生まれ、学校に通うことになります。小中学校での保護者面談で、教員と保護者がコミュニケーションをとるために通訳が必要なことから、1996年度には小中学校への派遣を開始しました。そして現在、総派遣数の約半数が小中学校への派遣となっています。特に中学校3年生の進学に関する三者面談や相談では、保護者にも複雑な日本の受験制度を理解してもらう必要があります。その仕組みや手続きについての説明を正しく通訳するためには、ボランティア自身の理解も不可欠となります。
 当初は区役所での手続きや、学校や保育園の面談での通訳で始まった制度ですが、定住化が進むに連れ、相談内容も深刻化することもあり、児童相談所、区役所生活支援課窓口、療育センター等、複雑な相談をする場面での派遣依頼も増えてきました。それに伴い、2008年度には専門通訳ボランティア派遣制度も加わり、一定の審査を通った専門通訳ボランティアの登録と特定の機関への派遣を開始ました。現在、全体の約20%が専門通訳ボランティアの派遣となっています。

「通訳」以外の役割

さまざまな場面で市民のボランティアに協力をしてもらっている背景には、市民に単なる言葉の通訳をしてもらうだけではなく、役所での手続きや学校での面談等での通訳活動を通し、横浜に住んでいる外国人がどのような手続きで困っているのか、どのような相談ごとがあるのかを知ってもらう機会となり、多文化共生社会の理解者を増やすことにつながればとの願いがあります。
多くのボランティアは、登録している言語が使用されている国・地域での生活経験がある方や、そこの出身者です。言葉ができるだけではなく、その国・地域の文化や国民性を理解していることが、スムーズな通訳につながると考えています。

よりよい通訳のために

YOKEでは、登録ボランティアを対象とした、制度の基本的な理解を目的とした初級者向けのものから、一定のテーマに絞った研修会等を定期的に行い、制度の理解を深めてもらうと同時に、普段ひとりで活動をしているボランティア同士の意見交換や情報共有の機会としています。
※通訳ボランティアには、活動の謝金として、学校への派遣は1回1800円、区役所等への派遣は2000円をお支払いしています。


課題とこれから

この制度は、現在約750名のボランティアの登録者に支えられています。そのうち一番登録が多い言語は英語で、約400名となっています。派遣依頼の増加傾向にある言語は、ベトナム語、タガログ語、ネパール語、カンボジア語等ですが、登録者が極めて少ない理由で依頼に応えられていないことが多くなってきています。
 また、通訳を必要とする場面も多岐に渡り、どこまでの範囲をこの制度で担うべきかなど、整理が必要となってきています。現場のニーズに応えながらも、ボランティアに過度な負担をかけないような形を模索しながら、より良い事業展開を目指しています。


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