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天才と仕掛け屋敷とルネサンス『The House of Da Vinci』

ゲームについて

 今回は『The House of Da Vinci』(以下「本作」)について紹介していく。
 本作のジャンルは3Dパズルアドベンチャーで、2020年7月11日現在ではgoogle playAppストアamazonsteamで販売中だ。販売価格はgoogle playとamazonが600円、Appストアが610円、steamが2000円となっている。

 本作はルネサンス期のヨーロッパを舞台に、天才と呼ばれたかのレオナルド・ダ・ヴィンチの弟子である主人公がダ・ヴィンチの作った発明と謎が散りばめられた屋敷の中で、それらを解きながら彼の行方を探すという物である。
 ゲーム性は以前紹介した『The Room』に近く、所々にそれを意識したようなギミックや演出が用意されている。

 注意事項として、ここからは多少のネタバレがある事、Android端末によるgoogle play版のプレイである事を予めご了承いただきたい。

特徴

 本記事は扱う作品の性質上、ゲームの特徴を2つに分けて紹介する。
まずはゲームとしての特徴を挙げよう。本作はいくつかの部屋を探索し、その部屋の全ての謎を解くと次の部屋(チャプター)に向かう形となる。全部でチュートリアル含め8つチャプターが存在する。
 一度クリアしたチャプターは後でタイトル画面からチャプター選択で再度プレイ可能。

チャプター選択。選ぶとチャプターの最初から始まる

 次に操作だが、こちらは比較的シンプル。スワイプ(一本指で触れて左右上下に動かす)で視点変更、拡大出来る箇所はダブルタップ(一本指で同じ箇所を素早く二回触れる)でズーム。離れる時はピンチ(二本指でつまむように操作)となっている。
 左側の小窓は手に入れたアイテムが入るスペースで、中のアイテムをタッチすると画面中央に拡大表示される。この時にある操作をしたり別のアイテムと組み合わせたりする事で変化するアイテムも存在している。

拡大画面。チュートリアルから抜粋。こちらは2つのアイテムを合わせて一つのアイテムにするタイプ。こういったアイテムは右下に「+」のマークが付いている方から使わないと正しい組み合わせでも反応しないので注意

 アイテムを使う際は小窓から使いたい場所にドラッグ(長押しして画面から離さずに指を動かす)必要がある。
 もし正しいアイテムの筈なのに反応しないと感じたら、まずは拡大して動かせる箇所が無いか確かめる事を推奨する。

 もし攻略に行き詰まったら、攻略の中で手に入るレンズを使うと新しいヒントが得られるかもしれない。
 レンズは画面右側にあり、これを上または下にドラッグする事で起動する。レンズは二種類存在するが、今回は序盤から使える方の説明をしよう。

この上の画像にある扉は、特に鍵穴も見当たらず使えそうなアイテムも所持していないため一見開けられないように見える。

しかし、レンズを使えばこのように内側の構造を知る事が出来るという訳だ。ここの解き方は敢えて書かないが、攻略の糸口となった事は理解してもらえただろう。

 レンズとアイテム変化、この二つに気を付けつつ注意深く調べていけば屋敷に仕掛けられた謎を解けるだろう。
 屋敷の謎解きには純粋なパズルもいくつか存在している。こちらは説明するよりも自分でプレイしてもらった方が理解できると判断した為、敢えて省かせてもらう。

一部情報サイトにホラーと表記されているが、このゲームにはホラー要素は雰囲気程度にしか無いため安心して頂きたい。

 次に、世界観としての本作の特徴だ。本作の舞台はルネサンス期のヨーロッパであり、時代設定は1507年のフィレンツェ。フィレンツェはダ・ヴィンチが生涯の大半を過ごした地であり、同時にルネサンスの中心となった都市の一つだ。また1507年は丁度ミラノからダ・ヴィンチがフィレンツェに戻ってきたばかりの時期にあたる。
 そして本作の主要人物であるレオナルド・ダ・ヴィンチは敢えて語るまでもないと思われるが、当時の芸術文化を代表する天才的な発明家であり芸術家として知られている。
 本作の謎解きやビジュアル等のアート性はこのような時代・人物的背景がある事を前提としているので、それらを念頭に置くとより本作を楽しめるだろう。

