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【藤島慈のノンフィクションとは】蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ活動記録10話感想

異次元フェスの1週間前くらいから蓮ノ空のストーリーを読み始めました。つい先日にみらくらぱーく!が結成される10話を読み終わったのですが、めぐちゃんこと、藤島慈があまりにも刺さってボロ泣きしたので印象に残った場面と感想を記しておきます。


瑠璃乃との再会と声色


まず、10話では約1年前からスクールアイドルクラブを休止している藤島慈について書かれています。
慈が1年前に文化祭のステージから落ちてしまったことによる怪我。それが完治してからもステージの上で足が動かなくなるという心因的な後遺症が休止の原因でした。

慈から一緒にスクールアイドルをやろうと誘われていた瑠璃乃は、怪我をして踊れないことを慈から知らされていませんでした。
瑠璃乃は2年間からカリフォルニアに滞在しており、最近帰国したばかりで慈とはまだ会えていません。
そこで瑠璃乃は事情を確認するために慈の部屋に押しかけるのですが、その際の慈の声が一番印象に残っています。

事前の配信や楽曲のイメージから、慈と言えば元気ハツラツで天真爛漫、配信が大好きなテンションの高い女の子という印象を受けていました。

しかし、瑠璃乃と再会した彼女のその声色はどこか冷たく、まるでもう会いたくなかったと感じるほど暗く低いものでした。今でこそ、その理由は分かりますが、ここで鳥肌が立ったのを覚えています。


梢と綴理との約束

今から1年前、慈が怪我をして休止中の間に綴理は2人でラブライブの地方予選に参加しました。
全国大会に進むことはできたのですが、とある大きな事情で全国大会を辞退しています。

この際に梢と綴理の間にできてしまった表面上は見えにくいかもしれない大きな亀裂、そのことからもう3人は互いに関わらないようにしようという約束をしていました。

ではなぜ2人は今になって慈に関わろうとしているのか。それはもう約束は破られているからです。

今年の6月、文化祭で梢と綴理は同じステージに立ちました。二度と同じステージに上がらないと約束した2人が半年振りにお互いに向き合った結果であり、慈にとってもとても大きな意味を持つ出来事です。

花帆さやかが入学する以前。3人しかいないスクールアイドルクラブ、そして梢と綴理が実質的な仲違いをしている。
しかし、自分はそれに触れることはできない。もし、自分が怪我をしていなかったら。夕霧綴理という天才の隣に立つことができなかった梢を救うことができたかもしれないのに……。そう考えていたのかもしれません。

慈はただ見守ることしかできませんでした。ずっと苦しかったと思います。それこそ、当事者の梢や綴理と同じくらいに。

そんな状況で梢と綴理が同じステージに立った。これは彼女にとっても本当に嬉しかったことだと思います。
その証拠に、自身の配信でも名指しで最高のライブだったと言ってます。

梢と綴理が同じステージに立ったからもう約束は破られているという話でしたが、実はそれよりも前に約束は破られていたと思っています。
それよりも2月前、ライブのリハーサルで後輩の花帆を庇ってステージから落ちて怪我をした梢のお見舞いに行った人物がいます。

それが慈です。

このときの慈の心中は察するに余り有ります。
かつて自分はステージから落ちて踊れなくなった。そして今度は梢が同じようにステージから落ちる怪我をした。もし、自分と同じようなことに梢がなってしまったら……。

慈は自分はもうスクールアイドルクラブと関係ないと言っていましたが、そんなことはありません。
彼女は誰よりも、優しく見守ってくれていたのです。


小さな見栄と嘘

慈と瑠璃乃は小学生の頃からの幼馴染です。慈はよくダンスを教えてあげたりしていて、1つ年上の慈は瑠璃乃から見るとなんでもできてしまう大人のお姉さんみたいだと思われていました。

それに対して慈も「ダンスは家でちょっと練習しただけでできたよ」と言ったり、転校して落ち込んでいた瑠璃乃に自身がテレビの子役で映っていることを見せて勇気を与えたりしています。

慈は「本気出せばこんなもんだよ」と言っていましたが、実際はそうではありませんでした。

瑠璃乃が慕ってくれているから。先を走って追いかけてもらえる存在になりたいから。いつだってすごい自分であることを瑠璃乃に見せてあげたいから。
様々な理由で慈は瑠璃乃が憧れてくれる自分だけを見せていました。
それこそ、怪我をしてステージの上で踊れなくなったことを瑠璃乃に伝えていませんでしたからね。

ですが、過程こそ大きな努力をしたとはいえ簡単にできることではありません。

特に、子役になってテレビに出ることは転校して前みたいに会えなくなってメソメソしている瑠璃乃にいつでも自分を見えるようにするためでした。

慈はずっとかっこつけてきただけ、瑠璃乃の前でいいとこ見せたかっただけと言いますが、決してそんなことはないと私は思います。

藤島慈は、瑠璃乃に憧れてもらえるような、かっこいい子です。


慈にとってのスクールアイドルとは

ステージの上に立つと足が動かなくなるという慈。そんな慈に対して後輩の花帆から1つの疑問が提示されます。

ダンスができなくても、スクールアイドルにはなれるのではないか

言い方はともかく、決して間違っていることではありません。ダンスができなくても、やりようは人それぞれですから。
しかし、慈にはスクールアイドルを通して自分が思い描いた夢がありました。

ここ、花帆の意見を真っ向から否定しているのではなく、そのような人がいてもいいと思うよ、と述べているのがとても好きなポイントです。

人にはそれぞれ、その人にとってのスクールアイドルがあるんだよ

慈はそう言いました。
では、慈にとってのスクールアイドルとは何でしょうか。

スクールアイドルになろうとした理由、それは小学生の頃の瑠璃乃と過ごす時間が楽しかったからでした。

2人で世界中を夢中にさせるという夢。
その夢には絶対に必要なものがありました。

私はそれがダンスだったと思います。

かつてダンスを憧れてくれた瑠璃乃と一緒にスクールアイドルをやりたい。
それならば、ダンスをしないというスクールアイドルは慈にとっての夢にはなりません。

慈にとってのスクールアイドルには、瑠璃乃が必要なのです。


瑠璃乃との約束

小学生の頃、いつも瑠璃乃の先を走っていた慈。
そんな慈に対して瑠璃乃は「外国とか行って、すっごくビッグになって、一気に追いつく!
という小学生らしい可愛らしいことを言います。

あの頃はいつだって瑠璃乃が追いかけていて、先を走る慈はずっと待っている側でした。

あれから数年が経ち、今ではその関係は逆になっています。
一緒にライブをやろうという瑠璃乃からの誘いに慈はできないと応えます。
それでも、瑠璃乃は慈を信じていました。

今度は瑠璃乃が待っていて、それに慈が追い付けるかどうか……という展開です。関係性のおたくなのでこのような対比がとても好きです。


遅くなんてない

ライブへの誘いを断られた瑠璃乃。2人はもう遅かったのかな……という言葉を残します。

しかし、慈の復帰を待っていたのは瑠璃乃だけではありませんでした。
かつて慈がスクールアイドルをしていた1年生の頃に使っていた練習用の靴。
使い古されて色褪せた努力の結晶を、かつて一緒に練習していた梢と綴理はちゃんと残していました。

復帰を望んでいるのは瑠璃乃だけではありません。そして、それは他のメンバーだけでもなく、慈本人もでした。

目を閉じるといつだって、スポットライトの中で立ち竦んでいる自分が浮かぶんだ。
何度も、踊ろうとしているのに、でも、できなかった。
2人にはいっぱい付き合ってもらって、それでも、だめで……。
なんで、ステージで踊れないんだろう……。もう……どうすれば、いいのかな……。

このときに本気で悔しがる慈の言葉と、ステージの上で動いてくれない両足を叩くシーンは、慈が全力で復帰を望んでいたことが分かってよかったと思うと同時に、とても苦しく息を呑むほどの印象的な場面だったと記憶しています。


ここからが本当に好きなんですが、慈が練習で使っていた靴は、小学生の頃に瑠璃乃からプレゼントされたものと同じのサイズ違いのものでした。

慈がスクールアイドルをしていた1年前、綴理は慈がこう言っていたことを覚えていました。

私さ、この箱を見るたびに思うんだ。ずいぶん遠くまで走ってきたなー、って。
で、もしも、こんなところまで追いかけてきてくれる子がいたら──。
──そんなのもう、世界中を夢中にさせるような無敵のユニット組んじゃうしかないでしょ?