主人公へ宛てたダ・ヴィンチの手紙。師弟関係にある主人公に対して親愛の情を抱いている事が分かる
15世紀のヨーロッパにおいて、製本技術や製紙技術はイタリアが特に盛んだった

評価


 前述の通り、世界観をルネサンス期のヨーロッパに合わせる事でインスパイア元の『The Room』と上手く差別化し、そしてダ・ヴィンチの発明品とそれが配置された屋敷を探索するというコンセプトの独自性を図られている。これはリスペクトの正しい有り様だと感じ、大変素晴らしかった。謎解きにもそれらが反映されていたのも個人的には好感が持てる。

ダ・ヴィンチの発明品の一つ、攻城用の車両の模型


 そして収集要素の設計図で見られる『産物』では題材であるダ・ヴィンチに対して敬意を払っている事が読み取れて好印象を抱いた。これは死角や予想出来ないような場所に配置されており、見つけるのは難しいものの発見したらその設計図にある物の模型がタイトル画面にある『産物』で展示されるようになる。

『産物』の中。このミュージアムに発見した発明が展示されていく。画像にあるのは飛行機


 この『産物』から行けるミュージアムではダ・ヴィンチについての経歴や人柄、本編に未登場の発明品についての説明や実際に発明品に触れて動かす事ができる。これは間違いなくこの作品の強みだ。
 本編ではダ・ヴィンチの発明品で有名かつ人気が高い「戦車」もあるステージの重要なギミックとして動かせるという贅沢ぶりだ。

発明品の中で最も有名な戦車。中に入れて実際に大砲も撃てる


 ここまでダ・ヴィンチという個人に対して掘り下げられているとは購入当初は予想できておらず、良い意味で裏切られた。
 

 だが残念なことに難点も少なくない。全体的にパズル自体の難易度が高めに設定されているため、人を選ぶ作りなのは示した通りだ。しかし、それを考慮してもパズルゲームとしては粗がいくつか目についてしまうというのが正直な所でもある。
 以前『The Room』のレビュー記事などで説明したようにスマートフォンでの細かい操作というのはやり辛いものがある。本作の場合は頻繁にそういった操作が要求され、反応する範囲や感度も妙に高い場面もありそれがより実感できてしまう。

一例。このパズルは対応する窪みに木製の細工をスライドしはめ込んでいくのだが、バネルがタッチに敏感に反応するため動かしたい方向に動かない時がある


 ヒント機能も文字が小さいため読み辛く、不親切な物やパズルの性質上当てにならないものが少なくないため、時には自力での攻略を迫られる。そして全体的にステージが暗く見落としやすいギミックがあるのも難点。

実質的な最初のステージ。全体的に暗く視界が悪い。スマートフォンの設定次第ではギミックが見えなくなることも

 総評としては、粗や不親切さは否めない点があるもののモチーフであるダ・ヴィンチに対しての高い敬意を感じられ、同時にユーザーを楽しませようという工夫が見られる作品だった。ローカライズもしっかりと行き届いており、世界観を壊さないようにフォントなども選ばれていたのも評価したい。
 そして開発も続編を通して問題点を真摯に受け止めて良い方向にしていこうという向上心が感じられてとても印象が良く、これからも応援していきたくなる。

クリア画面。大体3〜4時間程度でクリアできるボリュームだった

 余談になるが、本作はストーリー性を意識しているものの全体的に説明不足であり、続編である『The House of Da Vinci2』をプレイしなければ理解が難しい場面などがある。

『The House of Da Vinci2』のタイトル画面。こちらはダ・ヴィンチに関わる場所や主人公の過去に焦点を当てている


 こちらも後日レビュー記事を投稿する予定だが、難易度自体は然程変わってないが本作で指摘した難点が概ね調整されて遊びやすくなっている。興味があれば是非プレイしてみて頂きたい。

この記事いいな、とかこのゲーム欲しい!やりたい!と思っていただける文章を心掛けて書いています。応援していただけたら励みになります。