慈はずっと、小学生の頃に瑠璃乃が転校してから、蓮ノ空に入学してスクールアイドルクラブに入って活動するまで、瑠璃乃を待ち続けていました。
(ここ良すぎてめっちゃ泣いてた)

そして、ライブ当日、ステージの上に立っていたのは瑠璃乃だけでした。
カリフォルニアから帰国してスクールアイドルクラブに入ったのがまだ先月のことです。基礎体力も練習量も万全とは言い切れません。
そんな中、慈は観客席で瑠璃乃を見ていました。

そして、慈は諦めることなんて、できませんでした。

衣装に着替え、ステージでふらついた瑠璃乃を支えるように隣に立ちます。

ここマジで好き好きポイントの1つなのですが、ステージの上でふらついた後輩を庇うという行動、これは過去に別の人物でもありました。

そう。梢が花帆を庇ってステージから落ちたことです。
当然、慈もそのことを知っています。真っ先にお見舞いに行ったのは慈なのですから。
かつて、ステージから落ちて怪我をしてしまい、そのことから舞台上で踊れなくなってしまった慈。そんな慈が、今度は後輩の瑠璃乃を庇いながらステージに上がります。当然、自分がそのせいで再びステージから落ちるような怪我をするかもしれないということが分かっているはずなのに。

それなのに、慈は瑠璃乃の隣に立ってスクールアイドルを始めることを決めました。

蓮ノ空女学院に伝わる伝統のユニット名、みらくらぱーく!の名前を告げて。

慈が先を走って、瑠璃乃が追いかけていた幼少期。

瑠璃乃がライブに出る覚悟を決めて、慈を待っていた現在。

追いかけて、追われるような関係はもうおしまい。
2人は隣に立って、一緒にスクールアイドルを始めるのでした。

2人はもう遅かったのかな……なんて言っていたこともありましたが、遅かったことなんて、どこにもなかったのです。
(ここでも泣いてました)


位置について

そして、もう1つ。ここマジで好き好きポイントが同じ場面でありました。
2人がステージに立ち、ユニット名のみらくらぱーく!の名前を告げたその瞬間、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの楽曲である「On your mark」のインストが流れるのです。

この曲は蓮ノ空がリリースした最初のCDに含まれているもので、非常にオシャレでかっこいい曲なのですが、全員曲にしてはどこか異質な印象を受けていました。

しかし、みらくらぱーく!がユニットを組み、蓮ノ空の3ユニットである『スリーズブーケ、DOLLCHESTRA、みらくらぱーく!』が揃った瞬間に流れたとなれば話は違います。
これまでお互いに先を走っていた者と待っていた者。足並みが揃うことのなかったみらくらぱーく!が紆余曲折あって、ようやくお互いに隣に立つ関係になりました。

そして、On your markの意味は「位置について」です。さらに曲の歌詞にはこう記されています。

On your mark , ready set go!

On your mark

これは「位置について、よーいどん!」の意味になります。
2人はこの瞬間、同じスタートラインに立って、そして、同じタイミングで走り出したのです。

これが流れた瞬間、私は天を仰いでました。

さらに、これはみらくらぱーく!だけの話ではありません。
これまで、先に結成されていたスリーズブーケやDOLLCHESTRAと比べると、みらくらぱーく!は本来少し遅れたユニットということになります。

しかし、On your markはこれもまた3ユニットが同じラインに立ったことを意味します。

この瞬間に流れる曲名として、これほど相応しいものは他にはないと思います。


みらくらぱーく!にとってのノンフィクションとは

最後に、みらくらぱーく!にはいくつかのユニット曲があるのですが、その中でも何度か同じワードが出ているものがあります。
それが「ノンフィクション」です。

ドンと来いだよ ハンデ有りのノンフィクション
いまいまいまこの瞬間が スタート切る合図なんだ

ド!ド!ド!

ノンフィクションのスタートを切って 
笑顔で駆け抜けていくどこまでも

ノンフィクションヒーローショー

ド!ド!ド!ノンフィクションヒーローショーという曲の歌詞に含まれています。なんならノンフィクションヒーローショーに至っては曲名にも入ってますね。

では、みらくらぱーく!にとってのノンフィクションとは何なのでしょうか?
直訳すると「虚構の混じらない事実」です。
私はこれを、かつて瑠璃乃に小さな見栄と嘘をついていた慈のことだと思っています。

何度も言っていますが、もう2人は隣に立ち、同じラインで居続けられる仲になりました。
そんな2人にとって、もう慈は嘘を付く必要はないのです。
見栄を張らなくても、2人は対等なのです。それはもう、ノンフィクションなのではないでしょうか。

さらに、この2つの曲にはノンフィクションの他にも共通するワードがあります。「スタートを切る」という歌詞ですね。

これはOn your markでも言いましたが、同じラインに並んだ2人が一緒に走り出したことを意味します。
そう考えると、ド!ド!ド!のこの歌詞にも意味が含まれています。

胸の中 ウサギと亀がずっと競争している

ド!ド!ド!

こちらはサビ前の歌詞なのですが、ウサギと亀は、慈と瑠璃乃でもあり、瑠璃乃と慈でもありました。
こう考えるとなんだか感慨深いものがありますね。

(リリックビデオ好き)

そして、本当に最後の最後、ノンフィクションヒーローショーについても少しだけ語らせてください。
こちらはみらくらぱーく!の最新曲で、異次元フェスのday2でも披露された楽曲です。

そもそもヒーローショーとはショーと書いてある通り、全てフィクション(創作)です。
では、ノンフィクションのヒーローショーとは何なのか。歌詞にはこのように記されています。

空飛ぶマントも変身ベルトも無くていいからマイクちょーだい
真の主役は誰かを傷つけたりは絶対しないもの
世界中 夢中にさせちゃう

ノンフィクションヒーロー

本来ヒーローショーに必要なマントやベルトは要らない。マイクだけあればそれでいい。
それはなぜか、真の主役は誰かを傷つけたりはせず、マントやベルトで悪役を傷付けるという行為は真の主役ではないからです。

みらくらぱーく!の2人には小学生の頃からの夢がありました。
それが世界中を夢中にさせるというものです。

つまり、本来ヒーローショーにとっては倒されるべき存在である悪役も、世界中に含まれているということになります。

かつてお互いに傷付け合ってしまった慈と瑠璃乃。その2人にはもうフィクションの嘘は必要ではなく、誰も傷付かないノンフィクションな関係にたどり着きました。

こう考えると異次元フェスのday1でド!ド!ド!を歌唱し、day2でノンフィクションヒーローを歌唱したのはとてもよかったなぁと今になって思います。

私はこの曲から一番みらくらぱーく!の良さを感じています。あとアイデンティティも好きです。(全部好き)


私はまだ活動記録も10話までしか読んでませんし、蓮ノ空をちゃんと知ってから2週間くらいしか経っていません。
でも、遅すぎることなんてないんですよね。慈と瑠璃乃からそう学びましたし、この瞬間がスタートを切る合図なんだってド!ド!ド!でも言ってましたから。

なのでこれからも蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさんとして、アーカイブとか続きのストーリーを読んでいこうと思います。(youtubeの公式チャンネルでも全部観れるの、本当に助かります)

瑠璃乃が入部する9話から繋がったこの10話は、蓮ノ空の最後のユニットである、みらくらぱーく!が結成されるだけのお話ではなく、2年生組の3人が去年に辞退を余儀なくされたラブライブの全国大会へのリベンジにも向かうシナリオとして非常にクオリティの高いものだと感じました。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。


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